美術を題材にした小説、そしてあることに一途に取り組む女性を主人公にした小説など、作品を次々と発表している原田マハ。
自分もその作品の発表を楽しみにしている、読者の一人です。
書店巡りをしていたら、文庫化された作品が平積みされていたので、電子書籍版を探して読んでみることにしました。
先に読んだ『本日は、お日柄もよく』で、政治家や選挙の世界に切り込んだ作者ですが、今回はその頂点に立つ総理大臣を題材として取り上げています。
「総理の夫」が一人称で書き記した日記、というユニークな体裁で書かれています。
日本で初めて、女性として、しかも最年少で総理大臣になった妻。
国会議員の数が少ない野党の党首だった妻が、いかにして総理というポストについたのか。
与党/野党の入れ替わり、野党連合の中での駆け引きといった大きなうねりのなかで、総理として職務を務めるとはどういうことなのか。
二人の出会いの話など、この作家さんらしいリラックスして読めるエピソードを織り交ぜながら、全体として楽しく、前向きな気持ちにさせてくれるタッチで描かれています。
創作の部分がかなりあるとは思いますが、熟練政治家との駆け引きや首相公邸での日常生活の描写など、取材を重ねたのだろうなと感じました。
文庫版解説は現職総理大臣の妻が書いているということで、こちらも興味深く読ませてもらいました。
ペースよく作品を発表している作家さんなので、次の作品の文庫化も楽しみにしたいと思います。

2017年10月19日

読書状況 読み終わった [2017年10月19日]
カテゴリ 小説

戦前から戦後にかけて無敵を誇った柔道家、木村政彦。
その生涯を追ったノンフィクション『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』。
木村の練習の凄まじさ、柔道家としての強さの描写とともに、戦前戦後の日本の格闘技界の流れ、さらには朝鮮半島やブラジルとの関係も盛り込んだ、重厚なノンフィクション作品だなあと、強く印象に残りました。
その著者である増田俊也が、自らが北海道大学柔道部で経験した青年時代を小説化した作品を発表していると知り、文庫化を待って電子書籍版で読みました。
主人公は、増田俊也。
柔道部に入りたいがため、二浪して北大に入学した増田青年の、”一年目”の春。
一年先に入学していた、高校時代の柔道部の同級生と会う、増田青年。
旧交を温めながらも、その同級生が発したのは、「練習がきつ過ぎて、柔道部を辞めた」という告白。
覚悟を決めながら道場に入ると、そこには部員の汗がたちこめ、部員のうめき声が聞こえる光景が待っていた・・・という始まり。
北大柔道部の部員の目標は、北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の柔道部で争われる「七帝戦」で勝つこと。
そしてその七帝戦というのは、一本のみでの決着、待ったなし、場外もなしという、講道館ルールとは全く異なる柔道。
「練習量が強さを決める」という七帝柔道で強くなるために、必死で練習を積み重ねる、増田青年の日々が描かれています。
絞め技に”参った”をしても手を緩めない、練習の厳しさ。
新聞にも載らないような”ローカルな大会”、七帝戦で勝つという目標。
青春を謳歌する、大学の同級生。
悩みや疑問を抱きながら練習を続ける、増田青年の姿を読み進めていくうちに、「人間は何のために生きているのだろう」と、考えてさせてもらいました。
ただ苦しいだけでなく、”練習以外では”優しい柔道部の先輩たちとの交流もコミカルに描かれているので、青春小説として楽しめる内容にもなっています。
「ここで終わってしまうの?」というラストだったのですが、どうやら、続編があるようですね。
続きが気になるので、文庫化されるのを楽しみに待ちたいと思います。

2017年10月17日

読書状況 読み終わった [2017年10月17日]
カテゴリ 小説

社会が大きく変化していることを、実感しています。
具体的にどのような価値観や行動原理が求められるのか?自分自身どのような備えをすべきなのか?不透明さや不安を感じています。
そのため、未来予測に関する書籍を、意識して読むようにしています。
この本の著者は、過去に未来予測の分野で複数の話題書を発表してきたという、フランスの知識人。
過去に大統領の顧問をつとめた経験もあり、「ヨーロッパ最高の知性」と称されているそうです。
そんな著者が、これまで発表してきた未来予測をどのように行ってきたか、そのベースとなる考え、方法を開示した一冊です。
前半は、これまで人類がどのように未来予測をしてきたのかを、幅広い視点で総括しています。
その上で、21世紀の現在、どのような形で未来予測ができるのか、その予測対象をどのように捉えるのかについて、著者の考えを提示しています。
後半部分について、以下に自分なりの要約を記述します。
・コンピュータおよびデータ収集/分析技術の発達により、データをバックグランドにした未来予測がされるようになる
・これまでは原因と結果、という視点で捉えられていたが、今後はデータと事象の相関関係に、焦点が当てられるようになる
・社会の権力は、有効なデータを収集し活用する組織が、握るようになる
・個人や個人が属する組織の未来は、従来に比べてかなり多くの部分で、予測できるようになる
・そのため、運命論的に生涯を送っているような感覚に、陥る危険性がある
・大切なのは、未来予測を踏まえて、どのような未来を作り上げていくかという意思と、その実践である

