響きと怒り (下) (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2007年1月16日発売)
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本棚登録 : 308
感想 : 23
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ああ、家族ってこうだよな、と思う。上巻では家族同士の細部の関係、微妙な距離感まではわからなかったのだけど、下巻でやっとつかめた感じ。一つの家に暮らすって、血の繋がった家族だろうと、いや血の繋がった家族だからこそ?楽じゃない。ジェイソンは嫌なやつだけど、この環境でよく耐えたなとも思う。これだけの貧乏くじを引かされたら、お金を貯める唯一の楽しみくらいは見逃してあげたくなるが、それを容赦なくぶんどって逃げる姪クエンティン。ああ、やはり血は繋がっている。
終盤の、ディルシーを始めとする黒人たちの様子を見ていると、やはり人間て原始の暮らしに近いほど幸せだったのではないかと感じる。金や家柄や社会的地位や複雑化した宗教や、そういったものに囚われた人間たちの起こす自分で自分の首を絞めるような悲劇。そしてやがて豚の尻尾をもつ子が生まれ、家系は断絶する。クエンティンが近親相姦を犯したとは思えないが、このモチーフが「百年の孤独」につかながっていくのだな。同じ名前の人物が登場するところも。兄妹間の愛情の発露など、ところどころ、アーヴィングの「ホテル・ニューハンプシャー」を思い出す部分もあった。
これで「八月の光」「アブサロム!アブサロム!」と合わせて3作読んだが、わたしにはアブサロムが一番しっくりきた。やはりサトペンが強烈な印象を放っていたからかな。この「響きと怒り」に出てくる人物たちは、それぞれが「生きている」感じがして良い意味で普通の小説というか実際の人間に近い。これが一番しっくりくるという人もいるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学
感想投稿日 : 2017年10月27日
読了日 : 2017年10月26日
本棚登録日 : 2017年10月26日

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