教えて! 学長先生-近大学長「常識破りの大学解体新書」 (中公新書ラクレ)

著者 :
  • 中央公論新社 (2017年3月8日発売)
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感想 : 12
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生まれも育ちも東京で、関西には縁がないため、自分が学生の時は近大は名前を知っている程度、最近では「近代マグロ」でニュースになった…くらいの認識しかなかった。
が、あのホリエモンが東大以外で行きたい大学は近大と言って、卒業式でもスピーチしたりしたそうなので、どんな大学なのか興味をもったところ、この本が発売された。
まずP26で、子供の出席状況を親がリアルタイムで確認できるポータルサイトを開発した話が出てきて、「あ~、これも近大なのね」と思い出し、最近何かと話題作りが上手で…と思いながら読み進めていくと、このポータルサイト、親の利用率は半年間で6.8%に過ぎず、実は「子供が体あるいは心の不調で大学を休みがちになったとき、その小さな変化に気づくことができる」という話が披露される。「弱い人に合わせて設計し、利用を強制することなく、必要な人が必要な時に上手に使えばよい」という考え方に、話題作りなどと思ってしまった自分を恥じた。
近代マグロも、初代総長が「国民を飢えさせてはいけない」という思いのもと、「日本は海に囲まれている。海を畑と考えれば、広大な畑がある」と始めた研究の賜物だったことを知り、これまた驚愕。
インターネット出願も近大が先陣を切って、入試事務の大幅な効率化が図られるようになったことや、また研究成果を社会に出し研究資金を賄い、受験料・授業料収入は4割以下というのにもびっくり。少子化の中受験生を確保するため、いろいろな大学が新しいことやってるけど…なんて色眼鏡で見ていた自分を、本当に反省した。
もしかしたら、近大以外の他の大学を旧態依然たらしめているのは、私たちのようなOBOGのノスタルジーではないかという気がしてきた。今どきの大学は代返も許されないんだとか、ネットなんかで簡単に出願しちゃって…などとつい言ってしまいがちだが、時代に合わせて大学が変わっていくのは至極当然のことであって、近大はむしろ、昔から実学の精神のもと、いろいろなことに果敢に取り組んだ結果、今そこここで花開いているということではないか…と認識を改めた。
第4章の、若い人たちの質問に対する学長の言葉も名言が多かった。ちょっと残念だったのは、14学部あるのに、取り組みが紹介されているのは圧倒的に理系学部で、文系は国際学部のみ。他の文系学部は、学生個人のエピソードはちらほらあるものの、例えば伝統的な法学部とか経済学部は今どんな感じなのか、よくわからなかった。
今、我が家が関西にあったなら、息子が近大を受けると言ったら二つ返事で応援するのだが、あいにく関東在住で、関東地方以外の私立大学に下宿で通えるほどの経済的な余裕はない。息子には、通える範囲の大学で、近大みたいな進取の精神に富んだ大学を見つけてもらって、そこを目指してもらうしかないな…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: enjoy reading
感想投稿日 : 2017年7月13日
読了日 : 2017年5月3日
本棚登録日 : 2017年7月13日

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