個別の内容では、健康や金融の面でどのようなデータが集められ予測が立てられているのか、といったあたりが気になりました。
そして全体としては、 どのような未来を送りたいのか?自分自身で整理しなければいけないなと、感じました。
終盤にその具体的な方法が書かれているので、大変そうではありますが、実践していきたいと思います。

2017年10月11日

読書状況 読み終わった [2017年10月11日]
カテゴリ 自己啓発

『あかね空』で直木賞を受賞した山本一力。
江戸の市井に暮らす人々を描く、この作家さんの作品に魅かれ、折に触れて読んでいます。
まだ読んでいない長編作品が電子書籍化されていないかと探していたところ、この作品に出会うことができました。
舞台は18世紀後半の江戸。
通い大工の父親と、石工職人の家の出の母親。
その長女として生まれた、「つばき」が主人公です。
腕は良いながらも酒癖が悪く、賭場で借金を作ってしまった父親。
借金の取り立てをされて、ぎりぎりの生活をする、つばきの一家。
前半は、そんな状況の中で一家がどのように暮らしていくのかが、描かれています。
お金に困る家庭で育っていくつばきですが、あるきっかけにより、「ご飯を炊く」という能力に優れていることを、自分も周囲も知ることになります。
その能力を基礎に、お客に食事を提供するお店を営み、繁盛させていくというのが、物語の大きな流れになっています。
主人公も含め、良い面もあるが、欠点もある、江戸の市井の人々。
そんな登場人物たちの姿と交流を描くことにより、「人情の機微」のようなものを、受け取ることができました。
そして例えば、この時代の町の人たちがどのように物を買い、支払いをしていたのかなど、当時の暮らしぶりを体感しているような気持ちにもさせていただきました。
文庫では600ページをこえる長編ですが、ダレることなく読み進めることができました。
この作家さんの小説世界には、すっかりハマってしまったようです。
今後も作品を探して、読んでいくことにします。

2017年10月8日

読書状況 読み終わった [2017年10月8日]
カテゴリ 歴史小説

大企業の不祥事が相次ぎ、どのような企業に勤めていても先行きが見えない、21世紀。
そんな中で、企業グループとして長期間、大きな存在であり続けるのが、「三大財閥」と呼ばれる、三菱・三井・住友のグループ企業群。
この本はその三大財閥について解説した一冊です。
第1章の導入を経て、第2章ではそれぞれのグループがどのような企業で構成されているかを解説し、以降は、世界市場への進出度、各財閥の発展の基となったキーパーソンの紹介、そして、最新の動向と未来展望という内容に展開していきます。
読んでまず驚いたのは、各グループに分類される企業の多さとその大きさ。
三大財閥合わせると日本のGDPの4分の1を占める、ということで、その影響力の強さを改めて認識しました。
またその大きさという理由も含め、戦後の財閥解体の動きの中で、この三大財閥が生き残った経緯も、理解することができました。
現在は相互のグループ企業が提携している業種もあり、全体的にゆるやかなつながりになりつつあるようですが、今後も日本経済の中で大きな存在であり続けるのだろうなあと、感じました。

2017年9月28日

読書状況 読み終わった [2017年9月28日]
カテゴリ 企業研究

『トム・ソーヤーの冒険』などの作品で知られるアメリカの作家、マーク・トウェイン。
少年時代にこの方の小説世界に触れて、ミシシッピー川という川の名前を知った、という記憶があります。
そのマーク・トウェインが、『人間とは何か』という題名で、人間の本質について書いた文章を残していると知り、書店で探して読んでみることにしました。
老人と青年が対話する形で、書かれています。
その老人が教え諭す話というのが、人間とはどのような存在なのか、ということ。
自分なりの理解を、以下に要約します。
・人間は自分自身の安心感を求めて行動する
・人間の考え、行動は、それまでに得た情報、経験により左右される
・上記のような理由で、人間は他の動物たちと比べて大きな差はない
そのような老人の主張に対して若者が反論しますが、老人によりことごとく論破されてしまう、という内容になっています。
訳者による”あとがき”によると、本書はマーク・トウェインが60歳前後に書かれたようです。
人生の終盤をむかえ悲しい出来事が続いたことにより、悲観的な人生観を持つようになった、という背景があるとのこと。
ただこの作品で書かれていることは、人間の本質を理解する上で、重要な視点だなあと、感じました。
このような考え方があると知っていることによって、逆に、他人の行動、振る舞いに対する怒りを抑えられるかもしれないなと、感じました。
著者のイメージが変わるという意味で刺激は強い作品ですが、人間とは何か、自分はどのような行動原理で生きているか、考えさせてもらえた一冊でした。

