未来からのホットライン (創元SF文庫) (創元推理文庫 SF 663-6)

  • 東京創元社
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感想 : 42
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ノーベル物理学賞を受賞しつつも故郷スコットランドで世捨て人のような生活を送るチャールズ・ロス博士は、「60秒過去に6文字のメッセージを送る」時間間通信を可能にするプログラムを開発する。アメリカから駆けつけた数理物理学者の孫・マードックと仲間たちと共に研究を続けるうちに、この研究が持つ大きな意味に気づいていく。一方で、ある事件が世界規模で人類の未来を脅かしつつあり、時間間通信の研究は否応無しに歴史の渦中に飲み込まれていく・・・

ゼラズニイだのブラッドベリだのを続けて読んでいたので、久しぶりにハードSF読んでものすごく爽快感を味わいましたヽ( ´ー`)ノ
「タイム・マシンで過去を改変できるか」という、SF的発想の古典中の古典であるタイム・パラドックス・テーマに、超ポジティヴなハードSFの泰斗・ホーガンが真正面から挑んだ長編。この手のワン・アイディア・ストーリーって、普通は短編で充分というか、瞬発力勝負なんですよね。長編だと先が読めちゃってダレるんですよ。そこを敢えて長編で勝負するホーガン、いろんな意味でさすがです(笑)
この作品におけるホーガンの工夫は、誰がどう描写しても嘘クサくなる「タイム・マシン」を登場させず、「時間間通信」をメインのガジェットに据えてタイム・パラドックスを描いたこと。当時はありそうでなかったんじゃないでしょうか。物語後半が加速的に政治色が強まるところが実にホーガン的ではありますヽ( ´ー`)ノ人物造形が思いっきりステロタイプなところもホーガン的ではありますヽ( ´ー`)ノが、二転三転するストーリーのドキドキ感といい、余韻に残るハッピーエンドといい、実に「SF映え」する作品ですね。佳作だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF(海外・長編)
感想投稿日 : 2012年8月11日
読了日 : 2012年8月11日
本棚登録日 : 2011年9月26日

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