ウィタ・セクスアリス (1960年) (岩波文庫)

著者 :
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感想 : 9
5

自伝的な体裁をとった小説。
注意して読むと、 医学、心理学、哲学、文学など、当時最先端の知見をなんでも織り交ぜてあることに気づく。

かつて幕府や明治政府は風紀紊乱を厳しく取り締まる傍らで、色街の存在を公認しており、いわば白黒のはっきりした時代であった。
それが非公認とされるに及んで、猥雑なものが市井に無遠慮なかたちで溢れ出しているのが現代か。

性的放縦を厭いつつ自らを律して学問に打ち込んできた主人公「金井」を描くことで、かえって健全なる性欲発達史ともいうべき模範が示されているような。
このような真面目な内容だから、同時に、本書を閲して即発禁にした明治政府の浅慮っぷりも顕わとなろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2016年5月10日
読了日 : 2016年5月10日
本棚登録日 : 2015年2月23日

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