2017年9月26日

読書状況 読み終わった [2017年9月26日]
カテゴリ 自己啓発

ネガティブなことを考えたり、言ったりしてしまう。
自分が前進できていないような気がする、前向きな気持ちになれなくなる。
そのような自分に気づいた時は、意識して自己啓発本を読むようにしています。
この本は、「旅に関する文章を書く」という仕事からスタートして、依頼された仕事を引き受けているうちに、年間300件以上の講演会を行なっていたという著者(故人)による一冊。
”人に喜ばれる存在になる”という人生の目的に向かって歩いてきた著者が、「感謝をする」ということの大切さを説いています。
人間関係、お金、子育てなど、日常生活における大切な事柄ごととに、章が分けられています。
基礎となる考え方が、著者が経験した事例とともに、読者に語りかけるような文章で綴られています。
これまでに読んできた自己啓発書の中にも、感謝することの大切さについて、触れられているものがありました。
しかし自分自身、「なかなか身につかないなあと」と焦れる部分がありました。
本書には、感謝の言葉を発することそのものが大切なことなのだと書かれているので、ずいぶんとハードルを下げてもらえた気がします。
日本では一番多いとされる、念仏をとなえる仏教と、相通ずる考えかたなのかなと、受け取りました。
なにごとも、まずは実践することが大切。
心の中で、そして声に出して、感謝することを意識していきたいと思います。

2017年9月19日

読書状況 読み終わった [2017年9月19日]

外国や日本国内の地方に出かけた時に、その土地のことについて「もっと知っておくべきだなあ」と感じることが、多々あります。
なので気になる地域の歴史や、世界史全体を俯瞰して書かれているような書籍については、意識して読むようにしています。
しかし、これまでおろそかになっていたなと気づいたのが、「地理」について。
東大入試問題を題材に、世界と日本の情勢を解説している本があると知って、読んでみることにしました。
まず冒頭で、人・モノ・カネ・情報という切り口で、現在の世界がどのように動いているのかを解説し、以降は中国・米国・EUといった大きなくくりで、各地域の特徴や現在の状況を説明しています。
読了後、自分自身の地理に関する知識は、学生時代のままで止まっていたなのだなあと、反省してしまいました。
「世界はずいぶんと変わっているのだなあ」というのが、正直な感想です。
また地域によって、自分が把握している情報の量・密度に差があるということも、認識することができました。
特にアフリカに関しては、本書から新たに得られた視点が複数、ありました。
自分にとって、地理という分野について知的興味を刺激してもらえた、一冊でした。
地理については、今後も関連する書籍を探して読んでいきたいと思います。

2017年8月31日

読書状況 読み終わった [2017年8月31日]
カテゴリ 国際人
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社会が変化しているのは実感するが、どのような方向に行くのか見通せない、自分はどう対処すべきなのかがわからない。
そのような“焦り”を鎮める意味でも、ヒントになりそうな書籍を読むようにしています。
この本も、日本語に翻訳されて話題となっていると知り、読んでみることにしました。
冒頭でまず、「いま先進国で生まれている子供の半数以上は、105歳以上生きる」という驚きの統計的推計値が示されます。
その上で、その「長い生涯」を生きていくには、これまでのロールモデルではない、新しい人生設計に見直す必要があると、説いています。
そして、お金、働き方、人間関係といったさまざまな切り口で、年代別のモデルを示しながら、新しい時代に合った、人生設計を提示しています。
寿命予測については複数の説があるようですが、今以上に長い生涯になるということと、それに対応した人生設計に見直すべきだという著者の主張には、頷かざるを得ないなと思います。
教育を受ける期間、その能力を労働という形で発揮する期間、それを経ての引退期間。
年齢によりくっきりと、人生を3つのステージに区切るということが、これからは出来なくなる。
厳しいように感じますが、著者が書いているように、それをチャンスと捉え前向きに対応する、という道もあるのだと受け取りました。
すぐに何かの行動に繋げられるかは自信がありませんが、「考えを改めなければ」と気づかせてもらえた一冊でした。

2017年8月28日

読書状況 読み終わった [2017年8月28日]
カテゴリ 自己啓発

時価総額日本1位、3兆円近い経常利益を計上している巨大企業、トヨタ自動車。
その強さの源としては、トヨタ生産方式(TPS)が挙げられていて、自分自身も関連する書籍をこれまで読んできました。
そのトヨタ自動車の強さを、原価管理の視点で書いた本があると知り、読んでみることにしました。
著者は、トヨタでの勤務を経験した後、TPSやマネージメントの分野で活躍しているコンサルタント。
冒頭でまず、トヨタでの原価管理に対する考え方を解説し、以降の章でその進め方を紹介しています。
その進め方の部分で驚いたのが、原価管理をとても、精緻に行なっていること。
IT化により負担を減らしているとのことですが、この巨大企業の中でよくここまでできるものだなあと、カルチャーショックを受けてしまいました。
自社のコストを精密に把握できれば、他社のコストも分析できる。
部品加工も依頼先の会社に任せっぱなしにせず、その技術・手順を理解した上で、適切な価格で発注する。
トヨタは他社とは違う次元で原価管理を行なっていることを、本書を読んで理解することができました。
おいそれとは真似出来ない内容だと思いますが、原価管理の大切さを実感するとい意味でも、読んだ甲斐があったと感じた、一冊でした。

