※感想は2004年の初読時のもの
ポイントは、「日本史の専門家」ではなく、「英文学研究家」であり、「英国の社会風俗に通じた」著者による作品であること。ときに「幕末」を忘れて「イギリス紳士」ばかりになる節があり、タイトルからすると「脱線?」というくだりもなくはないが、いずれにしても興味深く読める。
日本にやってきていたイギリス人が、いかに「イギリス紳士」としての価値観と習慣を崩さなかったか、ということが本書の骨組。日本で「ピクニック」を敢行したりとか、貴族の趣味である登山(イギリスには高山はないので外国に行けるだけの財力がないと無理だとか)をするために周囲の忠告を無視して霊峰富士山に登るとか、いろいろ無茶をやっているのである。(それで襲撃されたりね)
幕末、日本に交渉に赴いたのが、ただの役人とか軍人とかではなく「イギリス紳士」であったことが、その後の日英関係に大きく影響したのだなぁというのが、あらたな発見。ずどんと一発ぶっぱなして交渉を求めたアメリカ人・ペリーと比較することによって、その違いはより鮮明になる。
日本史だけではなく、19世紀のイギリスにも興味がある人は、2倍楽しい本ですね。どっちかにしか興味がないと、密度がうすーい本。本書に寄れば、「イギリス紳士の条件」とは、「最低でもメイドを2人以上やとっている」ことだそうなので、秋葉原のメイド喫茶に行く人なんかは、たまにはメイド喫茶1回分節約してこういう本を読んでみるのもいいんではないでしょーか(^^)。
そのほかにも、とリビア的に使える小ネタがいっぱい。駐日公使夫人がかなりの巨漢(180cm、120kg!)であったことから、「日本の仏像(鎌倉の大仏)にちなんでダイブーツといわれて」いたとか。
気合いを入れず、ぼちぼち読むと、思わぬ発見がある本ではないでしょうか。
- 感想投稿日 : 2013年5月20日
- 読了日 : 2004年11月17日
- 本棚登録日 : 2013年5月19日
みんなの感想をみる