いいこと言ってる箇所もなくもないが、いかんせん散漫。多くのフィールドワーク事例の紹介が、本当にただ紹介・羅列にしかなっていない。
それとは別に著者が新たな着眼点から提起してみせる「限界集落の真の問題点」というのもあるのだが、ではそれを「どうするか?」という話になると議論は途端に具体性を欠き、ふんわりした理想論・根性論に終始してしまう。
また、帯の惹句だったという「消滅した集落などない!」はその実、「消滅した集落など(今のところ)ない!」であって、「今矍鑠と生きている高齢者たちが退場した後はどうなるかわからない」とは、著者自身も認めている。
しかるに、この本は6年前の作なのである。高齢者にとっての6年は大きい。今(2017年)まさに、6年前に著者が「(まだ)大丈夫!」と太鼓判を押した集落が消滅しつつあるのではないのか。そんな疑念が拭えない。
私自身はまさにこの本にあるような、地方都市に両親を置いて都心に出た「低成長期生まれ」世代だ。そんな私は定年を迎えた暁に地元に戻るのもやぶさかではないが、著者がついでのようにさらりと書いているように、私の子供となるともはや「都市での生活しか知らない」世代である。かれらには都市こそが、著者が情緒的に言ってみせるところの「ふるさと」なのだ。
とすると、かれらに「帰郷」を強制することはできず、本書の言う孫世代=私の世代の帰郷は畢竟、集落の消滅を半世紀かそこら先送りするにすぎないのではなかろうか。他出者が「ふるさと」に帰ればよしとする著者の論理は、この点首を傾げざるをえない。
2017/6/15~6/16読了
- 感想投稿日 : 2017年6月16日
- 読了日 : 2017年6月16日
- 本棚登録日 : 2017年6月16日
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