2017年8月22日

読書状況 読み終わった [2017年8月22日]
カテゴリ 経営工学

人とは違う経験を経て、生きていく上で重要なことに気づく。
その一つの形態として、古来から取り組まれてきたのが、宗教的な「修行」。
宗教分野に造詣の深いジャーナリストが、神道、仏教、キリスト教と幅広い宗教分野の12人の日本人に取材し、「修行」とは何か、宗教的信仰にどのような影響があるのかを解説した一冊です。
標高差1400m、往復14kmの道のりを合計千日間歩くという、大峯回峰行。
修行と聞いてまず連想するそのような荒行から、大きな声を繰り返し発する行、さらには経済的に貧しい人たちが集まる街でミサを行い人々と聖書に向き合う日々を送ることなどなど、さまざまな形態を紹介しています。
紹介されている人たちの共通項として感じたのは、「人生とは何か」「自分はどう生きるべきなのか」というようなことを、真剣に考えているのだなあということ。
その答えを求めている中で、修行の道に入る、そして何かをつかむ。
何がつかめたかについて書かれた部分は、自分の事前知識では読み取るのが難しかったのですが、頭を含めた身体を極限まで使い続けることで、得られる領域があるのだと理解しました。
そして著者は「あとがき」にて、修行の道にあこがれて安易に入り込むことの危険性を、警告しています。
紹介されている人の経歴を見ると、修行を複数回(修行のステップとして必要な場合もあり)繰り返している人もいます。
またひとつの行をやり通しても、得られるものがなかったと正直に告白している人もいるので、誰もが到達できる方法というのは無いのだろうな、と受け取りました。
この分野は科学的な視点からも研究されているようなので、関連する著作があれば、読んでみたいと思います。

2017年8月17日

読書状況 読み終わった [2017年8月17日]
カテゴリ 心理学
タグ

日本での修行に疑問を感じ、単身でフランスで修行することを選択した、若手料理人。
行った先のフランスで、6店舗での仕事を経験することになります。
その修行の様子と、修行を通じて感じたこと。
帰国後、日本でフランス料理店を開き、自らが料理人として、さらに後輩たちに教えながら、お店を運営・経営する立場となって考えていること。
フランス料理の料理人、経営者として長年、研鑽を積み実践してきた経験を、自ら綴った一冊です。
料理人としての成功を望む、多くの志願者(ライバル)。
その中で認められるには、決して「良い人」ではいられない、と繰り返し書かれているのが、印象に残りました。
自分が何をすべきかを考え、その考えに周囲が合わなければ、意見を言う、その結果、衝突する。
その衝突が無ければ、互いに何を考えているのかわからない。
衝突した上で、お互いに何をすべきかを引き出す。
しかし、ただ文句を言っていれば良いというわけでもない。
人を引き上げてくれるのは、人。
その判断基準になるのは、その人が普段、何をしているのかということ。
「事なかれ主義」の日本ではなく、フランスで修行を積んだ著者ならではの、経験に裏付けられた言葉の数々。
背筋をピンと、伸ばしてもらえた一冊でした。

2017年8月7日

読書状況 読み終わった [2017年8月7日]

仕事や旅行で海外に行くと、その国の人々の考えや行動基準が日本人とずいぶん違うことに、驚くことがあります。
そのたびに、自分の常識というものに縛られてはいけないなあと、目を開かせてもらえるような感覚があります。
この本は、フランス・パリで20年間暮らし、仕事をしてきたライター・エッセイストによる一冊。
気持ちの持ち方、お金、恋愛、食事といったカテゴリーに分けて、フランス人と日本人の考え方の違い、行動の違いを、ユーモアを交えて紹介しています。
フランス人に対してなんとなく抱いていたイメージと重なる部分、違う部分があって、興味深く読むことができました。
題名の「お金をかけずに」という部分に強く期待すると、肩透かしされたように感じるかもしれません。
「フランス人と日本人って、こういう部分で違いますよね、日本人もこんな風に考えて暮らしていけば、精神的に豊かになれるのではないでしょうか」という前提で読むと、参考になる部分が多くある一冊だと思います。

