図書館の神様

著者 :
  • マガジンハウス (2003年12月18日発売)
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感想 : 712
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一冊の本としては短いけれど、温かいお話でした。登場人物もいい人ばかりで現実味はないけど、ほっこり。
作者はきっと本が好きで、でもすべての人が本を好きになるべき!とは思ってないんじゃないかな、と感じた。でも、文学と聞くだけで拒絶反応を起こさないでほしい、とも。

文芸部の存続や意義の話が出るたび、懐かしく思い出される景色がありました。
中高の六年間、文芸同好会に在籍し続けた。最後の二年間は、やっぱり会の存続価値や意義を疑われて、悔しい思いもした。
そんな時、当時の部長が(一個上の、すごく尊敬してた人)なんとかしようと声をかけて、全員で小さな児童文学賞とエッセイコンテストに応募した。やってみると結果はついてくるもので、彼女が文学賞、私がエッセイコンテストに入賞した。
…けど、結果として文芸同好会は翌々年なくなった。
私が部長を務めたその次の年は百人一首に力を入れて過ぎた。やっぱり元部長は百人一首もすぐマスターして(何かを熟達することに「やっぱり」という言葉が似合う人だった)、私もがむしゃらについていき、手前味噌ながら、ふたりの試合は結構レベルが高かった。あと、その年、古典の授業で行われた百人一首テストの結果は、絶対うちの部がダントツだった(笑)
けど、くどいようだけど、その翌年、文芸同好会はなくなった。
結局、部の存続に生徒のがんばりは関係ない。文芸同好会に愛着を持ち、支えてくれた先生の定年と運命を共にする形で、「守れなくてすみません」と連絡をくれた一代下の部長がただかわいそうで、うまく言葉をかけられなかった。
けど、とにかく、私はみんなで賞を目指してたときや、百人一首に真剣になってた時は、本当に楽しかったし、エッセイコンテストの入賞を先輩に報告したとき、初めて「やるべきことをやった」と思えた。
日本中に、そんな幸せな文芸部がひとつでも多く残っていたらいいなと思うし、文芸部に入ろうと思う高校生がなくならない世の中であってほしいなと思う。
この作品の先生がきちんと本に向き合うところも、その結果「私はこれじゃない」と思うところも、まっすぐで誠実な人としてすごく好感が持てました。
作中の唯一の文芸部員の男の子は、絶対こんな人いないー!って思うくらいいい男で、ちょっと惚れました(笑)
本を読む女性は本を読む男性に惹かれるっていうけど、当然だよね。

本好きに生まれて幸せだなー、と思える作品です。少なくとも、私はそう思った。
そして、懐かしい思い出に浸る時間をいただきました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年3月5日
読了日 : 2013年3月5日
本棚登録日 : 2013年3月5日

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