ノーベル文学賞候補として毎年話題になり、「国民的作家」として取り上げられることが多い、村上春樹。
自分もその作品の発表を心待ちにしている読者の一人です。
文庫版が続けて発表されたようで、その中からまず、この短編小説を読むことにしました。
著者自身による「まえがき」によると、9年ぶりの短編集とのこと。
6つの短編小説が、納められています。
それぞれの話は独立していて、相互の物語はリンクしてはいません。
でも6つの作品に共通しているのが、主人公が全員、男性であること。
そして時期や相手、また理由はまちまちですが、身近にいた女性を失った経験があるということ。
現在から過去を振り返るような形で、主人公たちが自らの心と対峙していく姿が描かれています。
とはいえ、どれもが似た作品というわけではありません。
作品によっては、どのようなシチュエーションで展開している話なのかわからなかったり、「この後、どうなったんだろう」と疑問を持たせたまま終わるものなど、個性的な作品群となっています。
不思議な感覚を提供しながらも、それぞれの作品にテーマが散りばめられている。
そのテーマについて、読者が考えながら読み進める。
そんな、村上春樹ワールドが展開されています。
今回もその世界にどっぷりはまらせていただきました。
短編も読みたいけれど、新作長編も読みたい。
次回作の発表を、楽しみに待ちたいと思います。

2017年4月18日

読書状況 読み終わった [2017年4月18日]
カテゴリ 小説

魚がとれなくなった、日本人は魚を食べなくなった、漁業をやめる人が多い・・・。
日本の水産資源や漁業については、このような寂しい話題を、耳にする機会が多いなと感じています。
この本はそんな日本の漁業について、どのようなことが起こっているか、なぜ起こっているか、ではどうすれば良いかということを論じた一冊。
前半では各種データを提示して、日本の漁業の危機的な状況を示しています。
そしてその要因として、日本の排他的水域内の漁業が「とりすぎ」であること、その背景として国レベルのルールづくりが遅れていることを、主張しています。
全体を通じて感じたのは、「このままではいけない」ということ。
世界全体の水産資源の消費量が増えたこと、その影響を受けて中国等近隣国の漁船により、水産資源が乱獲されていること。
日本の中ではこのような認識が広まっていますが、輸出入のデータ等を提示して、著者はそのような考えを否定しています。
原因は、日本自身にある。
対策として、他国で成功した事例が挙げられています。
日本にはあてはまらないといった反論があるようですが、著者が提示するデータを見る限りでは、効果的な対策を講じない限り、現在の状況は変わらない、さらに悪化してしまう状況にあるのだと理解しました。
自然を対象にしているので、影響する要因は多くあり、その解釈によりさまざまな意見はあるかと思います。
今後も関連する書籍を複数読んで、この分野についての知識、考えを深めていきたいと思います。

2017年4月12日

読書状況 読み終わった [2017年4月12日]
カテゴリ 国際人

1994年、日本人を含む9人の漁師が、37日間の漂流を経た後にフィリピン沖で保護された・・・。
この本は、生存者の中で唯一の日本人だった船長を追った、ノンフィクション作品です。
約20年後に本人に取材しようとした著者は、その妻に衝撃的な話を聞きます。
それは、船長は10年前に漁に出たまま、行方不明になっている、ということ。
その事実に驚いた著者は、現地に赴き、彼の関係者を訪ね歩いて、1回目の漂流の様子と、2回目の漂流に至った経緯を調べます。
その過程で見えてきたのが、船長が生まれ育った沖縄県宮古島群島伊良部島佐良浜という地域の、特殊な郷土史とそこに暮らす人々について。
海に出れば食料を調達できる、逆に言うと漁師しか生活する術が無い、という環境。
その中でも特に、外部思考の強い佐良浜の漁師たち。
遠くグアムやパラオまで漁をしに行き、大きな富を得る。
でもしばらくすると、その漁が成り立たなくなる。
そんな、繁栄と衰退を繰り返してきた人たちだといことがわかってきます。
主人公である船長の足跡を追うことによって、海洋民としての佐良浜の人たちの気質や、その行動原理への理解が深まっていく、という内容になっています。
継続的に海に行く機会があり、海に関する情報には日常触れているつもりでいましたが、本書の内容にはただただ、驚いてしまいました。
同じ日本という国の中に、このような地域、そしてそこに住む人の人生がある。
「事実は小説よりも奇なり」・・・あらためて感じさせてもらえた、ノンフィクション作品でした。

2017年4月6日

読書状況 読み終わった [2017年4月6日]