2017年8月3日

読書状況 読み終わった [2017年8月3日]
カテゴリ 随筆

山本兼一の長編歴史小説。
舞台は戦国後期の九州北部。
大友氏の武将の娘、立花(戸次)誾千代が、主人公です。
城主の一人娘として生まれた、誾千代姫。
高齢になってからの子供ということもあり、父の道雪は幼い誾千代姫に、城督を譲ってしまいます。
その後も実質的な城の権力者として土地と城を守る父の元で、「城の主」として育った誾千代姫。
しかし年頃となった姫は、婿を迎えることになって・・・というはじまり。
城主のつもりでいたのに、その妻としての役割を求められるようになった、誾千代姫。
そのことに苦悩しながらも自分の役割を理解しようと努め、夫である宗茂と力を合わせて、家を守っていく姿が描かれています。
有力武将同士による激しい争い。
豊臣家による統治と、朝鮮出兵。
九州の武将が西軍と東軍に分かれて戦った、関ヶ原の戦い。
誾千代姫の生涯の中で起こった、これらの出来事を追っていくことで、九州の武将がいかに、激しい境遇の変化に揺さぶられていたかを、理解することが出来ました。
残念ながら亡くなってしまった作家さんですが、読み応えのある作品を残してくれていますね。
まだ読んでいない作品が残っているので、文庫化を楽しみにしていたいと思います。

2017年7月24日

読書状況 読み終わった [2017年7月24日]
カテゴリ 歴史小説

食事や運動とならんで、健康の重要な要素である、睡眠。
自分自身の睡眠の質は高くないのではないか?と感じることもあり、関連する書籍が話題になると読むようにしています。
この本は、医師として忙しい日々を過ごしながらビジネススクールに通い、現在は医師と経営者の”二足の草鞋”で活躍している著者による一冊。
従来の睡眠関連本に書かれている「理想の睡眠」実現方法は、忙しいビジネスマンにとっては実施困難な内容が多いとし、ビジネスマンが取り入れるべき、睡眠向上に向けた生活習慣を説いています。
取り入れるべき生活習慣として挙げられている内容については、これまで読んできた関連本と共通する部分が多いなと感じました。
逆にいうとそれだけ、守るべき大事なこと、なのですね。
そして本書に書かれている以下の項目については、自分の新たな気づきとして、今後取り組んでいきたいと思います。
・就寝時間(時刻)を「1日のスタート」として認識すること
・日々の睡眠を記録しそれを分析することで、自らの睡眠と生活習慣を見直すこと
自分が興味を持っているせいかもしれませんが、睡眠に関する本は最近、多く出版されているようですね。
今後もこの分野については継続して、書籍をチェックしていきたいと思います。

2017年7月20日

読書状況 読み終わった [2017年7月20日]
カテゴリ 健康

江戸時代を舞台に、妖(あやかし)たちが活躍するファンタジー小説、『しゃばけ』シリーズ。
数々登場する妖の中で、ひとつのカテゴリーになっているのが、付喪神(つくもがみ)。
器物が大切に扱われ、百年が経つとその身が妖となり、話をするようになる。
そんな付喪神を主人公にして書かれたのが前作、『つくもがみ貸します』。
その続編の文庫版が6年ぶりに出版されていたと知って、読んでみることにしました。
舞台は今回も、江戸深川にある古道具屋兼損料屋、出雲屋。
前作では、わけあって姉と弟という間柄だった、ふたりの主人公。
そのご夫婦となり、今では11歳になる男の子の親となっています。
今回の作品では、その子供と幼馴染の3人が、中心となった物語。
出雲屋にあらたに、双六(すごろく)の付喪神が来たところから、話が始まります。
付喪神と、双六の勝負をすることになった子供たち。
その勝負を発端に起こる騒動と、それに対峙する子供たちと付喪神の姿が、5つの連作短編集の形で収められています。
物語の軸になっているのは、新たに登場した”大金持ちの札差”の、跡取り騒動。
その騒動を通じて、この時代の親と子の関係、家族の絆といったことを、読者が理解できるような内容になっています。
子供が主人公ということで、前作とは雰囲気もずいぶんと変わり、やわらかいタッチで描かれています。
前作からいっきに10年以上が経過しているというのも、妖が主人公、という設定ならではですね。
第3弾はまた期間をあけて発表されるのか、どのような舞台設定になるのか。
その発表を、気長に待ちたいと思います。

