ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書 2272)

著者 :
  • 中央公論新社 (2014年6月24日発売)
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感想 : 55
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150万語に及ぶ演説原稿を書き起こし、それをコンピュータにかけて単語の出現頻度等々を定量的に分析したものを素材として、「史上最凶の煽動者」ヒトラーに迫る好著。本書の優れているのは、こういったハード面からの分析と、身ぶりや抑揚、聴衆を鼓舞する演出といったソフト面のそれの両方が、ともに高いレベルで達成されている点である。著者は言語学者だということだが、私はてっきりレトリック、あるいは宣伝の専門家だとばかり思っていた。そのくらい、その方面の指摘も鋭いのである。
こけおどしの「魔術的」なヒトラー(および彼の演説)を、後世の私たちもまた「恐るべき」「悪魔」などとふんわりしたもの言いで大雑把にくくることが多かったが、こうして科学的に丸裸にされた彼は、尾羽うち枯らしてむしろ哀れですらある。21世紀の今、書かれるべきだった良書と言えよう。

2016/9/15〜9/25読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2016年9月25日
読了日 : 2016年9月25日
本棚登録日 : 2016年9月25日

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