自分自身が写真を撮ることもあり、アートに対する興味が年々、高まっています・
美術館巡りをして実際の作品を見ると、しばらく前を動けなくなるような、大きな感動を受けることも多々あります。
しかし逆に、「なぜこの作品が評価されるのだろう?」と、疑問に感じることもしばしばあります。
この本は、2005年に逮捕された、贋作作家による自叙伝。
ピカソ、シャガール、ダリ、マティス、ルノワール、フジタ・・・現在も人気があり、権威ある美術館にその作品が所蔵されている、有名画家たち。
著者は、これらの画家たちの贋作を長年に渡って作成し、売ってきたと言います。
しかもその作品というのは、既存の作品の複製ではなく、その作家”風”の「新作」。
逮捕されたことにより、多くは廃棄されたとのことですが、現在でも彼の作品はオークション等で取引されていると言います。
少年時代には路上生活も経験し、名の通った美術学校に通ったこともない著者が、どのような経緯で贋作作りをするようになったのか。
少年時代から執筆時までの半生を振り返り、「俺」という一人称で描いています。
贋作作りの具体的な手段についてはここでは触れませんが、アートの才能に恵まれた著者が、数少ないチャンスを活かし高度な芸術を身につけるに至った経緯が、本書を通じて理解できました。
残念なのは(そして本人にとっての長年の悩みは)その努力と才能を自らの作品という形で発表し、評価を受けられなかったこと。
芸術作品がどのような経緯を経て作られ、売買されているか。
リトグラフや修復などの話を読むと、「どこまでが本物で、どこからが模倣・贋作なのか」わからないなあと、感じました。
破天荒な人生の描写部分だけでも驚きが多く、アートに興味が無い人にも、読み物として楽しめる一冊だと思います。

2017年3月29日

読書状況 読み終わった [2017年3月29日]
カテゴリ 芸術

『天地明察』『光圀伝』といった話題作を発表し、人気作家となった冲方丁。
自分もこの作家さんの作品をチェックしている、読者のひとりです。
書店巡りをしていたら、この長編作品が文庫化され平積みされていたので、電子書籍版を探して、読んでみることにしました。
本作の主人公は、『枕草子』を書き残した清少納言。
一条帝の妃、定子の女房として仕えた日々を、清少納言が回想する一人称で、書き綴っています。
恥ずかしながら、『枕草子』は現代語訳を読んだことがなく、平安時代に清少納言によって書かれたこと、当時の宮廷での生活について現代で言う随筆風に書かれた作品であること、というレベルの認識しか持ち合わせていませんでした。
なのでどこまでが『枕草子』に書かれていることで、どこからが他の資料を踏まえた本作のオリジナルの部分なのかは、わからないまま読み進めました。
初歩的な部分で驚いたのが、清少納言が活躍していた時代というのが、藤原道長という、この時代に栄華を極めた人物の隆盛期と、重なっているのだということ。
全編を通じて、道長を中心とした権力抗争が描かれているので、この人物がなぜ、どのように、朝廷で重要な地位を得ることが出来たかということを、具体的なイメージを持って理解することが出来ました。
そしてこの小説の題名にもなっている、「はな」。
漢字では「花」、とも「華」とも表されていますが、この概念が小説のテーマとして繰り返し提示されているので、平安王朝という時代の空気や、政治を動かしていた価値観といったものを、感じ取ることができました。
従来の現代語訳を読み込んできた人にとっては、注文をつけたくなる部分はあるのかもしれません。
でも、予備知識のない自分にとっては、この時代の雰囲気を味わう入口として、楽しめる作品でした。

2017年3月27日

読書状況 読み終わった [2017年3月27日]
カテゴリ 歴史小説

とある事情で武士をやめ、商人(損料屋)として生計を立てることになった若侍。
損料屋として商いを展開する一方、「裏の顔」として、武士だったころの上司からの指示、相談に応じて揉め事を解決する。
そんな主人公、喜八郎が活躍する『損料屋喜八郎』シリーズの、第3作です。
今回は、寛政四年(1792年)6月のシーンから、始まります。
寛政元年に発布された、棄捐令。
俸禄米を担保に武士が札差屋に借りていた借金を帳消しにしてしまった、という大掛かりで一方的な、金融政策。
逆に、そんな仕打ちを受けた札差屋たちは武士に金を貸さなくなり、江戸の町の景気はめっきり冷え込んでしまいます。
そんな状態が3年あまり続いた、江戸の町。
景気回復を図ろうと、幕府は新たな金融政策を、計画します。
そして大きな動きがあると起こるのが、この機に乗じて儲けようと企む悪人による、「騙り」。
大規模な騙りと、それを阻止しようとする喜八郎の活躍が、今回の作品の主軸になっています。
シリーズも3作目となり、主人公や主要人物の”掛け合い”も、本作の読みどころになっています。
江戸の市井の人々、そして金融政策という題材でこのような小説が書けるのかと、今回も感心しながら読み進めました。
このシリーズとして発表されているのは、この第3作まで。
でも、まだこの先につながるような終わり方をしているので、シリーズ再開を、楽しみに待ちたいと思います。

