とても良い本でした。
この本で取り上げられているのは2012
年にプロ野球の巨人に育成枠で入団した柴田章吾投手。彼は幼い頃から野球が大好きで、小学校時代からメキメキと頭角を現していました。夢は甲子園で投げること。そんな順風満帆な野球生活は中学三年生の時に突如として打ち砕かれます。病気が起こる原因は不明で、治療法も確立されていない国指定の難病であるベーチェット病を発症したのです。皮膚や粘膜が激しい炎症を起こし、最悪死ぬ怖れもあるベーチェット病。しかし彼は厳しい運動制限と食事制限を受け、入退院を繰り返しながらも野球人生を続けます。そして愛工大名電の投手として甲子園のマウンドへ・・・。
ベーチェット病は健康な人にとっての「当たり前」が症状を悪化させる厄介な病気です。食べたいものを食べる、思いっきり練習する等等。柴田くんは発病以来、どれだけのことを我慢してきたのだろうか思わずにはいられません。この本には食事や練習面で我慢が足りなくて失敗したことも包み隠さず書かれていますが、彼は必ずそこから学んでいます。すべては野球のため。強い思いを感じました。
この本はライターさんが第三者目線で書いており、柴田くんの御両親、愛工大名電の監督と奥さん、主治医の先生など彼を取り巻くたくさんの人たちが登場します。彼らも本当にすごい人たちで、学ぶところが多くありました。
それから、「不治の病にかかった天才が再起を目指す」というこの本のメインエピソードはいくらでも美談に、ドラマチックに描けると思います。でもそうはせず、取材をきっちりして関係者と信頼関係を構築してそこから得た事実をきっちり丁寧に積み上げたライターさんの田尻さんの手腕も素晴らしいものがあると感じました。
「成功の反対は諦めること」という言葉を本当に感じさせられた1冊でした。たくさんの人に読んで欲しい本です。
- 感想投稿日 : 2014年3月29日
- 読了日 : 2014年3月24日
- 本棚登録日 : 2014年3月24日
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