バベル17 (ハヤカワ文庫 SF 248)

  • 早川書房 (2008年7月15日発売)
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本棚登録 : 285
感想 : 31
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時は未来の戦乱時代、地球は銀河同盟の一員として大規模な宇宙戦争を繰り広げています。敵の破壊工作が行われる現場で必ず傍受される謎の暗号「バベル-17」の謎を解くため、天才的な言語センスを持つ美貌の詩人リドラ・ウォンは個性的な仲間たちと共に宇宙へと旅立ちます。バベル-17が暗号ではなく未知の言語体系であることを突き止めた彼女は、その鍵を握るある人物と出会いますが・・・

表紙イラストのダサさには眼をつぶれ!(笑)
華やかなスペースオペラの体裁を取っていますが、その実態は空前絶後の「言語SF」。ネビュラ賞受賞もうなずける、玄人受けする傑作です。鴨は10代の頃に一度読んでおりまして、20年ぶりの再読です。が、
よくこれ読破できたな10代の自分。
と変な感動をしてしまうほど(笑)捻った作品で、たぶん10代の自分はかなり飛ばし読みしてたんだろうなぁ・・・(^_^;ディレイニーの作品にしてはかなり読みやすい方だと思いますけどね。

以前レビューしたディレイニー作品「ノヴァ」にも通ずるこの作品の特徴は、単なるSFには留まらない重層的な構造を持ちつつも、その一方でそうした知識を持ち合わせなくとも充分SFとして面白い、という点に尽きます。10代の頃にはたぶん読み飛ばしていたであろう言語理論に関わる描写についても、今回は10代の自分よりは理解しているとは思いますが(笑)100%理解した自信はありません(^_^;でも、言語を巡る一つの謎解きという視点で読むと充分スッキリしましたし、そういう意味でこの作品はSFであると同時に優れたミステリでもあります。
それに、何よりも登場人物たちがとても魅力的で、読んでいてもダレることがありません。天才的な資質がありながらコンプレックスの塊でもある主人公リドラ・ウォンの人物造形はもちろん、脇を固める仲間たちもグロテスクにしてチャーミングな連中ばかり。リドラを見守るトゥムワルバ博士との艶っぽい関係性もグッと来ますねうーん、10代の頃は気づかなかったことがいろいろと理解できる歳になったなぁ・・・(-_-)しみじみ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF(海外・長編)
感想投稿日 : 2010年4月12日
読了日 : 2010年4月3日
本棚登録日 : 2010年4月3日

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