2017年3月22日

読書状況 読み終わった [2017年3月22日]
カテゴリ 歴史小説

山本一力『損料屋喜八郎始末控え』シリーズ第2弾。
以前は武家だったものの、訳あってその身分を返上し、商人(損料屋)となった若侍、喜八郎が活躍するシリーズです。
今回も舞台は、18世紀末の江戸。
武士たちが札差(俸禄米の売買と、俸禄米を担保に貸金をする商人)から借りていた借金を帳消しにしてしまった、棄捐令。
前作ではその棄捐令の発布時、およびその直後の混乱が、描かれていました。
今回の作品では、棄捐令が出されてから一年余り、めっきりと景気が冷え込んだ江戸の街から、話が始まります。
そんな不景気なご時世でも、逆に、そのような時だからこそ起こるのが、「騙り」。
金を持っていそうな人にすり寄り、ありもしない儲け話をして金を巻き上げようとする、悪人たち。
そうはさせじと立ち回る、主人公喜八郎一味の活躍が、描かれています。
前作同様、棄捐令発布による江戸の経済情勢が、作品のベースとなっています。
それに加えて、主人公喜八郎の恋愛を大きく取り上げるなど、登場人物たちの生活や心情の描写にも、重点が置かれています。
前作以上に、感情移入して読むことが出来ました。
このシリーズはこの後も続いているようなので、間を空けず、読んでみたいと思います。

2017年3月15日

読書状況 読み終わった [2017年3月15日]
カテゴリ 歴史小説

商社勤務、美術館勤務(キュレーター)という異色の経歴を持つ小説家、原田マハ。
この方が小説に取り上げる題材は自分の好みに合うようで、電子書籍化されている作品を探しては読む、ということをここ数年繰り返しています。
本作は、「スピーチライター」という職業を取り上げた、お仕事小説。
主人公は、お菓子メーカーの総務部に勤める、20代後半の女性。
一般的な生活を送っていた彼女ですが、ある日、出席した結婚式で感動的なスピーチに出会います。
そのスピーチをした女性の職業は、「スピーチライター」。
巡り巡って、主人公自身がスピーチライター”見習い”として、選挙活動に携わることになって・・・という展開。
主人公の女性がスピーチライターとして成長していく姿、そして選挙戦の展開が、物語の大きな流れとなっています。
そして全体を通じて、いかに「言葉の持つ力」が大きいかについて、考えさせられました。
また21世紀の選挙というものがどのような形で行われているかについても、勉強させてもらいました。
ふだん自分が接しない世界に触れられるというのも、小説の大きな魅力の一つですね。
今回も楽しませてもらったので、他の作品も探して、読んでいきたいと思います。

2017年3月6日

読書状況 読み終わった [2017年3月6日]
カテゴリ 小説

年齢を重ねても、「上手く出来るようになった」と思えないことのひとつが、コミュニケーションや人間関係。
周囲の環境が変化することもあり、この分野については意識的に本を読んで、自分の行動を見直すきっかけにしようと思っています。
この本は、アメリカの心理カウンセラーによる一冊。
60年前に発表されて、本国では名著として位置づけられていたようですが、その邦訳が出版されたということで、読んでみることにしました。
冒頭にまず、「幸福な人とは、人間関係の技術にたけた人だ」と定義しています。
以降、具体的なテクニックを紹介しながら、いかに豊かな人間関係を築いていくか、読者に指南しています。
具体的な内容については、これまでに読んできた類書と共通する項目が、いくつか見受けられました。
「それだけ普遍的なことなのだなあ」「出来ていないのであれば自分の行動を見直さなければいけないなあ」と、反省させられました。
たとえば、「言葉を発する前にほほ笑みを浮かべる」など、すぐに実行したいなと思うテクニックもあったので、恥ずかしがらずに、実践していきたいと思います。

