双頭の船

著者 :
  • 新潮社 (2013年2月28日発売)
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本棚登録 : 322
感想 : 42
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東日本大震災がテーマの連作。

前後どちらへも進めるように二つ頭がついた船『しまなみ8』が被災地ボランティアの『さくら丸』となって活動する。
優柔不断だが恩師に勧められ船に住み込んで自転車修理をする男。
繊細な作業で流された金庫を開ける金庫ピアニスト。
妻と子1人を亡くした大工さんと、夫と子1人を亡くした保母さんが隣同士の仮設住宅で暮らし、それぞれの生き残った子どもたちを通して家族のようになり籍を入れる。
船にはこの世から去ったはずの人々や動物も乗っているて、動物たちは一匹ずつ獣医に手厚く世話を看てもらってから天国へ送られ、人々は突然現れたミュージシャンに天国へ向かうように諭される。
ベアマンは世界の動物をあるべき場所へ戻す活動をしていて、彼の恋人はさくら丸で活動しながら再会を心待ちにしている。
船の上には仮設住宅が建設され、その中で船を独立国家にしてしまおうと意見する荒垣が現れ、船長と並びさくら丸のふたつの頭になる。
最後には過去の苦しみを忘れて旅立つべきが、過去を見据えて岸に残るべきか、選択を迫られる時がくる。

テーマが重いのにファンタジー要素が満載で混乱する。
いろんなシステムの中でたくさんの人が生活しているのにどこか地に足がついていないような不安定なかんじが読んでいてしんどい。
後半の船はどこへ向かうべきかの論争で、世界中を航海するという意見が出たのが不自然に感じた。
震災とその復興に向けての活動だけで、話としては十分なのにベアマンの動物愛護の話もちょこちょこ出てきてよくわからない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年3月18日
読了日 : 2022年11月25日
本棚登録日 : 2014年3月14日

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