日本仏教は仏教なのか?

著者 :
  • サンガ (2015年5月25日発売)
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感想 : 4

「浄土真宗は仏教なのか?」の著者。前書がかなり攻撃的な文章だったため、若干苦手意識を感じていましたが、今回はかなり静かな文面になっていました。
今回は、世界の宗教、そして世界の仏教と日本仏教についてといった広い内容だからでしょう。
過去にさかのぼった宗教の話が印象的でした。

最近の研究では、キリスト教のもととなったイエスが存在したかどうかも疑わしいとされているのだそう。
ローマの裁判によって磔刑に処されたはずなのに、当時の裁判記録に残っておらず、唯一の、イエス実在の証拠になりうる資料が欠けているとのことです。

本人がおらずとも、結果的にキリスト教の誕生にかかわった人物がいたのであれば、いいのではないかと思いますが、「聖書」ありきののキリスト教徒にしては非常に衝撃的な問題でしょう。

著者は、マスコミが「イエス・キリスト」と呼ぶことに苦言を呈しています。
イエスに救世主という意味のキリストをつけているのはおかしいとのこと。
それならば「仏陀・釈尊」と言うべきなのだそうです。

私も、長いことイエスが名前でキリストが名字だと思っていたので、その間違いには同情しますが、たしかに誤解を生じさせないよう、表記統一をするべきでしょうね。

エジプトの3大ピラミッドは、現代の私たちの技術では建造不可能されています。
建築法が残されていないためで、記録が少ないのは世界最古の文明とも言われるインダス文明も一緒。
インド数千年の歴史があっても、記録が少ないために「インドには歴史がない」と言われるそうです。

そんな中で、紀元前600年の釈尊の業績とと仏教の伝統はしっかりと記録が残っているということには、意外ささえ感じます。

カーストの伝統が強く、公用語が多いインドですが、釈尊は、階級や地方共通の万人のための標準語、バーリ語を作ったそうです。
言葉を作ったとは知りませんでした。
ただバーリ語は、仏教聖典以外には用いられず、インド公用語22の中にも入っておらず、結局は限られた人のみが使う言葉となってしまっています。
これは、インドでの仏教勢力が強くなかったためでしょう。

独自の形態をともなって発展してきた日本仏教。オリジナルの仏教と比較してどうとらえていくかは、今後も議論の余地があると思われます。
もって回したような、ちょっと独特な文章。
これまで日本では議論されることのなかった、ある意味タブーの問題提起をしたもので、著者の意見には賛否両論あると思われますが、大きなインパクトを与える一冊となっています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宗教全般
感想投稿日 : 2015年9月16日
読了日 : 2015年9月16日
本棚登録日 : 2015年9月16日

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