2017年2月27日

『あかね空』で直木賞を受賞した作家、山本一力。
これまでこの方の作品を何冊か読み、特に「江戸の市井に生きる人を主人公にした時代小説が、得意な作家さんだなあ」と、感じていました。
その山本一力のデビュー作がKindle化されていると知り、読んでみることにしました。
舞台は寛政年間(18世紀末)の江戸。
以前は武家でしたが、訳あって、その身分を返上し商人(損料屋)として生計を立てている喜八郎が、主人公です。
江戸勤めの武士たちが身分に応じて幕府から受け取る、俸禄(米)。
その俸禄をお金に変える、さらには出費の多い武士たちが俸禄を担保にお金を借りる。
江戸の町でその取引をすることが出来るのが、109店のみの、札差という商人たち。
この仕組みが動き始めて長い年月が経ち、武士たちの借金は増えるいっぽう。
逆に、利息収入を得る札差たちは、周囲が迷惑するほどの、豪勢な暮らしをしています。
武士たちの窮状を見かねた幕府は、札差に対する武士の借金を、帳消しにしてしまいます。
この「棄捐令」に関する騒動の中で、主人公喜八郎が札差そして幕府役人と渡り合い、切り盛りしていく姿が、この小説のテーマとなっています。
先に読んだ作品(発表はこの作品の後)の中にも、棄捐令を扱った作品があったので、この作家さんにとっては重要なテーマなのだなあと、受け取りました。
最初の作品ということで、状況説明等、理解し辛い表現も見受けられました。
しかし、登場人物それぞれの感情表現、そしてラストに向かって盛り上げていく物語の進め方は、さすが後の直木賞作家だな、と感じました。
この主人公については、続編作品が発表されているようなので、続けて読んでいきたいと思います。

2017年2月23日

読書状況 読み終わった [2017年2月23日]
カテゴリ 歴史小説

組織論や日本人の特性に関する文章を読んだ際に、何度か、この『失敗の本質』が引用されていることがありました。
「名著」と呼ばれる本はなるべく読むようにしよう、と思っているので、Kindle版を探して、読んでみることにしました。
本著が企画されたのは、昭和50年代。
防衛大学の関係者が中心となった研究会の活動が、ベースとなっています。
その研究テーマというのが、昭和20年に終戦を迎えた大東亜戦争に「なぜ日本は負けたのか」ということ。
大東亜戦争の前段となった昭和14年のノモンハン事件から、戦争終末期昭和20年の沖縄戦まで。
一連の戦争のターニングポイントとなった6つの作戦(戦闘)を取り上げて、「なぜ負けたのか」を詳細に考察しています。
その上で、6つの事例に共通する問題は何かを抽出し、日本の組織はその教訓から何を学ぶべきかを、提言しています。
多くの論点が盛り込まれていますが、大きなポイントとして印象に残った部分を、自分なりに要約します。

1)戦略が間違っていると、いくら巧みな戦術を計画・運用することができてたとしても、失敗という結果に陥ってしまう。
2)戦略を立てる際に、自らの成功体験に縛られてはいけない。環境の変化によって、過去に成功した戦略が、現在に適合しない場合がある。
3)目的は明確にしなければならない。検討の際には、当面対処すべきことだけでなく、長期的な視点に立ち、どう決着をつけるかまでを考える必要がある。
4)目的や戦略は、その達成に向けて活動する組織内に周知徹底する必要がある。そうしなければ、各部門や各人が個別の判断によって、目的に合致しない行動をとってしまう場合ががある。
5)人がどのように考え行動するかは、各人が受けた教育に大きく影響を受ける。人材の育成はその内容も含めて、国家や企業といった大きな枠組みで慎重にかつ柔軟に計画運用する必要がある。

戦後70年以上が経過しているので、戦争の教訓によって日本の社会、組織が改善された部分もあるかと思います。
しかし現在でもこの本が重要視されているということは、本質的に変わっていない部分が、まだまだあるのだなあと理解しました。
専門家による記述のため、自分には理解しづらい部分もありました。
しかし、戦争初期の戦闘において日米の力量差がそれほど大きくなかった等、大東亜戦争に対する認識を改めてもらえる部分も、多くありました。
日本人の特性や組織の問題に興味がある人は、読んでおくべき一冊だと思います。

2017年2月20日

読書状況 読み終わった [2017年2月20日]
カテゴリ 日本史

「やらなくてはいけない」と思っていることがあっても、別のことを考えてしまう、飛び込んできた情報に反応してしまう。
そんな集中力のない自分に気づき、”改善しなければ”と感じることが、日常生活で多々あります。
その”集中力”について書かれている本があると知って、「自分の悩みを解決するヒントが得られるかもしれない」と期待して、読んでみることにしました。
本書は大きく、7つのパートで構成されています。
人間が何かに注意を向ける、集中するということはどういうことなのかをまず定義し、その要素となる、自己への集中、他者への集中、外界への集中それぞれについて、解説しています。
その上で、どのようなトレーニングにより集中力を高めることができるかを紹介し、最後に、組織を率いるリーダーに求められる集中力を提示しています。
各章の中でまず、関連するエピソードを紹介し、その上で著者の考察を展開していくというパターンで書かれているので、本のずっしりとした外観よりは、取り組みやすい内容になっているかと思います。
自分がいま、集中力を失っているなと感じた時に、本書に書かれているどの状態にあるのかを意識すれば、改善出来るかもしれない、と前向きな気持ちにさせてもらえました。
集中力を高めるトレーニング方法については、もう少し具体的な事例を知りたいなと思いましたが、本書に書かれていることを参考に、自分なりに取り組んでみたいと思います。

