“[あなた、オーディションのこと忘れてないわよね?]
クールな口調で聞いたのは衣佐子である。
彼女は籐の椅子に座り、なめらかな髪を指で梳った。
「想像上のもうひとり」は、こんなふうに突然現れる。別人格とか多重人格とか、そういうのとは違って、「第三者の目線」とでもいうのか。
たとえば、帆乃歌が友達と大騒ぎしてはしゃいでいる時も。ふと気づくと、もうひとりの自分がこっちを静かに見ている視線に気づくとか……。
そういう感じだ。”[P.36]
台本の内容は特別本編とリンクしないのか。
役の人物と会話をしながら推理を進める探偵役ってのは面白いなぁ。
もし続編が出たら、衣佐子の立ち位置には違う誰かが生まれるわけで。
登場人物限られてるのに、色鉛筆さんが"長い前髪"で勇巳が"長めの黒髪"なのはすごく気になる。
https://twitter.com/niikurahonoka
“ちらっと見てみると、今日もglider cafeは営業中だった。よかったよかった。
お店に入ると、色鉛筆さんが「あ!」という顔で帆乃歌を見て、微笑んだ。
ぺこっと頭を下げ、空いているテーブルに着く。
このお店は空いていればどのテーブルに着いてもいい。そんなシステムも、もうわかっている。ちょっとした常連気分だ。
「いらっしゃい」
「こんにちは。カフェラテください!」
「はい」
相変わらず長い前髪に隠れて目は見えないけれど、何とも優しげな空気が漂っている。
白とベージュのミニバンに戻ってカフェラテを作り始めた彼を見送った後、帆乃歌はノートパソコンを取り出した。”[P.207]
- 感想投稿日 : 2014年5月23日
- 読了日 : 2014年5月23日
- 本棚登録日 : 2014年5月23日
みんなの感想をみる