共産主義体制が始まったばかりのチェコスロヴァキア。
密告と粛清が人生を締め付ける中、地下に誕生した並行世界。ノアの箱船。監禁者が常にビクビクし、虜囚は自由と贅沢を楽しむ。暗喩と風刺。
秘密警察が跋扈し家族が殺されるに至る前半と、突然非現実的な「地下水平世界」が広がる後半とのギャップとリンクが面白い。
共産主義の時代に、ユダヤの巨大地下都市という都市伝説に築き上げられた見せかけの楽園。逆説的に、箱庭の中の見せかけの自由と豊かさを示した全体主義への風刺だろうか?それとも我々の享受している自由すら、実は箱庭の自由にすぎないのだろうか。
牢獄の中の牢獄を自由の飛び地とは呼びたくない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ミステリ
- 感想投稿日 : 2017年5月15日
- 読了日 : 2017年5月15日
- 本棚登録日 : 2017年3月21日
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