2017年2月16日

読書状況 読み終わった [2017年2月16日]
カテゴリ 自己啓発

*単行本のKindle版で読みましたが、現在は文庫版に移行しているため、単行本で登録しました。

『のぼうの城』が話題となり、人気作家の仲間入りをした、和田竜。
その和田竜の本屋大賞受賞作ということで、満を持して、電子書籍版で読むことにしました。
時代は戦国、天正年間。
急速に勢力を拡大した織田信長の陣営が、大阪本願寺の明け渡しを要求。
本願寺側がそれを拒絶したことにより起こった、”石山合戦”が舞台になっています。
織田方の砦に囲まれ、いよいよ窮した、本願寺勢力。
本願寺に籠る5万人もの信徒は、その食糧をどうやって手に入れるのか。
その最後の望みとして頼ったのが、毛利家。
陸上を囲まれた本願寺にとって、補給路として残されたのは、海路のみ。
戦闘が想定される、この海路輸送を実現出来るのか。
その鍵となったのが、当時、瀬戸内海の海上を事実上支配していた、「海賊」村上家。
本願寺は毛利家の協力を得られるのか、毛利家は村上家の協力を得られるのか・・・という始まり。
歴史的に「第一次木津川合戦」と呼ばれている攻防の、前段の駆け引き、そしてその激しい戦闘が、この長編小説の題材となっています。
そして、物語を通じて描かれているのが、戦国時代の人々が「何のために戦っているのか」ということ。
その目的を考えること、その目的を達成するには、いかに残酷なことをしなければならないかということ。
さらには、その目的を達成するだけで良いのか?ということ。
人と戦わなければいけない、ということがどういうことなのか、読者に問いかけるような内容になっています。
とは言え、全編を通じて、エンターテイメント性の高い小説だなあと感じました。
主人公の設定や会話部分の文体、戦闘シーンの描写などは、読者によって好き嫌いがわかれるかと思います。
反面、参考文献の記述を随所に織り込み、史実との適合性にも配慮した書き方になっています。
400年以上前に起こったことを、いかにわかりやすく、かつ読者が興味を持つような形で文章として表すか。
歴史小説はまだまだ発展出来そうだなあと、感じさせてもらえた作品でした。

2017年2月9日

読書状況 読み終わった [2017年2月9日]
カテゴリ 歴史小説

(感想は下巻にまとめて書きます)

*単行本のKindle版で読みましたが、現在は文庫版に移行しているため、単行本で登録しました。

2017年2月7日

読書状況 読み終わった [2017年2月7日]
カテゴリ 歴史小説

最初に読んだ『楽園のカンヴァス』が面白かった、原田マハ。
おりを見て、これまでに発表された小説を読んでいます。
今回はKindle版が発売されている文庫の中から、この作品を選んでみました。
4つの短編が、収められています。
表題となっている作品の主人公は、女性社長。
会社の業績を拡大してきた彼女ですが、苦楽を共にしてきた秘書から突然、「会社を辞める」と言われます。
釈然としない気分の中、時間をやりくりして、その秘書に手配してもらった旅行に出かける主人公。
しかし、沖縄に行くはずだった旅行の行き先がなぜか、北海道の女満別になっていて・・・という始まり。
4作品中の3作品が、女性が一人で旅をする、という設定になっています。
社会的な成功を得ながらも、なぜかモヤモヤした気持ちを抱いて、人生の分岐点とも言える40歳前後を迎えた女性たち。
そんな主人公たちが、日頃の肩書きの通じない旅先で人と出会い、自らを省みる。
その過程が、ユーモアと情感を込めた、この作家さんらしい筆致で、描かれています。
女性の読者を意識して書かれた作品なのかもしれませんが、男性の自分にも十分、楽しめる内容でした。
旅というのも、原田マハ作品の重要なキーワードですね。
今回も楽しく読めたので、これからも作品を探して、読んでいきたいと思います。

