秋のソナタ [DVD]

監督 : イングマール・ベルイマン 
出演 : イングリッド・バーグマン  リブ・ウルマン  レーナ・ニイマン 
  • 紀伊國屋書店
5.00
  • (3)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 13
感想 : 2
5

母娘間の愛憎は永遠のテーマ。この映画に描かれる母娘も典型的なケースだが、これほどに見ていて辛く恐ろしい映画もあまりない。
奔放な人生を生きてきた高名なピアニストの母親をイングリッド・バーグマンが、母への満たされない愛情と憎しみを抱えたまま大人になってしまった娘をリブ・ウルマンが演じている。期待を抱えて7年ぶりに出会った2人は、愛しあう母娘を演じながらも互いに失望し苛立ち、やがて深夜の対決へ。2人の名女優のぶつかりあいはまるで目に見えないグローブで殴り合うかのようで、観ているだけで疲労困憊しそうになる。特に母親の前では小さな娘にもどったようにおどおどしつつ、しだいに長年にわたる愛情と憎しみを吐露して狂気さえ感じさせるリブ・ウルマンは恐ろしいほどだ。
しかしもっとも驚かされるのは、ショパンを2人が交代で弾くシーン。まったく同じ曲でありながら、娘の演奏から母は多くのことを知ってショックをうけ、娘は母の演奏に拒絶を聞きとる。鳥肌がたつような場面だ。
娘が母を追い詰め断罪したかたちで、対決の一夜は終わる。だがそれによって最も深く傷つき、さらに絶望の淵に追いやられているのは娘の方だ。死んだ子が生きているとほほ笑み、母に「赦しはある」と書き送る彼女の眼は虚ろにしか見えない。
子どもの前で有罪でない母親など存在しない。彼女たちが証明しなくてはならないのは無条件の愛という、最初から不可能なものなのだから。母を赦すことよりも、あきらめを受け入れることを学ぶときに彼女は初めて解放されるのだろうが、この信仰を中心とする生活は、彼女をいっそう隘路へと追い詰めていくのではないだろうか。同じく愛をもとめて得られない者のひとりである夫が、ただ見守ることをやめて彼女の内部にいつか踏み込んでくれることを、自分としては祈りたくなる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年1月1日
読了日 : 2013年12月8日
本棚登録日 : 2014年1月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする