『プリンセス・トヨトミ』『偉大なる、しゅららぼん』など、西日本の歴史を踏まえた壮大な物語を提示してくれている、万城目学。
まだ読んでいない作品が文庫化されていると知って、電子書籍版を探して読んでみることにしました。
本作品は5つの短編小説が集められた、短編小説集。
全ての作品が、『西遊記』や『三国志』といった、中国の古典を下敷きにして書かれています。
表題にもなっている『悟浄出立』は、西遊記の主要登場メンバーのひとり、沙悟浄を主役にした作品。
三蔵法師、孫悟空、猪八戒といった個性溢れる同行者たちを観察し、随行するというスタンスの沙悟浄。
猪八戒そして三蔵法師と語り合うことで、自らの内面と向き合う姿が、描かれています。
西遊記については活劇的なイメージを持っていたのですが、このような視点での読み方もあるのだなあと、気づかせてもらいました。
日本の歴史を題材にした作品のイメージが強い作家さんですが、日本と中国双方の古典を読み、作品を書く素材のひとつにしているのだなあと、受け取りました。
それぞれの原典についてはうろ覚え程度の知識しかない自分ですが、現代的な文章もあいまって、苦労することなく読み進めることができました。
まだまだ引き出しが多くなっていきそうな作家さんなので、今後も作品の発表をチェックして読んでいきたいと思います。

2017年12月11日

読書状況 読み終わった [2017年12月11日]
カテゴリ 歴史小説

生誕300年を記念して開催された展示会が、数時間待ちの大盛況となり話題になった、伊藤若冲。
書店巡りをしていたところ、この絵師の名前そのものが題名になっている小説が文庫化されていたので、電子書籍版で読んでみることにしました。
舞台は、江戸時代中ばの京都。
若冲が40歳の頃から、物語が始まります。
大店の長男として生まれた若冲。
しかし商売は弟たちに任せて、長年、絵を描く日々を過ごしています。
一見めぐまれた環境にいる若冲ですが、娶った妻を亡くすという、暗い過去を背負っています。
そのような過去と向き合い、絵の世界に没入する若冲。
しかし大店であるからこその、兄弟親戚やライバル店との諍いが、次から次へと起こります。
当時の京都で一流として認められていたのは、風景や草花などの、美しさを強調した絵。
題材のリアルな面も描写する若冲の絵は、”奇抜な絵”とされますが、しだいに高い人気を得ていきます。
身に降りかかる騒動に対峙しながら、自らと向き合い絵を描く、そんな若冲の85年に渡る生涯が描かれています。
家族構成などは、通説とは異なる設定で書かれているようです。
そのため読む人によって、評価が分かれているようですが、「芸術を極めるとはどういうことか」について、ひとつの切り口を提示してもらえたなと感じました。
同時代に活躍した池大雅、与謝蕪村、円山応挙、谷文晁、といった画家たちも登場し、日本画鑑賞が好きな自分は、興味深く読み進めることができました。
まだ美術学校が無いこの時代に、画家と呼ばれる人たちがどのように自らの芸を磨いていたのか。
当時の空気を嗅がせてもらったような感覚にもなりました。
時代小説好きの人、芸術に興味がある人、人間模様を描いた作品が好きな人・・・さまざまな読者に響く部分のある作品だと思います。

2017年12月7日

読書状況 読み終わった [2017年12月7日]
カテゴリ 歴史小説

京都を舞台にした、独特の小説世界を提示してくれている、森見登美彦。
その中でもタヌキが主人公という異色の小説、『有頂天家族』。
続編が文庫化されていたので、電子書籍版で読んでみることにしました。
男(雄)ばかりの4人兄弟と、母親とで暮らすタヌキの一家が、主人公です。
人の姿に化けて、人間世界にも入り込んでいる、タヌキたち。
そして、タヌキたちにも強い影響力を持っていた、天狗。
今回は、年老いて力を失ってしまった天狗の元に、かつて弟子として育成していた「二代目」が帰ってくる、というシーンからはじまります。
師匠と弟子という立場でありながら、袂を分かってしまった、二人の天狗。
どちらが真の実力者として、君臨するのか。
そして、かつてタヌキ界の実力者だった亡き父親の跡を、タヌキの一家は継ぐことができるのか。
この二つの「跡目争い」を中心に、話が展開していきます。
「このまま、漫画やアニメになりそうだなあ」と感じたのですが、このシリーズはすでに、テレビアニメ化されているのですね。
子供世代からその親の世代まで、広く楽しめるシリーズではないかと思います。
第3弾も計画されているようなので、楽しみに待ちたいと思います。

死神が主人公というインパクトのある設定で話題となり、映画化もされた伊坂幸太郎『死神の精度』。
その続編が発表され文庫化されていると知って、遅ればせながら読んでみることにしました。
前作は短編集の形でしたが、今回は長編小説です。
今回、死神が訪れたのは、30代の小説家”山野辺遼”。
作家活動以外にTVのコメンテーターとしても活躍していた山野辺は、広く世間に知られる存在でした。
しかし1年前に、一人娘を殺されてしまうという辛い経験をします。
その辛さに耐えながら、「娘を殺した犯人に復讐する」チャンスを伺っていた、山野辺夫妻。
有名人だった彼を取材しようとする報道陣をかき分けて、家を訪問してきたのが、”千葉”(=死神)。
死神の仕事というのは、7日間対象となる人物を観察し、予定通り死ぬことを「可」とするかどうか判定すること。
山野辺は娘を殺した犯人に復讐できるのか、そして死神は彼を死ぬべき存在と判断するのか否か。
7日間の、死神と山野辺夫妻の交流、そして犯人との攻防が、心理面そして時にはアクションシーンを織り交ぜて、展開していきます。
その物語をたどりながらも、死ぬということはどういうことなのか、さらには伊坂幸太郎作品の共通テーマとも言える、他者を支配するということ、他者に(心理面を含めた)暴力を加えるということはどういうことなのか、想いを巡らせながら読みました。
あらためてふり返ると重いテーマを扱った小説なのですが、登場人物たちのユーモアを交えたやりとりも相まって、滅入ることなく読み進めることができました。
伊坂幸太郎の長編小説は久しぶりに読んだのですが、より重厚感のある作品にパワーアップしているなと、感じました。
今後も作品をチェックして、読んでいきたいと思います。

2017年11月30日

読書状況 読み終わった [2017年11月30日]
カテゴリ 小説

国内クリーニング業界最大手の、白洋舎。
その創立者である五十嵐健治が、自らの人生を振り返り、交流のあった作家、三浦綾子に語った内容をまとめた伝記作品。
明治10年に新潟県に生まれ、家庭の事情で養子に出されることになった健治少年。
高等小学校を卒業した13歳から奉公に出ますが、思い立ったら行動せずにはいられない性格もあり、東京に飛び出して行ってしまったり、軍務についたりと、職を転々とします。
無一文で宿に泊まる、北海道の原野に隔離され重労働させられる、200キロの道を自らの脚で移動する・・・等々、現代からは想像がつかない、破天荒な経験を10代20代で積みます。
紆余曲折を経てクリーニング店の経営者となった後も、爆発事故や信頼していた部下によるクーデターなど、さまざまな苦難に遭遇する人生はまさに、「小説よりも奇なり」。
自分がこれまでに経験してきた苦労など、なんということはないな、と感じてしまいました。
そして作品の柱となっているのが、五十嵐氏が放浪時代に出会った、キリスト教信仰について。
辛い経験をした時に平静でいられる、立ち向かうことができる。
(キリスト教に限らず)信仰を持つということはこういうことなのかと、自分ながらに理解させてもらいました。
発表されてから30年が経過している作品のようですが、「このタイミングで出会うことが出来て良かった」と感じさせてもらえた、一冊でした。

2017年11月25日

読書状況 読み終わった [2017年11月25日]
カテゴリ 企業研究

クリニックを経営し診療しながら、著作やTV出演等でその考えを広めている、心療内科医による一冊。
40代以降の中高年の身体、メンタルの変化について、その要因は栄養の接種と運動等の生活習慣にある、と説いています。
身体のしくみを体系的に理解するというよりは、読者が日ごろ感じているであろう心身の変化を具体的に取り上げて、そのメカニズムと対処方法を提示する、という書き方になっています。
内容的には、これまで読んできた類書と共通する部分が複数ありました。
最新の医学研究から得られた共通認識、と捉えるべきなのでしょうね。
このような本は、読んで頷くだけでなく、気になった部分をどんどん、実行していこうと意識しています。
本書で書かれていた「舌の体操」をやってみたら意外とキツかった・・・今後も続けていきたいと思います。
年齢を重ねて、心身に変化を感じるようになった人には、気づきを与えてもらえる一冊だと思います。

2017年11月21日

読書状況 読み終わった [2017年11月21日]
カテゴリ 健康

話題作を次々と発表している人気作家、伊坂幸太郎。
「しばらく作品を読んでいないな」と気づきました。
書店でチェックしたところ、この作品が文庫化されていました。
表題作を含め7つの作品から構成された、短編集です。
それぞれの作品が発表された時期や媒体は、作品によって異なるようです。
複数の視点から描き、長編小説のような重厚感のある作品もあれば、舞台の脚本のように、テンポ良く書かれた作品もあります。
それでいて、相互の作品の中で同じ人物が登場したり、エピソードが共有されていたりもします。
さまざまな表現を追求している、伊坂幸太郎らしいバラエティーに富んだ短編集だなあと感じました。
書かれているテーマとしては、”理不尽な暴力”、”救いはあるのか”、”時空のねじれ”、等々、他の伊坂幸太郎作品と共通するものもあり、今回も興味深く読ませていただきました。
ひとつ読むと、他も読みたくなってしまうのが伊坂幸太郎作品。
文庫化されている作品が他にもないか、探してみたいと思います。

2017年11月13日

読書状況 読み終わった [2017年11月13日]
カテゴリ 小説

孫正義という指導力・カリスマ性のある経営者のもと、短期間で日本を代表する企業に成長した、ソフトバンク。
そのスピードと、「何が本業なのだろう」とも感じる事業の多様性という点で、日本の中で独特の輝きを放っている会社だなあと、感じています。
その孫社長の側近として働き、社長の”むちゃぶり”と向き合い、対処してきたという著者による一冊。
現在は独立し、教育系の企業の社長として活躍しながら、ソフトバンク時代に培った「高速PDCA」のノウハウを著書として発表しているそうです。
本書はその高速PDCAのノウハウを、自身が経験した孫社長やソフトバンク社内でのエピソードを交え、わかりやすく紹介しています。
企業で働いた経験のある人にとっては、PDCAというのはおなじみの、仕事の進めかただと思います。
しかし本書を読むと、ソフトバンクでのPDCAというのは、自分が経験してきたものとはずいぶん違うものなのだなあと、感じました。
特に印象に残ったのは、目標に向けてやるべきことを分解し、日単位のレベルに落とし込んでいること。
そしてその達成度合いを、デイリーで確認すること。
達成したかどうかは感覚で評価するのではなく、数字で判断する。
目標を達成するための手段は、どれが良いのか事前検討に時間を使いすぎない。
致命的なリスクを伴うものでないのならば、考えられる手段は同時進行で試す。
試した上で、効果のあるものを抽出し、その手段に集中する。
文章で表現すると簡単なように思えるかもしれませんが、これらのことを徹底してやる、それも組織全体でそのような仕事の進めかたをしている。
このような会社はなかなか無いと思います。
ソフトバンクという会社がどうして急成長することができたのか、その秘密の一端を、伺い知ることが出来たように感じます。
個人の仕事の進めかた、グループや組織の進めかたを見直すという意味でも、若手からベテランまで、幅広い人に参考になる一冊だと思います。

2017年11月6日

読書状況 読み終わった [2017年11月6日]
カテゴリ 仕事術

オリンピック金メダリストや企業幹部といったクライアントを持つ、本国ノルウェーでは著名なメンタルコーチによる一冊。
自らのノウハウをまとめた著書を先に発表し、本国では記録的なベストセラーになったとのこと。
その著書の内容をベースにして、「実践編」としてまとめられたのが、今回の作品です。
「7日間で自分を変える」というコンセプトで、著者が行なっているコーチングの内容を、7つの要点に分けて紹介しています。
初日には何をするか、2日目は・・・という形で具体的に書かれているので、読者が実践しやすい形になっています。
特に印象に残ったのが、時間管理について。
この分野については一時期、関連する本を集中して読んでいた時期がありました。
しかし本書を読んで、「出来ていないなあ」と感じたことが複数、ありました。
時間管理以外の項目もそうですが、「以前読んだ」「知っている」ということと、「やっている」ということには大きな違いがあるなと、反省しました。
著者の軍隊での経験がベースとなっているということもあり、読者にとってはハードに感じる部分があるかもしれません。
しかし、自己啓発や仕事術に関して、網羅的にかつコンパクトにまとめられた実践書として、読んで損はない一冊だと思います。

2017年10月30日

読書状況 読み終わった [2017年10月30日]
カテゴリ 自己啓発

自らの北海道大学柔道部での日々を題材にした、増田俊也の小説『七帝柔道記』。
国際ルールとは異なる、寝技中心の柔道に学生時代を賭ける柔道部員たちの姿に、強いインパクトを感じました。
その小説の中で、旧制高校の柔道を扱った文学作品として取り上げられていたのが、井上靖の自伝的小説『北の海』。
井上靖の作品は以前、歴史を題材にした長編小説を中心に、夢中になって読んでいた時期がありました。
その井上靖が、学生時代に柔道に打ち込んでいたということに興味を持ち、電子書籍版を探して読んでみることにしました。
主人公は井上靖自身がモデルと言われている、伊上洪作。
旧制中学を卒業したものの、高校に合格することができず、「浪人」生活を送ることになった洪作少年。
両親は仕事の関係で台湾にいますが、両親の元にも行かず、また親戚とも離れて、中学時代を過ごした沼津での生活を続けます。
しかし勉強に集中せず、中学の柔道部に通っては稽古に打ち込む、そんな毎日を送ってしまいます。
そこにある日やってきたのが、旧制四校(現在の金沢大学)の柔道部員。
小柄な体の四校生。
しかし、いきなり寝技に持ち込むその柔道に、まったく歯が立たなくて・・・という展開。
幼少の頃から両親と離れて暮らし、家族という温かくもあり制約ともなる環境を知らずに育った洪作少年。
将来を考えなければいけない状況にありながらも、「とんぼのようだ」と周りに言われる、のんびりした性格。
それでいながら、逆にそうであるから、級友や先生は、彼の面倒を見てしまう。
そんな彼を取り巻く状況を、今の感覚からするとゆったりしたペースで、描いています。
ゆったりしたペースだからこそ、人の内面の変化というものを、細やかに描けているのかなあと受け取りました。
この作品は井上靖の自伝的小説三部作の、最後の作品なのですね。
他の作品も気になるので、探して読んでみようと思います。

2017年10月25日

読書状況 読み終わった [2017年10月25日]
カテゴリ 小説

(感想は下巻にまとめて書きます)

2017年10月23日

読書状況 読み終わった [2017年10月23日]
カテゴリ 小説

美術を題材にした小説、そしてあることに一途に取り組む女性を主人公にした小説など、作品を次々と発表している原田マハ。
自分もその作品の発表を楽しみにしている、読者の一人です。
書店巡りをしていたら、文庫化された作品が平積みされていたので、電子書籍版を探して読んでみることにしました。
先に読んだ『本日は、お日柄もよく』で、政治家や選挙の世界に切り込んだ作者ですが、今回はその頂点に立つ総理大臣を題材として取り上げています。
「総理の夫」が一人称で書き記した日記、というユニークな体裁で書かれています。
日本で初めて、女性として、しかも最年少で総理大臣になった妻。
国会議員の数が少ない野党の党首だった妻が、いかにして総理というポストについたのか。
与党/野党の入れ替わり、野党連合の中での駆け引きといった大きなうねりのなかで、総理として職務を務めるとはどういうことなのか。
二人の出会いの話など、この作家さんらしいリラックスして読めるエピソードを織り交ぜながら、全体として楽しく、前向きな気持ちにさせてくれるタッチで描かれています。
創作の部分がかなりあるとは思いますが、熟練政治家との駆け引きや首相公邸での日常生活の描写など、取材を重ねたのだろうなと感じました。
文庫版解説は現職総理大臣の妻が書いているということで、こちらも興味深く読ませてもらいました。
ペースよく作品を発表している作家さんなので、次の作品の文庫化も楽しみにしたいと思います。

2017年10月19日

読書状況 読み終わった [2017年10月19日]
カテゴリ 小説

戦前から戦後にかけて無敵を誇った柔道家、木村政彦。
その生涯を追ったノンフィクション『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』。
木村の練習の凄まじさ、柔道家としての強さの描写とともに、戦前戦後の日本の格闘技界の流れ、さらには朝鮮半島やブラジルとの関係も盛り込んだ、重厚なノンフィクション作品だなあと、強く印象に残りました。
その著者である増田俊也が、自らが北海道大学柔道部で経験した青年時代を小説化した作品を発表していると知り、文庫化を待って電子書籍版で読みました。
主人公は、増田俊也。
柔道部に入りたいがため、二浪して北大に入学した増田青年の、”一年目”の春。
一年先に入学していた、高校時代の柔道部の同級生と会う、増田青年。
旧交を温めながらも、その同級生が発したのは、「練習がきつ過ぎて、柔道部を辞めた」という告白。
覚悟を決めながら道場に入ると、そこには部員の汗がたちこめ、部員のうめき声が聞こえる光景が待っていた・・・という始まり。
北大柔道部の部員の目標は、北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の柔道部で争われる「七帝戦」で勝つこと。
そしてその七帝戦というのは、一本のみでの決着、待ったなし、場外もなしという、講道館ルールとは全く異なる柔道。
「練習量が強さを決める」という七帝柔道で強くなるために、必死で練習を積み重ねる、増田青年の日々が描かれています。
絞め技に”参った”をしても手を緩めない、練習の厳しさ。
新聞にも載らないような”ローカルな大会”、七帝戦で勝つという目標。
青春を謳歌する、大学の同級生。
悩みや疑問を抱きながら練習を続ける、増田青年の姿を読み進めていくうちに、「人間は何のために生きているのだろう」と、考えてさせてもらいました。
ただ苦しいだけでなく、”練習以外では”優しい柔道部の先輩たちとの交流もコミカルに描かれているので、青春小説として楽しめる内容にもなっています。
「ここで終わってしまうの?」というラストだったのですが、どうやら、続編があるようですね。
続きが気になるので、文庫化されるのを楽しみに待ちたいと思います。

2017年10月17日

読書状況 読み終わった [2017年10月17日]
カテゴリ 小説

社会が大きく変化していることを、実感しています。
具体的にどのような価値観や行動原理が求められるのか?自分自身どのような備えをすべきなのか?不透明さや不安を感じています。
そのため、未来予測に関する書籍を、意識して読むようにしています。
この本の著者は、過去に未来予測の分野で複数の話題書を発表してきたという、フランスの知識人。
過去に大統領の顧問をつとめた経験もあり、「ヨーロッパ最高の知性」と称されているそうです。
そんな著者が、これまで発表してきた未来予測をどのように行ってきたか、そのベースとなる考え、方法を開示した一冊です。
前半は、これまで人類がどのように未来予測をしてきたのかを、幅広い視点で総括しています。
その上で、21世紀の現在、どのような形で未来予測ができるのか、その予測対象をどのように捉えるのかについて、著者の考えを提示しています。
後半部分について、以下に自分なりの要約を記述します。
・コンピュータおよびデータ収集/分析技術の発達により、データをバックグランドにした未来予測がされるようになる
・これまでは原因と結果、という視点で捉えられていたが、今後はデータと事象の相関関係に、焦点が当てられるようになる
・社会の権力は、有効なデータを収集し活用する組織が、握るようになる
・個人や個人が属する組織の未来は、従来に比べてかなり多くの部分で、予測できるようになる
・そのため、運命論的に生涯を送っているような感覚に、陥る危険性がある
・大切なのは、未来予測を踏まえて、どのような未来を作り上げていくかという意思と、その実践である

個別の内容では、健康や金融の面でどのようなデータが集められ予測が立てられているのか、といったあたりが気になりました。
そして全体としては、 どのような未来を送りたいのか?自分自身で整理しなければいけないなと、感じました。
終盤にその具体的な方法が書かれているので、大変そうではありますが、実践していきたいと思います。

2017年10月11日

読書状況 読み終わった [2017年10月11日]
カテゴリ 自己啓発

『あかね空』で直木賞を受賞した山本一力。
江戸の市井に暮らす人々を描く、この作家さんの作品に魅かれ、折に触れて読んでいます。
まだ読んでいない長編作品が電子書籍化されていないかと探していたところ、この作品に出会うことができました。
舞台は18世紀後半の江戸。
通い大工の父親と、石工職人の家の出の母親。
その長女として生まれた、「つばき」が主人公です。
腕は良いながらも酒癖が悪く、賭場で借金を作ってしまった父親。
借金の取り立てをされて、ぎりぎりの生活をする、つばきの一家。
前半は、そんな状況の中で一家がどのように暮らしていくのかが、描かれています。
お金に困る家庭で育っていくつばきですが、あるきっかけにより、「ご飯を炊く」という能力に優れていることを、自分も周囲も知ることになります。
その能力を基礎に、お客に食事を提供するお店を営み、繁盛させていくというのが、物語の大きな流れになっています。
主人公も含め、良い面もあるが、欠点もある、江戸の市井の人々。
そんな登場人物たちの姿と交流を描くことにより、「人情の機微」のようなものを、受け取ることができました。
そして例えば、この時代の町の人たちがどのように物を買い、支払いをしていたのかなど、当時の暮らしぶりを体感しているような気持ちにもさせていただきました。
文庫では600ページをこえる長編ですが、ダレることなく読み進めることができました。
この作家さんの小説世界には、すっかりハマってしまったようです。
今後も作品を探して、読んでいくことにします。