2017年1月31日

読書状況 読み終わった [2017年1月31日]
カテゴリ 小説
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最初に読んだ『ジョン・マン』が面白かった、山本一力。
その後、この作家さんの作品を探しては、読むようになりました。
今回は、Kindle化された中からこの長編小説を、読むことにしました。
時代は戦国時代の後半。
争いが続く、土佐の国が舞台となっています。
一地方を治めていた、波川玄蕃が、主人公です。
圧倒的な兵力の長宗我部元親に責め立てられた、玄蕃。
しかし兵の統率力と機転で和睦に持ち込み、元親の配下になります。
さらには元親の妹を、妻に迎えます。
元親の臣下となった玄蕃は、主君の求めに応じて、各地を転戦。
その全てに勝利し、連戦連勝の将となったのですが・・・という展開。
小説全体を通じて、「嫉妬」が、テーマになっています。
自分のために体を張る部下。
しかし相手が信じられない、それ以前に、その名声が疎ましい。
そんな思いを抱く将と、それを受け入れなければならない臣下。
小説ならではの複雑な感情を、味わうことが出来ました。
主人公の波川玄蕃は実在の人物のようです。
残された資料を元に、「実はこのようなことがあったのではないか」と想像する。
そんな、歴史小説の楽しさを味わえた、一冊でした。

2017年1月19日

読書状況 読み終わった [2017年1月19日]
カテゴリ 歴史小説

秘密とされていた情報が公になり、国際的な騒動に発展する。
21世紀に入り、数年に一度くらいの頻度で、そのようなことが起こっているように感じています。
2016年4月に明らかにされた、「パナマ文書」漏洩事件もその一つ。
新聞、テレビなどでも大きく報道されました。
どのような情報が漏れて、その影響がどのように広がっていくか。
さらに詳しく知りたいと思い、関連する書籍の中から、この本を選んで読んでみました。
まず、「パナマ文書とは何か」という解説から始まり、タックスヘイブンがどのような形で活用・悪用されているのか、各国がどのように取り締まりをしているのか、という話に続きます。
さらに、今回のパナマ文書漏洩事件でその取り締まりがどのように進み、国際社会に影響を与えるか、その上で日本としてはどのような動きを取るべきなのか、という話題に展開していきます。
これまで、タックスヘイブンに関係する書籍を読んだことがなかったので、その意味や使われ方を始めて、知ることが出来ました。
個人、法人のお金の流れをいかにして察知するのか、逆に、察知されないようにするのか。
テロリスト、反社会組織の取り締まりというと、警察や軍による調査をイメージしていたのですが、金融の面での取り締まりがかなり、強い効力を発揮してきたということも、理解できました。
事件発覚翌月の発行ということで、憶測で書かれていることや、その後に明らかになった情報が反映されていないという部分はあります。
パナマ文書漏洩事件そのものを詳しく知る、というよりは、タックスヘイブンの役割とその影響を理解する、という本なのだなあと、受け取りました。
世界の動きを、金融の面から理解する。
本書を読んで興味が湧いたので、関連する本を探して、知識を深めていきたいと思います。

2017年1月16日

読書状況 読み終わった [2017年1月16日]
カテゴリ 国際人

山本一力の時代小説。
時代は18世紀の終わり、江戸深川界隈が舞台となっています。
主人公は20代半ばの、寿司職人。
京橋の名店での修行を経て、深川に店を持つことにした主人公。
販売するのは、修行したお店と同じ「杮鮨(こけらずし)」。
開店からまだ間もない時期。
いかにして周囲の人たちにお店と鮨の味を知ってもらい、売上を上げていくか。
そんな思案を重ねるシーンから、物語が始まります。
全体を通じて印象に残ったのが、職人としていかに、美味しい鮨を、値段を抑えて提供するかという、主人公のひたむきな姿勢。
鮨の材料、持ち帰って食べるための食器。
誠実に商売に取り組む主人公と、その主人公に協力する人たちとのやりとりが、情感豊かに描かれています。
そしてもう一つ物語の軸になっているのが、武家と町人との関係について。
借金にあえぐ武士たちを救済するため、幕府が出したのは、「借金帳消し」のお触れ。
武士とは何をする存在なのか?、さらには、「それぞれの役割の中でいかに誠実に生きていくのか」というようなことを、物語の端々で考えさせられました。
江戸時代の市井の人を題材にしながら、その時代の空気を伝え、人間としての生き方を問う。
この作家さんの真骨頂とも言える、作品に出会えました。

