政治的なものの概念

  • 未来社
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感想 : 20
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読了—1月4日
【まとめ】
 国家という概念は、政治的なものを前提としており、国家の政治的な行動や動機の基になる特殊政治的な区別とは「友敵」区別である。これは経済の「利害」、道徳の「善悪」に類いする標識であるのだが、友•敵区別こそが特殊政治的なものであり、この特殊な対立を、(倫理や経済など)他の諸概念の対立から分離し、独立的なものとしてとらえることができるそのことによって、国家を主権国家たらしめる。
 友/敵、闘争という概念の背後には、戦争の現実可能性が常にある。政治的なるものは、戦争という例外状況において、だれが自分たちの敵なのかという友/敵区別を独自に行なうことを可能にする主体、すなわち常に人間の生命を支配する権利をゆうすという意味で、他の諸団体よりも優位にある政治的単位、つまり「主権をもつ」単位である。

【感想】
 まとめると非常にシンプルになったが、難しかった。不思議と読んでいくと面白く、破壊力があるように感じる。
 特殊政治的区別である友/敵区別は、敵か味方かという二者択一を迫る理論に、戦争の現実可能性を前提とする政治的なものの概念は、好戦的であると解されるという弱点があるようにも見受けられる。また、自分が破壊力があるように感じる理由の一つに、友/敵結束によって追放、殲滅という戦争まで想定した相手、敵との間には、やるかやられるかしかないように感じるからだ。つまり、国家の最低限の機能、政体を保持したままで戦略を変え、友/敵結束を組み替える発想が本書では伺えない。状況に照らし合わせ、敵が味方に、味方が敵になる流動性が感じられず、ナチズムに見られたように自己破壊装置を内蔵した概念にも思える。
 このシンプルかつ破壊力のある政治理論へたどり着くまでに、政治的思考における法解釈や多元的国家論批判、自由主義批判があり、いままで政治学といえば欧米系の権力の配分や政治システムを考えていたものとしては、多々ショックを受け、それゆえ興味深い理論だと思った。ナチズムとの関係など、ますますシュミットに興味が出てきた。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: ファシズム 独裁
感想投稿日 : 2012年1月4日
本棚登録日 : 2012年1月4日

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