ラファエル前派:ヴィクトリア時代の幻視者たち (知の再発見双書 94)

  • 創元社 (2001年3月1日発売)
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感想 : 18
5

こんなにも面白いやつらがいたとは!
ラファエル前派……!
ラファエルスキーからするとけしからん命名だが、分かる。
君らの言いたいことも、やりたかったこともって、偉そうだが。

いや、にしても。
にしてもだ。
「ラファエル前派」が熱いのは、これがいっこの「青春」の物語をすでに創り上げているからである。
こんなにも真面目に青春をしていた芸術家がいたということが嬉しい。
素晴らしい。

以下、主な登場人物。
ダンテ・ガブリエル・ロセッティ(自分を「神曲」のダンテとかに置き換えて絵を描いちゃうおちゃめなやつ)
エリザベス・シダル(その恋人、詩や絵画に才能を発揮するも病んで自殺めいた死に方をする。ミレー「オフィーリア」のモデル)
バーン・ジョーンズ(23歳の時に、28歳で大学教授だったロセッティに出会う。ロセッティを慕う若き画家)
ウィリアム・モリス(バーン・ジョーンズの生涯の友人。アーツ・アンド・クラフツ運動の先駆者。商売も上手)
ジェイン・モリス(モリスの奥さん。超美人。エリザベスの死後、ロセッティとは親密になり彼の絵のミューズになっていく)
マリア・ザンバコ(ジョーンズの彼女。モデルでもちろんカワイイが、ある絵のモデルになったのち、ジョーンズとは別れる)
ジョン・エヴァレット・ミレイ(ラファエル前派創設に関わる。次第に、集団とは距離をおき、画家として偉大になっていく)
オーブリー・ビアズリー(ラファエル前派のほぼ実体がなくなりかけた頃にやってくる天才。ジョーンズやモリスに不審を抱きつつ、疑いつつ近づき、そしえやはり拒絶をされたりする)

映画か?と言いたくなるようなメンツ、そして関係。
素晴らしい。
彼らの物語のハイライトはオックスフォード・ユニオンをみんなで装飾するところだろう。
ジョーンズやモリスが中心で、彼らは慕っているロセッティの周りをくるくる廻って、笑いしかなかったらしい。
そして、彼らの関係も段々変わる。
もちろん、思想や芸術や、そういうものの変化が大きいのだろう。
けれど、根本には年齢があるのではないかと思う。
時の流れはそういうものだ。
彼らの芸術の動きは、彼らの青春と密接に関わる。
心や精神が未熟で、それが成熟(のようなもの)に向かう。
その間におこる様々。

これは劇的だ。
本当に、劇的だ。

世代をいくつもまたぐのも、いい。
最後のあたりに、天才・ビアズリーが登場するくだりは興奮する。
あまりにも物語的で、だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 美術書
感想投稿日 : 2011年4月18日
読了日 : 2011年4月18日
本棚登録日 : 2011年4月18日

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