2017年1月10日

読書状況 読み終わった [2017年1月10日]
カテゴリ 歴史小説
タグ

『天地明察』で本屋大賞を受賞し、人気作家に仲間入りした小説家、冲方丁。
その後に発表された小説も興味深い内容で、この作家さんの作品の発表・文庫化をチェックするようになりました。
その冲方丁が新書を出版したということで興味があり、電子書籍版で読んでみることにしました。
冒頭で、人間の”経験”を以下の四段階に定義しています。
・第一段階:直接的な経験
・第二段階:間接的な経験
・第三段階:神話的な経験
・第四段階:人工的な経験
これまでの人間社会の発展段階で、上記のどの”経験”が重要視されてきたか、現在はどうなのか。
その理解をするにあたってのキーワードとして、題名にもなっている「偶然」と、必然という言葉が挙げられています。
著者の定義における第三段階、第四段階が具体的にイメージ出来ず、正直、消化不良の部分がありました。
しかし、「世界というものをどのように捉えるのか」「その上で、”幸せを感じる”とはどういうことなのか」といったことを、読者に問いかけているのだろうなと受け取りました。
小説を読み続けていると、物語という存在の役割について考えることがあるのですが、本書を読んで、視点が広がったように思います。
小説家がどのようなことを考え、小説という形にして発表しているのか。
そのプロセスを垣間見させてもらえた、一冊でした。

2017年1月5日

読書状況 読み終わった [2017年1月5日]

高校を卒業するにもかかわらず、進路を決めていなかった男子。
親と教師に強引に、山奥で「林業」の仕事に就職させられてしまう。
そんな若者が林業従事者として奮闘する姿を描いた小説、『神去なあなあ日常』。
ユニークな設定とユーモアあふれる筆致が話題となり、映画化もされました。
その続編が文庫化されていると知って、電子書籍版を探して読んでみることにしました。
20歳になった主人公、勇気が、「誰にも知られずこっそりと」村での生活を記録している、という設定で書かれています。
前作のように大きなイベントが起こるというわけではありません。
村で暮らす日々に起こったことや、居候先のお婆さんに聞いた、村に伝わる神話などを書き連ねていく、という形で進んでいきます。
今回も、軽快に読み進めることができました。
そして林業という、なかなか想像がつかない職業の日常を、垣間見るような感覚を味わえました。
数十年百年単位で、樹木を育てていく林業。
時間が流れるというのはどういうことなのか、神話や物語、さらには八百万の神様といった存在はどのような意味を持つのか、考えさせてもらいました。
続編があるような終わり方だったので、その発表を気を長くして、待ちたいと思います。

2016年12月26日

読書状況 読み終わった [2016年12月26日]
カテゴリ 小説

国家の情報機関。
小説や映画の影響を受けてきたせいか、これまでは「秘密裏に動く謎めいた組織」という漠然とした印象しか、持っていませんでした。
この本は、世界の中でも情報機関のトップと言えるCIA(中央情報局)に30年間勤務し、副長官(長官代行)にまで上り詰めた著者による、回顧録。
CIAという組織がどのような活動を行っているのか?
特にこの著者が重責を担った期間に起きた出来事に興味があり、読んでみることにしました。
著者の職歴を時系列で追う形で、主に以下の出来事について、書かれています。
・2001年9月11日同時多発テロ
・イラク戦争
・ビンラディン襲撃作戦
同時多発テロ発生時、著者は毎朝行われる大統領へのブリーフィング担当として、ブッシュ(ジュニア)大統領とほぼ一日中、行動を共にしています。
そして結果的に大量破壊兵器が見つからなかった、イラク戦争。
10年の歳月をかけたビンラディンの探索の、襲撃計画の立案と実行。
有事発生の前にどのような情報があったのか、そして発生の際に国家の要人、中枢機関がどのように考え、行動に移したのか。
当事者による描写なだけに、今までフィクションの世界でしか触れていなかったこれらのことをリアルに、感じ取ることができました。
またブッシュ、オバマと二代の大統領を支えた著者による「大統領の素顔」についても、興味深く読ませてもらいました(この本を読んで、ブッシュ大統領の印象がだいぶ、変わりました)。
もちろん、著者本人の主観による内容の偏りはあるかと思いますが、読み物として、そして現実に起こった出来事を理解する上で、読み応えのある一冊でした。

