"あたしがここにきたがっていた。何でだか判らないけど、そう、確かに、あたしはここに来たくてしょうがなかったんだ。ここへ来てーーそして、ピンクの空と、ちいさなおひさまを見て……。
……そうか……そうだ。
あたしはそっと両手をまわして、自分で自分の体を抱いてあげた。ゆっくりと、優しく、ありったけの思いをこめて。
田舎で見た、満点の星。やっぱり、あれがすべての始まりだったんだ。あそこで見た星が、あたしの運命だったんだ。
シノークの砂漠で。家に帰ろうと思った。帰って、あったかい部屋で、窓の外に降っている雨を見ながら、紅茶いれて、ショパンのピアノ曲なんか聴きたいと思った。でもーーあの時あたしは、帰らなかったんだ。"[p.275]
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- 感想投稿日 : 2017年5月14日
- 読了日 : 2017年5月14日
- 本棚登録日 : 2017年5月14日
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