2017年10月8日

読書状況 読み終わった [2017年10月8日]
カテゴリ 歴史小説

大企業の不祥事が相次ぎ、どのような企業に勤めていても先行きが見えない、21世紀。
そんな中で、企業グループとして長期間、大きな存在であり続けるのが、「三大財閥」と呼ばれる、三菱・三井・住友のグループ企業群。
この本はその三大財閥について解説した一冊です。
第1章の導入を経て、第2章ではそれぞれのグループがどのような企業で構成されているかを解説し、以降は、世界市場への進出度、各財閥の発展の基となったキーパーソンの紹介、そして、最新の動向と未来展望という内容に展開していきます。
読んでまず驚いたのは、各グループに分類される企業の多さとその大きさ。
三大財閥合わせると日本のGDPの4分の1を占める、ということで、その影響力の強さを改めて認識しました。
またその大きさという理由も含め、戦後の財閥解体の動きの中で、この三大財閥が生き残った経緯も、理解することができました。
現在は相互のグループ企業が提携している業種もあり、全体的にゆるやかなつながりになりつつあるようですが、今後も日本経済の中で大きな存在であり続けるのだろうなあと、感じました。

2017年9月28日

読書状況 読み終わった [2017年9月28日]
カテゴリ 企業研究

『トム・ソーヤーの冒険』などの作品で知られるアメリカの作家、マーク・トウェイン。
少年時代にこの方の小説世界に触れて、ミシシッピー川という川の名前を知った、という記憶があります。
そのマーク・トウェインが、『人間とは何か』という題名で、人間の本質について書いた文章を残していると知り、書店で探して読んでみることにしました。
老人と青年が対話する形で、書かれています。
その老人が教え諭す話というのが、人間とはどのような存在なのか、ということ。
自分なりの理解を、以下に要約します。
・人間は自分自身の安心感を求めて行動する
・人間の考え、行動は、それまでに得た情報、経験により左右される
・上記のような理由で、人間は他の動物たちと比べて大きな差はない
そのような老人の主張に対して若者が反論しますが、老人によりことごとく論破されてしまう、という内容になっています。
訳者による”あとがき”によると、本書はマーク・トウェインが60歳前後に書かれたようです。
人生の終盤をむかえ悲しい出来事が続いたことにより、悲観的な人生観を持つようになった、という背景があるとのこと。
ただこの作品で書かれていることは、人間の本質を理解する上で、重要な視点だなあと、感じました。
このような考え方があると知っていることによって、逆に、他人の行動、振る舞いに対する怒りを抑えられるかもしれないなと、感じました。
著者のイメージが変わるという意味で刺激は強い作品ですが、人間とは何か、自分はどのような行動原理で生きているか、考えさせてもらえた一冊でした。

2017年9月26日

読書状況 読み終わった [2017年9月26日]
カテゴリ 自己啓発

ネガティブなことを考えたり、言ったりしてしまう。
自分が前進できていないような気がする、前向きな気持ちになれなくなる。
そのような自分に気づいた時は、意識して自己啓発本を読むようにしています。
この本は、「旅に関する文章を書く」という仕事からスタートして、依頼された仕事を引き受けているうちに、年間300件以上の講演会を行なっていたという著者(故人)による一冊。
”人に喜ばれる存在になる”という人生の目的に向かって歩いてきた著者が、「感謝をする」ということの大切さを説いています。
人間関係、お金、子育てなど、日常生活における大切な事柄ごととに、章が分けられています。
基礎となる考え方が、著者が経験した事例とともに、読者に語りかけるような文章で綴られています。
これまでに読んできた自己啓発書の中にも、感謝することの大切さについて、触れられているものがありました。
しかし自分自身、「なかなか身につかないなあと」と焦れる部分がありました。
本書には、感謝の言葉を発することそのものが大切なことなのだと書かれているので、ずいぶんとハードルを下げてもらえた気がします。
日本では一番多いとされる、念仏をとなえる仏教と、相通ずる考えかたなのかなと、受け取りました。
なにごとも、まずは実践することが大切。
心の中で、そして声に出して、感謝することを意識していきたいと思います。

2017年9月19日

読書状況 読み終わった [2017年9月19日]