2016年12月22日

読書状況 読み終わった [2016年12月22日]
カテゴリ 国際人

いつも、身体のコンディションを良好に保ち、快適に生活したい。
年齢を重ねるにつれて、その思いが強くなってきました。
最近は特に、健康の重要な要素である「食事」に対する興味が高まり、関連する本を読むようにしています。
この本は、多くの企業経営者やセレブレティを対象に、健康の指南を行ってきたという機能性医学ドクターによる一冊。
本書の主張は、現代人の食事に関する以下の2点に集約されるかと思います。
・砂糖(糖質)は控えるべきである
・良質なアブラを積極的に摂るべきである
前半ではいかに現代人が糖質を摂り過ぎているか、その弊害としてどのようなことが起こっているのかを、自らの経験と医学データを織り交ぜて、説明しています。
そして「アブラは悪い」という”常識”から離れて、「良いアブラを選び、積極的に摂取すること」の重要性を解説し、その具体的な方法を指南しています。
自分自身、昼食を摂った後に強い眠気を感じているので、糖質摂取による弊害についてはかなり興味深く読みました。
医学的データの提示よりも、わかりやすさを重視した記述になっているようです。
もう少し説明が欲しいなと感じましたが、危機感を抱き、自分の食事を変えようという気持ちにさせてくれたという意味で、インパクトの強い内容でした。
昼食と夕食の内容について、実際に見直して自分の身体の変化を確かめて見たいと思います。
食事に関しては書籍により主張が異なる部分もあるため、気になったものは意識して読んでいくようにしたいと思います。

2016年12月20日

読書状況 読み終わった [2016年12月20日]
カテゴリ 健康

山本一力の時代小説。
江戸時代の中期、隅田川の東の深川界隈が舞台になっています。
主人公は町の火消しの、「かしら」。
親子二代に渡る、物語です。
火事が多かった、江戸の町。
その町でどのような防火対策が取られ、どのように火消しが組織されていたのか。
火事をおさえるということに関して、武士と町民が、どのような関係にあったのか。
さらには、当時の江戸に住む人たちにとって、「火」とはどんな存在だったのか。
主人公が直面する出来事に喜怒哀楽の感情を揺さぶられながら、さまざまなことを考え、学べた作品でした。
市井に生きる人たちの視点で、歴史を振り返る。
その楽しさを味わわせてもらえた、一冊でした。

2016年12月15日

読書状況 読み終わった [2016年12月15日]
カテゴリ 歴史小説

戦国から江戸の世に渡り活躍した絵師の生涯を追った作品『等伯』。
ライバル絵師と主人公を対比させて描かれる物語の展開が、印象に残りました。
その著者、安部龍太郎の歴史小説を他にも読んでみようと思い、電子書籍化されている中から、この作品を選んでみました。
徳川家康と石田三成が対決した、「天下分け目の戦い」関ヶ原の合戦。
二大勢力が対峙する中で、その争いの長期化、情勢の混乱化を目論み、自らが天下を取ろうとした武将がいた・・・。
この小説は、その武将、黒田如水を題材にした作品です。
関ヶ原の戦いに際して、各武将がどれだけ貢献したのか。
その貢献に応じて、どこにどの武将を配置するか。
その調査の一貫として、「黒田如水がどのような動きをしていたのか」が詮議された、という設定です。
関係者の証言を重ねることで、関ヶ原の戦いにあたり如水がどのように考え、行動したかを、解き明かしていくような内容になっています。
もちろん、当時の記録を踏まえたフィクションだと認識していますが、このような動きがあった(可能性がある)のかと、知的興奮を感じる内容でした。
そして戦国の時代にあって、各武将がどれだけの知恵を絞り、さまざまな手を打っていたのか、その凄まじさも疑似体験できました。
登場人物が多く、またそれぞれの関係も複雑です。
自分自身は読んでいて混乱する部分もありましたが、歴史好きな読者には楽しめる作品ではないかと思います。
他にも魅力的な題材の作品を発表しているようなので、この作家さんの作品は今後もチェックしていきたいと思います。

2016年12月13日

読書状況 読み終わった [2016年12月13日]
カテゴリ 歴史小説

外国に行った際、さらには国際ニュースを聞いた時にも、「自分は世界の歴史というものを知らないなあ」と、痛感してしまうことがあります。
世界史の流れというものを知って、少しでも理解を深めたいと思い、関連する書籍を意識して読むようにしています。
この本は、テレビ局で長年に渡りバラエティー番組の制作に携わってきたという、プロデューサーによる一冊。
文明、宗教、国家体制、産業などなど、24の視点で、世界史の流れを説明しています。
特に印象に残ったのは、文明のはじまりについてと、一神教と多神教についての著者の視点。
そして国家体制についての説明も、今までモヤモヤしていた頭の中を、整理してもらえたように感じました。
年表を追って説明されるよりも、テーマに沿って歴史を捉えるという形のほうが、自分には合っているようです。
これまで読んできた本と重なる部分はありましたが、テーマが多岐に渡ることもあって、歴史に興味のある人には、何かしらの引っ掛かりのある一冊だと思います。

2016年12月8日

読書状況 読み終わった [2016年12月8日]
カテゴリ 世界史
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