ユー・アー・マイン (ハヤカワ・ミステリ文庫 ヘ 17-1)

  • 早川書房 (2015年5月22日発売)
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感想 : 11
4

この物語のベビーシッターのゾーイと『ゆりかごを揺らす手』のベビーシッターのペイトンのイメージが重なっちゃったまま読んでた。

なんで「ホンモノのベビーシッター」じゃないのに、それまでの経歴をうまくごまかせるんだろう。
それができるなら身分の保証なんてムリってことだよねー。

っていうのが、この小説とかゆりかごとかに抱きつづけてたギモン。
だけど、この小説ではそこの「ナゾ」もちゃんと解明されてた。

この物語を展開させていくのは女性3人の視点。
ひとりは、海軍のエリート軍人の後妻となったクローディア。
前妻とのあいだの双子の男の子の継母となりながら、じぶんも女の子がもうじき生まれる臨月。
ケッコンした家はお金持ちでものすごい豪邸。
仕事は福祉事務所のソーシャルワーカーで、出産後も仕事を辞める気はない。

もうひとりは、3人の子持ちになっても働きつづけるつもりのクローディアに雇われたベビーシッターのゾーイ。
ちゃんと過去のシッター歴の保証もあるし、すぐに双子の男の子を手懐けちゃったほどの腕前。
だけどいろいろ怪しくて、クローディアはゾーイにいろんな違和感をいだいていく。

もうひとりの視点は警察官のロレイン。
警察官の夫といっしょに、臨月の妊婦のお腹を切り裂いて胎児をとりだす妊婦惨殺事件を捜査してる。
ティーンズの娘がふたりいて、長女はカレシとケッコンするからと家出しちゃうし、次女もそんな姉を支持してて、「親子」関係の危機真っ最中。

ロレイン視点は三人称だけど、クローディアとゾーイは一人称で、この視点の切り替えにさいしょはちょっと戸惑ったりしてた。
読みにくいかんじがしたんだけど、でもストーリー的にはぐいぐい読めちゃって。

読んでると、いろんな伏線が散りばめられてるのに気づく。
どの伏線もなんとなく回収法が予測ついていくんだけど、ある伏線だけなかなかその回収の予測がたたないから、「あれはなにー?どんな意味ー?」っていう「ナゾ」がじぶんの中にはりつき続けてた。
結果的にこれが衝撃のラストに繋がる伏線だったねー。

だけど、いろいろ次々出てくる人たちが、いろいろ繋がってることが明らかになっていくから、読んでてラストの予測が混乱して、そのニンゲン関係をまとめようと働いてしまう。

わたしのあたまでは相関図が必要になったぐらい。
あきらかに『ゆりかごを揺らす手』みたいなラストだとおもってたのに、複雑なニンゲン関係がぜーんぶちゃんと繋がってることに気づいてくると、「警察官が犯人にたどり着く」行程がおもしろくなってくる。

ただ出産の予定がある女主人とベビーシッターのごたごたじゃなくて、警察が殺人事件の犯人を追いつめていくミステリ仕立て。

このおかげで、ベビーシッターのゾーイがクローディアに隠していたことが明らかになってくる。

最後まで読み終えると、この小説、あのラストの衝撃を読者にたのしませる工夫がうまくされてたねー、って感心しちゃう。

予測できる人もいるとおもうし、冷静にかんがえるとカンタンに予測できちゃうラストなんだけど。
途中にいろんな方向に話を膨らませていろんな伏線を散りばめていくせいで、冷静になる間もなく一気に読み進めちゃったわたしは、このラスト、「え!?」ってなった。

おもしろかった。
途中でいくつか抱いた違和感も、ちゃんとその解明のオチがつけられてたし。

でも。
ものすごい残忍な犯行を思いついたのに、その犯人の計画じたい、ものすごいムリがあるすぎる気がする。
被害者選びもぜんぜん慎重じゃないし。
肝心なとこが杜撰。
それがこの小説のちょっと残念なとこ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外小説
感想投稿日 : 2016年5月27日
読了日 : 2016年5月27日
本棚登録日 : 2016年5月27日

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