レビュー by kyotooonさん
カバーの見た目から、ホラーもの…?という印象を受けたが、その要素は全くなかった。しかしホラーもの以上にある意味ゾクッとくるものはあった。
物語は、刑務官(南郷)・傷害致死罪の前科を背負った青年(三上)が、死刑囚(樹原)の冤罪を晴らそうとするもの。死刑制度についての様々な問題点がそれに関わる人達の目線から描かれており、実に生々しかった。
私は死刑制度を支持する。凶悪な殺人犯には自分の命をもって償わせるべきだと思う。
しかし、この本を読み進める内に違和感が浮かんだ。被害者の遺族が望んでいないのに絶対応報を科すことは、さらに被害者を傷つける行為ではないか。あるいは、仮に私自身が家族を惨殺されたとする。その憎い犯人は刑事罰を与えられない少年だった。この場合、私がこの手で少年に極刑をくらわせたとして、今度は私自身が終身刑や極刑にあたるような罪に問われるのだろうか。これにはあまり納得がいかない。
同じように自分の感情を優先して考えた時、人殺しといえども三上や南郷に罪があるとは思えなかった。逆に、安藤や、人を殺してはいなくても佐村恭介の方がもっと罪深いと思えた。
何が正義なのか、人の命の重さは犯した罪の重さに反比例して軽くなるのか、またその基準は平等なものなのか。本書を読んで死刑制度に関するこれらの疑問を抱きつつも、答えはよく分からないままだった。読了後も、私は死刑制度を支持する気持ちのままである。しかし、それは誰を救うために存在するのだろうかという複雑な思いを伴うものとなった。
こんなふうに死刑制度について深く考えたことはこれまでになかったし、ましてやそれを実行する人達に目を向けたこともなかった。本書はいい機会を提供してくれたと思う。
レビュー登録日 : 2012年02月10日
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