憲法訴訟の構造について目から鱗が落ちる一冊。
全19章からなり、各章は2〜3節で構成されています。1章は大体30頁弱のものが多く、全部で548頁です(索引除く)。
内容ですが、各節で1〜3個程度の判例を取り上げ、そのあとに質問が無数にちりばめられた本文が続いていきます。
質問は多い章で50個にのぼる場合もあり、回答が出せないような質問も多いです。答えはのっていませんが、質問の羅列のあとには論文の抜粋や関連判例が概ね続いており、それを読むと、質問の意味がじわじわと分かるような構成になっています。
(結局は憲法の基本知識をどの程度使いまわして説明する力があるかを試しているようです)。
そこで、本書の質問は、回答を出すためではなくて、重要なポイントを読み飛ばしてしまわないための安全弁の位置づけと心得るべきでしょう。
とはいえ、質問の意図がよくわからないまま進まざるをえない箇所があるのも事実ですので、 ある程度憲法の学習が進んだ方でないと、独学での利用は難しいかと思いました。
私はロースクールで著者のお一人に教えていただくことができたので、非常に学習効果がありました。
事件性の要件と訴えの利益(民訴)の関係はどうか、事件性の要件と処分性の要件(行訴)の関係はどうか、などと問われて、ピンと来ない中上級者の方は一読をお勧めします。 憲法訴訟の理解をもう一歩深めるにはかなり有益な一冊かと思います。
なお、基本的に佐藤先生の説の影響が強いようですが、芦部先生メインの方でも利用に支障はないかと思います。
- 感想投稿日 : 2009年3月28日
- 本棚登録日 : 2009年3月28日
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