外国や日本国内の地方に出かけた時に、その土地のことについて「もっと知っておくべきだなあ」と感じることが、多々あります。
なので気になる地域の歴史や、世界史全体を俯瞰して書かれているような書籍については、意識して読むようにしています。
しかし、これまでおろそかになっていたなと気づいたのが、「地理」について。
東大入試問題を題材に、世界と日本の情勢を解説している本があると知って、読んでみることにしました。
まず冒頭で、人・モノ・カネ・情報という切り口で、現在の世界がどのように動いているのかを解説し、以降は中国・米国・EUといった大きなくくりで、各地域の特徴や現在の状況を説明しています。
読了後、自分自身の地理に関する知識は、学生時代のままで止まっていたなのだなあと、反省してしまいました。
「世界はずいぶんと変わっているのだなあ」というのが、正直な感想です。
また地域によって、自分が把握している情報の量・密度に差があるということも、認識することができました。
特にアフリカに関しては、本書から新たに得られた視点が複数、ありました。
自分にとって、地理という分野について知的興味を刺激してもらえた、一冊でした。
地理については、今後も関連する書籍を探して読んでいきたいと思います。

2017年8月31日

読書状況 読み終わった [2017年8月31日]
カテゴリ 国際人
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社会が変化しているのは実感するが、どのような方向に行くのか見通せない、自分はどう対処すべきなのかがわからない。
そのような“焦り”を鎮める意味でも、ヒントになりそうな書籍を読むようにしています。
この本も、日本語に翻訳されて話題となっていると知り、読んでみることにしました。
冒頭でまず、「いま先進国で生まれている子供の半数以上は、105歳以上生きる」という驚きの統計的推計値が示されます。
その上で、その「長い生涯」を生きていくには、これまでのロールモデルではない、新しい人生設計に見直す必要があると、説いています。
そして、お金、働き方、人間関係といったさまざまな切り口で、年代別のモデルを示しながら、新しい時代に合った、人生設計を提示しています。
寿命予測については複数の説があるようですが、今以上に長い生涯になるということと、それに対応した人生設計に見直すべきだという著者の主張には、頷かざるを得ないなと思います。
教育を受ける期間、その能力を労働という形で発揮する期間、それを経ての引退期間。
年齢によりくっきりと、人生を3つのステージに区切るということが、これからは出来なくなる。
厳しいように感じますが、著者が書いているように、それをチャンスと捉え前向きに対応する、という道もあるのだと受け取りました。
すぐに何かの行動に繋げられるかは自信がありませんが、「考えを改めなければ」と気づかせてもらえた一冊でした。

2017年8月28日

読書状況 読み終わった [2017年8月28日]
カテゴリ 自己啓発

時価総額日本1位、3兆円近い経常利益を計上している巨大企業、トヨタ自動車。
その強さの源としては、トヨタ生産方式(TPS)が挙げられていて、自分自身も関連する書籍をこれまで読んできました。
そのトヨタ自動車の強さを、原価管理の視点で書いた本があると知り、読んでみることにしました。
著者は、トヨタでの勤務を経験した後、TPSやマネージメントの分野で活躍しているコンサルタント。
冒頭でまず、トヨタでの原価管理に対する考え方を解説し、以降の章でその進め方を紹介しています。
その進め方の部分で驚いたのが、原価管理をとても、精緻に行なっていること。
IT化により負担を減らしているとのことですが、この巨大企業の中でよくここまでできるものだなあと、カルチャーショックを受けてしまいました。
自社のコストを精密に把握できれば、他社のコストも分析できる。
部品加工も依頼先の会社に任せっぱなしにせず、その技術・手順を理解した上で、適切な価格で発注する。
トヨタは他社とは違う次元で原価管理を行なっていることを、本書を読んで理解することができました。
おいそれとは真似出来ない内容だと思いますが、原価管理の大切さを実感するとい意味でも、読んだ甲斐があったと感じた、一冊でした。

2017年8月22日

読書状況 読み終わった [2017年8月22日]
カテゴリ 経営工学

人とは違う経験を経て、生きていく上で重要なことに気づく。
その一つの形態として、古来から取り組まれてきたのが、宗教的な「修行」。
宗教分野に造詣の深いジャーナリストが、神道、仏教、キリスト教と幅広い宗教分野の12人の日本人に取材し、「修行」とは何か、宗教的信仰にどのような影響があるのかを解説した一冊です。
標高差1400m、往復14kmの道のりを合計千日間歩くという、大峯回峰行。
修行と聞いてまず連想するそのような荒行から、大きな声を繰り返し発する行、さらには経済的に貧しい人たちが集まる街でミサを行い人々と聖書に向き合う日々を送ることなどなど、さまざまな形態を紹介しています。
紹介されている人たちの共通項として感じたのは、「人生とは何か」「自分はどう生きるべきなのか」というようなことを、真剣に考えているのだなあということ。
その答えを求めている中で、修行の道に入る、そして何かをつかむ。
何がつかめたかについて書かれた部分は、自分の事前知識では読み取るのが難しかったのですが、頭を含めた身体を極限まで使い続けることで、得られる領域があるのだと理解しました。
そして著者は「あとがき」にて、修行の道にあこがれて安易に入り込むことの危険性を、警告しています。
紹介されている人の経歴を見ると、修行を複数回(修行のステップとして必要な場合もあり)繰り返している人もいます。
またひとつの行をやり通しても、得られるものがなかったと正直に告白している人もいるので、誰もが到達できる方法というのは無いのだろうな、と受け取りました。
この分野は科学的な視点からも研究されているようなので、関連する著作があれば、読んでみたいと思います。

