ブクログで花丸が欲しいんです、僕。
twitterのプロフィールをみれば、その人が『何者』かがわかる。
いや、他人から『何者』にみられたいのかがわかる。
アイコン画像に何を選ぶのか。名前は漢字表記かカタカナ表記か、それともアルファベットか。
個人情報にどう優先順位をつけ、どの順番で提示するのか。
誰との、どの団体とのつながりを強調するのか。
その他諸々に個性が、いや「個性」と思われたい物が反映される。
物語の人物紹介として、そのプロフィールを最初のページに持ってきた仕掛けにどきどきする。
『桐島、部活やめるってよ』を書いた朝井リョウだ。ただで済む訳がない。
なーんて、したり顔のレビューを書こうと思っていた読み始めの頃の自分を、過去に戻ってぶっ飛ばしてやりたい。傑作。
これはもうサスペンス、いやスリラーだ。
この本を読んだ後にレビューを書くのは本当に恐ろしい。
WEBテストもエントリーシートもなかった時代の人間だが、就職活動で感じる葛藤や緊張感は道具立てが変わっても、何ら変わりはない。ひりひりするような感触を味わった。
でも、それだけじゃない。就職活動を題材にした、ただの青春小説だと思っていたら痛い目を見る。
学生時代にこの本に出会いたかった。
でも、あの頃の僕はこの本のメッセージを逃げずに正面から受けとめることが出来ただろうか。あまり自信はない。
読み終えてみれば、誰のスタンスも誰の見方も間違ってはいない。
正解なんて本当にわからないのだ。
ただ確かなのは、頭のなかの傑作や百点よりも、体を動かした駄作や十点を積み上げなくてはいけないということ。
そして、またまたこういうレビューを書いちゃう自分のかっこ悪さを認めた上で「やっぱり書くもんね」ということ。
結局、拓人は仲間に恵まれていると思う。大丈夫だ。
光太郎やサワ先輩、瑞月さんにバイトの後輩。
もちろん、隆良や理香さん、ギンジにだって。
一度は本気でぶつからなければならない時がある。
そうでなければ、それこそ室内でチノパン穿いているようなものだ。
ひさびさに胸に刺さる本だった。
いつも心に『何者』を。
ブクログで、いや人前でも花丸が欲しくなったら、この本を読み返そうと思う。
- 感想投稿日 : 2013年4月3日
- 読了日 : 2013年4月3日
- 本棚登録日 : 2013年4月3日
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