2017年7月18日

読書状況 読み終わった [2017年7月18日]
カテゴリ 歴史小説

趣味で美術鑑賞をするようになったのですが、当初は正直、美術品を見ても「理解出来ない」と思うことが数多くありました。
今はあまり深く考えずに、「とにかく(数多く)見ること」と言い聞かせて、自分なりの観点で美術鑑賞をしています。
そんなスタンスで良いのか、心に引っかかりを持っていたのですが、”名画と観察力”というキーワードが題名になっている本があると知り、読んでみることにしました。
著者は、大学時代は美術史を専攻し、キャリアのスタートは弁護士だったという、アメリカ人女性。
転職を契機に、「アートの分析を応用することで、医師の診断力を向上することが出来る」ということに気づきます。
そのセミナー「知覚の技法」は口コミで広まり、警察やFBIで、その効果が確認されているとのこと。
本書は、実際の絵画を題材にして、読者がその技法を体験出来るような内容になっています。
まず第一部で、漠然と見ていることと観察することの違いを説明しています。
第二部ではそこから得られた情報をどのように分析するか、第三部ではその結果をどのように相手に伝えるかということに展開していき、第四部でそれらを実際にどのように使うかという形でまとめています。
題名の名画読解という言葉に着目した読者には、意外な展開に感じるかもしれません。
セミナー名「知覚の技能」という題名が、しっくりくる内容だと感じました。
特に印象に残ったのは、第一部の「観察」について。
毎日、目をあけて何かを見ているはずの自分が、いかに「観察」というレベルで目と脳を使っていないか、自覚させられました。
自分がどのような情報を得ているのか、その(限られた)情報の中でどう判断し行動するのか。
取得したと思っている情報は事実なのか、自分のこれまでの経験等によってバイアスがかかっていないか、得られた情報と自分の感情・思いとを区別して伝えているか。
情報を取得し分析をする、それを相手に伝える。
そういった”当たり前”に行なっていること、出来ていると思っていることが、実際には出来ていなかった。
そのことに気づかせてもらえました。
あわせて、名画を見る楽しみも増やしてもらえたという、自分にとっては一石二鳥の内容でした。
絵画に興味のある人はもちろん、とっさのハプニングに上手く対応できなかった経験のある人には、読んで損はない一冊だと思います。

2017年7月12日

読書状況 読み終わった [2017年7月12日]
カテゴリ 芸術

「江戸を舞台にしたファンタジー小説」という新しいジャンルを提示してくれた、畠中恵。
その『しゃばけ』シリーズ、第13弾の文庫版です。
年一作品のペースで発表、文庫化されているので、ここ何年かは、このシリーズを読むことが自分自身の年中行事のようになっています。
江戸の通町にある廻船問屋兼薬種問屋の大店、長崎屋。
その一人息子である「若だんな」が、今回も主人公です。
病弱ですぐに寝込んでしまう。
そんな体質なので、両親も「無理をしないように」と甘やかし、二人の男を世話係の”兄や”として、面倒を見させている。
しかし実は、若だんなの祖母はその世界では広く知られた、妖(あやかし)界の大物。
兄やたちも、力の強い妖。
そのせいもあってか、さまざまな妖たちが若だんなのまわりに集まっている・・・という設定。
そんな若だんなの近辺で起こる騒動と、その騒動に若だんなたちがどのように対処していくかが、4つの連作短編の形で、描かれています。
全体を通じてのテーマは、「変化」。
4作品それぞれの題名には、明日、来年など、時に関する言葉がつけられています。
両親や兄やたちに守られて、妖たちと仲良く暮らしたい。
そのような日々を願う若だんなですが、幼なじみの縁談話、さらには自分自身への縁談申込殺到と、「変わらなければいけない」状況が次々とやってきます。
それらに悩み、対処していく若だんなの姿を読むにつれて、読者も「変わらなければならないのだ」と考えるような内容になっています。
パターンを守りながらも、変化をつける。
このシリーズが長く、そして多くの読者に応援されている理由のひとつになっているのかなと、感じました。
今回の内容を受けてどのように今後、展開していくのか。
次の作品の文庫化を、楽しみに待ちたいと思います。

2017年7月10日

読書状況 読み終わった [2017年7月10日]
カテゴリ 歴史小説

『楽園のカンヴァス』『ジヴェルニーの食卓』など、絵画や画家を題材にした小説が印象的な、原田マハ。
その作品の中に、音楽を題材にしたものがあると知って、電子書籍版を探して読んでみることにしました。
主人公は女子高校生。
父親は国際的に有名な指揮者で、母親もチェロ演奏者という、音楽家の家庭に育った主人公。
しかし両親が離婚してしまい、今は父親と二人で暮らし、家政婦がローテーションを組んで家事をしてくれている、という生活を送っています。
そんな彼女がある日、帰宅すると、自宅には見知らぬ女性が。
不審に思う彼女に向かってその女性が口にしたのは、今日から私があなたの母親である、ということ・・・。
子供の頃、母親に厳しくチェロを教え込まれ、でもそれが重荷となりやめてしまった主人公。
そんな主人公が、新たな”継母”の登場や旧友たちの励ましを通じて、音楽の素晴らしさに目覚めていく、というストーリーになっています。
突然現れた継母、そして難病など、漫画的とも言える設定が重なるので、興ざめを感じる読者もいるかもしれません。
しかし、楽器を弾くこと、そしてその喜びを分かち合うことの楽しさを、味わわせてもらえる作品だと思います。
現実の演奏家たちの名前が数多く引用されているので、「どんな演奏なのだろう」と興味が湧き、動画サイトでチェックしてみました。
精力的に作品を発表している作家さんですね。
他にも読んでいない作品がないか調べて、とり組んでみることにします。