2017年8月17日

読書状況 読み終わった [2017年8月17日]
カテゴリ 心理学
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日本での修行に疑問を感じ、単身でフランスで修行することを選択した、若手料理人。
行った先のフランスで、6店舗での仕事を経験することになります。
その修行の様子と、修行を通じて感じたこと。
帰国後、日本でフランス料理店を開き、自らが料理人として、さらに後輩たちに教えながら、お店を運営・経営する立場となって考えていること。
フランス料理の料理人、経営者として長年、研鑽を積み実践してきた経験を、自ら綴った一冊です。
料理人としての成功を望む、多くの志願者(ライバル)。
その中で認められるには、決して「良い人」ではいられない、と繰り返し書かれているのが、印象に残りました。
自分が何をすべきかを考え、その考えに周囲が合わなければ、意見を言う、その結果、衝突する。
その衝突が無ければ、互いに何を考えているのかわからない。
衝突した上で、お互いに何をすべきかを引き出す。
しかし、ただ文句を言っていれば良いというわけでもない。
人を引き上げてくれるのは、人。
その判断基準になるのは、その人が普段、何をしているのかということ。
「事なかれ主義」の日本ではなく、フランスで修行を積んだ著者ならではの、経験に裏付けられた言葉の数々。
背筋をピンと、伸ばしてもらえた一冊でした。

2017年8月7日

読書状況 読み終わった [2017年8月7日]

仕事や旅行で海外に行くと、その国の人々の考えや行動基準が日本人とずいぶん違うことに、驚くことがあります。
そのたびに、自分の常識というものに縛られてはいけないなあと、目を開かせてもらえるような感覚があります。
この本は、フランス・パリで20年間暮らし、仕事をしてきたライター・エッセイストによる一冊。
気持ちの持ち方、お金、恋愛、食事といったカテゴリーに分けて、フランス人と日本人の考え方の違い、行動の違いを、ユーモアを交えて紹介しています。
フランス人に対してなんとなく抱いていたイメージと重なる部分、違う部分があって、興味深く読むことができました。
題名の「お金をかけずに」という部分に強く期待すると、肩透かしされたように感じるかもしれません。
「フランス人と日本人って、こういう部分で違いますよね、日本人もこんな風に考えて暮らしていけば、精神的に豊かになれるのではないでしょうか」という前提で読むと、参考になる部分が多くある一冊だと思います。

2017年8月3日

読書状況 読み終わった [2017年8月3日]
カテゴリ 随筆

山本兼一の長編歴史小説。
舞台は戦国後期の九州北部。
大友氏の武将の娘、立花(戸次)誾千代が、主人公です。
城主の一人娘として生まれた、誾千代姫。
高齢になってからの子供ということもあり、父の道雪は幼い誾千代姫に、城督を譲ってしまいます。
その後も実質的な城の権力者として土地と城を守る父の元で、「城の主」として育った誾千代姫。
しかし年頃となった姫は、婿を迎えることになって・・・というはじまり。
城主のつもりでいたのに、その妻としての役割を求められるようになった、誾千代姫。
そのことに苦悩しながらも自分の役割を理解しようと努め、夫である宗茂と力を合わせて、家を守っていく姿が描かれています。
有力武将同士による激しい争い。
豊臣家による統治と、朝鮮出兵。
九州の武将が西軍と東軍に分かれて戦った、関ヶ原の戦い。
誾千代姫の生涯の中で起こった、これらの出来事を追っていくことで、九州の武将がいかに、激しい境遇の変化に揺さぶられていたかを、理解することが出来ました。
残念ながら亡くなってしまった作家さんですが、読み応えのある作品を残してくれていますね。
まだ読んでいない作品が残っているので、文庫化を楽しみにしていたいと思います。

2017年7月24日

読書状況 読み終わった [2017年7月24日]
カテゴリ 歴史小説
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