ハゴロモ

  • 新潮社 (2003年1月20日発売)
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本棚登録 : 1407
感想 : 220
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発売当時(13年前)読んだきりだったのを再読。装丁がとても素敵な本。

癒しの小説、という表現がぴったり。
8年にも及ぶ交際のあと不倫相手と半ば捨てられるかたちで別れた主人公のほたるが、東京から北国にある地元に束の間戻ることを決める。
祖母が営む風変わりな喫茶店を手伝いながら、田舎のゆるやかな暮らしのなかで、かつての知人や新しく出逢った人々の優しさに触れ、擦りきれた心を徐々に癒していく。

よしもとばななさんの小説らしく、“死”というものがすぐ側にあって、しかもそれはとてもむごい形で亡くなっていて、残された人の悲しみはいつまで経っても完全に消えることはない。
そこで傷つき立ち上がれないままでいる人に触れることで、主人公も自分の傷に向き合う。
出逢いの奇跡とか、不思議な力とか、信じない人にしてみたらまったくの眉唾物だろうけど、人間の勘だとか縁というものは科学だけでは解き明かせない力を秘めているものだと私は思っていて、この小説にはまさしくそういったものがたくさん詰まっている。

回復する力というのは偉大だ。
人の優しさだけではなく、時間の経過だけでもなく、その人の回復力だけでもない。すべての要素が絡み合って、徐々に自分を取り戻していく。
その時間はまさに“ハゴロモ”みたい。
5年前の自分に読ませてやりたい。笑

ほたると、るみちゃんという友だちでもなく家族でもない特別な関係がとても素敵だと思った。かけがえのない縁というのはこういうものではないか、って。
よしもとばななさんの小説を読むと、こういう間柄って羨ましいなぁと大抵思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2016年8月5日
読了日 : 2016年8月5日
本棚登録日 : 2016年8月5日

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