No.6〔ナンバーシックス〕 #4 (YA!ENTERTAINMENT)

  • 講談社 (2005年8月22日発売)
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“「え?」
「見たくない。きみが誰かを苛むところなんて、見たくないんだ」
吐き気がした。自分自身にだ。自分に対するどす黒い嫌悪感が身体の中をうねる。
見たくないだと?それなら、目を伏せていればいいじゃないか。おまえはいつもそうだ。見たくないものから、いつだって目を逸らし、気がつかないふりをしてきた。ネズミの行っている残酷は、誰のためだ?全部、おまえのためじゃないのか?おまえが、ネズミに強いたことじゃないのか?おまえ自身が被らなければならない汚濁をネズミに肩代わりさせて、奇麗事を叫んでいるだけじゃないのか?奇麗事だよ、紫苑。おまえの言うことも、やることも、奇麗事ばかりだ。自らの手を汚すことなく、心を痛めることもなく、傷つくこともなく、人を苦しめてはいけないと、正義を叫ぶ。
この独善、この傲慢、この虚偽、この軽薄、この醜悪な本性。
それが、おまえだよ。
誰のものでもない、確かに自分自身の声が語りかける。吐き気がする。嫌悪感がうねる。
だけど、見たくない。やはり、見たくない。その想いだけは真実だ。”

アニメ化に伴い再読。

富良
フェネック:市長

“あの人たちは、どうなるんだ、どうなるんだ、どうなるんだ。分からない、分かってもどうしようもない。
感情の先端が麻痺していく。悲惨に慣れてしまう。残虐に鈍くなる。思考が鈍麻する。他人の死に動揺しなくなる。
紫苑はネズミの腕を摑んだ。肉体の手応えを確かめる。
ネズミ、ぼくを人として留めてくれ。
「もしかして......」
ネズミが目を伏せた。
「あんたは変わるかもしれない」
「え?」
「ここで......この矯正施設の中で、あんたは変わっていくかもしれない」
「何のことだ?」
「おれは、あんたのことなんて何一つ知らなかった。そう思いしることに、なるかもしれないな」
「ネズミ、何を言ってる?」
唇を結び、ネズミは黙り込んだ。”

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年9月14日
読了日 : 2011年9月14日
本棚登録日 : 2011年9月18日

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