2017年7月5日

読書状況 読み終わった [2017年7月5日]
カテゴリ 小説

京都を舞台に、独特の世界を描いた小説を発表している、森見登美彦。
先に読んだ『聖なる怠け者の冒険』の舞台になっていたのが、京都祇園祭宵山。
同じく、その宵山を題材にした作品があると知って、読んでみることにしました。
6つの短編からなる、連絡短編集です。
作品に共通しているのが、宵山当日(もしくはその日に向けた日々)を、題材にしていること。
しかしその内容は、異界に取り込まれてしまいそうな怖い話から、宵山を舞台に繰り広げる壮大ないたずらまで、色合いが異なる作品が並べられています。
それぞれの短編の中で登場人物がリンクしているので、「同じ世界を描いているのだな」と気付かされます。
「あとがき」にあるように、お祭り、特に祇園祭宵山の持つ、”怖ろしさ”と”楽しさ”双方の感覚を、表現した作品なのだなあと、受け取りました。
『聖なる』とは違い、格式の高い?文体が用いられています。
京都という限られた題材を扱いながらも、ひきだしの多い作家さんなのだなあと、感じました。
今回も森見ワールドに浸れたので、今後もまだ読んでいない作品を探して、取り組んでいきたいと思います。

2017年6月26日

読書状況 読み終わった [2017年6月26日]
カテゴリ 小説

『楽園のカンヴァス』『ジヴェルニーの食卓』など、絵画や画家を題材にした小説を発表している、原田マハ。
僕もこれらの作品を読んで、美術に対する興味を深めさせてもらいました。
その原田マハが美術鑑賞についての新書を発表したと知って、電子書籍版で読んでみることにしました。
題名の通り、「印象派」の象徴的な存在で、著者自身も大きく影響を受けたという、クロード・モネが主題になっています。
モネとはどのような画家だったのか、印象派と言われる絵画はどのような特徴があるのか。
印象派の絵画がどのような点で、それまでの絵画と違っていたのか、本書を読んで頭を整理することができました
また日本や日本人との関係についても、ページを割いて書かれています。
これまで日本各地の美術館を見て回っていて、「なんでこんなにモネの絵があるのだろう」と不思議に思っていたのですが、本書を読んでようやく、納得することが出来ました。
専門的な知識を持った人には、既知の内容が多いのかもしれませんが、僕のような美術鑑賞初心者にとっては、気づかせてもらえる部分の多い一冊でした。
個人的には、このような形でアンリ・ルソーに関する本も発表してもらえれば、と願っています。

2017年6月22日

読書状況 読み終わった [2017年6月22日]
カテゴリ 芸術

画家アンリ・ルソーを題材にした小説『楽園のカンヴァス』が面白かった、原田マハ。
自らの経験を活かした美術関連の小説、そしてそれ以外の分野の小説も、これまで楽しく読ませてもらいました。
その原田マハの、沖縄そして美術を題材にした小説が文庫化されていると知って、電子書籍版で読んでみることにしました。
小説の舞台は1948年、戦闘で壊滅的なダメージを受けた後の沖縄です。
戦勝国となり、沖縄を統治することになったアメリカ軍。
その軍医として沖縄に赴任することになった、医科大学を卒業して間もない若い精神科医が、この小説の主人公です。
休日に、本国から送ってもらった車で、沖縄の土地を走る主人公。
その途中で「NISHIMUI ART VILLAGE」という看板を見かけます。
興味を持った主人公は、その村に入り、地元の人と交流します。
するとそこは、かつて東京の芸術大学で学んだ芸術家たちが集まり、米国人相手に絵画を売ろうとしている場所だということを知ります。
その作品を見た主人公は・・・という始まり。
戦闘の結果、この地を占領することになったアメリカ人。
占領される側になった、沖縄の人々。
そして、国籍を問わず人間として共通的な価値感とも言える、芸術。
その芸術を通じて、心が通じ合う部分。
いくら交流しても、通じ合えない部分。
米国軍医と沖縄芸術家とのやりとりを通じて、戦うということはどういうことなのか、そして芸術とはどのようなものなのか、考えさせてもらえた作品でした。
読後に調べて見ましたが、ニシムイ芸術村というのは、実際に存在していたのですね。
終戦すればそれで終わりではない、戦争の恐ろしさ。
そして、芸術の持つ力。
今回も、読み応えのある、作品でした。

