帯の文に惹かれて購入。すごく不思議な小説だった。著者の本業が社会学者だというのも、関係あるのだろうか。
「パッチワークを作る時、普通は柄の違いに気を取られるが、岸さんは縫い代を見ている」という小川洋子さんによる帯の一文がとてもしっくり来る。
表題作には、名前のない男と女が複数登場する。1人でいたり、カップルでいたり。その人物(たち)がパッチワークを作る1枚の布だとしたら、たくさんの布によって構成されるパッチワークの、まさしく縫い代の部分を描いているように感じる。
人は濃かったり薄かったりする人間関係をたくさん持っていて、その中で予想外の人同士が繋がっていたりする。たくさんの組み合わせの布で作られるパッチワーク。現実の人間模様も、そのように構成されていると思う。
これは実際読んでみないと分からない感覚かも。毎度レビューは書いているけれど、言葉で説明するのがこれほど難しい小説と久々に出逢った。
ストーリーがどうとかで語れる類ではないのは確か。
表題作ともうひとつの「背中の月」にもよく読むと繋がっている部分があることに気づく。
短い2作のみの薄い小説だけど不思議な感触が印象に残った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2017年10月6日
- 読了日 : 2017年10月6日
- 本棚登録日 : 2017年10月6日
みんなの感想をみる