武家の女性 (岩波文庫 青 162-1)

著者 :
  • 岩波書店 (1983年4月16日発売)
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本棚登録 : 423
感想 : 33
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「水戸藩士の娘にして社会運動の大家による、旧幕時代の女の生きざま」と聞くと、どんな峻厳苛烈な筆致かと及び腰になってしまう。だがそんな恐れは無用、むしろ「はんなり」などと流行りの形容詞が似合う、面白うてやがて哀しき(なにしろ、血で血を洗う騒乱には事欠かなかった水戸藩だ)昔がたりの記であった。
舞台となる青山家は、学問をもって奉公する百石取りの「下士」。これは食うにも困る浪人でも、めいめいにお付きがついて一家団欒など望むべくもないご大家でもない絶妙の立ち位置で、当時の「普通の人々」の生活や常識、思考回路などを、それは活き活きと今に伝えてくれる。第一級の史料と言って差し支えない。

後半は次第に、「女たちには当時はっきりと知らされなかった」幕末の動乱期の話題になっていく。その頃から登場人物が増え、しかも互いに姻戚関係にあったりするのだが、文庫化時にわざわざ付したという巻頭の系図がそれにしてはお粗末なのは残念。通勤電車の中で読んだのでなければ、人物相関図を自作したいところだった。

2011/1/22〜1/24読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2010年10月6日
読了日 : 2011年1月24日
本棚登録日 : 2010年10月6日

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