2017年6月19日

読書状況 読み終わった [2017年6月19日]
カテゴリ 小説

『夜は短し歩けよ乙女』など、京都を舞台にした独特な世界観の小説を発表している、森見登美彦。
まだ読んでいない作品が電子書籍化されていたので、読んでみることにしました。
舞台は京都。
マントを羽織り狸のお面をかぶった「怪人」が、京都の街に出没。
風貌とは裏腹に、街の人々に善行をして回っていることで話題になっている・・・という始まり。
なぜかその「二代目」に指名されてしまった、若手のサラリーマンが主人公。
週末はだらだらと過ごしたいという筋金入りの怠け者である主人公が、怪人という非日常的、冒険的な存在に巻き込まれてしまう姿が、全編を通じてコミカルに描かれています。
この怪人は誰なのか?という謎解き、そしてその存在を付け狙う人々との攻防が、物語の主軸になっています。
京都という街、特に祭りという特別な日の雰囲気を舞台装置に、この著者らしい、現実とファンタジーがおりまざった、不思議な世界を提示してくれています。
全体的に楽しく読める作品なのですが、休むということと、怠けるということの違い、何のために頑張るのか、など、考えさせてももらえました。
今回も不思議な読後感を味わせてもらえたので、他の作品も探して、読んでみたいと思います。

2017年6月13日

読書状況 読み終わった [2017年6月13日]
カテゴリ 小説

自分は首都圏で生まれ育ち、今も住居・職場ともに、首都圏で生活しています。
仕事やプライベートで地方に行くことはそれなりの頻度であり、宿泊することも多いのですが、地方に住むというのはどういうことなのか、本質的な部分で理解できていないのだろうなと感じています。
なので、首都圏と地方を対比させたような書籍を、意識して読むようにしています。
この本は、不動産の分野で長年活躍してきた著者による一冊。
乱暴とは思いますが、自分なりにこの本のポイントをまとめると、以下のようになるかと思います。
(1)交通網の発達に伴い、これまでは地方から東京への「上り」一辺倒で、人が移動してきた
(2)しかしその東京も、高齢化が進み、これまでのように直線的な発展は見込めない
(3)これからは、東京から地方への「下り」の人口移動に、着目すべきである
(4)そのポイントの一つは、海外から日本にやってくる「異人」の取り込みである
(5)取り込みにあたっては、既存の交通網を如何に活用するかが重要であり、ハード、ソフト両面での工夫が必要である
上記の(1)については、以前読んだ別の本でも書かれており、客観的な事実なのだなと、受け取りました。
しかしその本では「なので、より東京に集中させて国際的な競争力を高めるべきだ」と主張していたのに対し、本書では真逆の主張をしていたので、興味深く読ませてもらいました。
(4)については一過性という危険は孕んでいると思いますが、すでに地方に行った際に実感したことがあったので、当面は希望のもてる話だなと感じました。
(5)については、ハード的にかなりの投資が必要なこと、ソフト面での工夫がイメージできなかったこと、といったあたりは気になりました。
全体としては、地方都市は今の状況に絶望することなく、明るい未来を描いて努力をすべきだと、後押ししてくれている一冊だと思います。
日本全体の活性化については、さまざまな意見があるということがわかりました。
今後もこの分野の本を探して、読むようにしていきたいと思います。

2017年6月8日

読書状況 読み終わった [2017年6月8日]
カテゴリ 自己啓発

『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』など、西日本を舞台に、その土地の歴史にまつわる壮大で不思議な世界を提示してくれる小説家、万城目学。
僕もその’’万城目ワールド”に魅せられている、読者のひとりです。
書店巡りをしていたら、文庫版上下巻でこの小説が平積みされていたので、電子版を探して、読んでみることにしました。
物語のはじまりは伊賀。
そして、主人公は忍者の風太郎。
冒頭に描かれる騒動によって、伊賀を離れなければならなくなった風太郎。
京の郊外でひっそりと身を潜めていた彼ですが、そこに忍者仲間、そして「ひょうたん」がやってきます。
それをきっかけに、京の街に出るようになった彼ですが、やがて望まぬ形で、諍いや、さらに大きな争いに巻き込まれる羽目になって・・・という展開。
時代的には、関ヶ原の戦いが終わった後から、大坂夏の陣で豊臣家が滅亡するまでの期間が舞台になっています。
戦国時代という特殊な時代の中で必要とされ、進化してきた、忍者という存在。
その末期に生を受け、忍者としての教育を受けるも、「落ちこぼれ」になってしまった風太郎。
そんな主人公が、伊賀の忍者という境遇、そして時代の移り変わりというものに翻弄される姿が、数々のアクションシーンを交えて描かれています。
伏線も多く張り巡らされていて、そのストーリーを追っていくだけでも楽しめる小説かと思います。
そして読み進めていくうちに、権力が移るというのはどういうことなのか、今まで必要とされていた存在が不要とされるとはどのようなことなのか、読者に考えさせるような内容にもなっています。
著者にしては全体的に暗いトーンに感じますが、細かい描写にはユーモアも交えられています。
またキーアイテムとして「ひょうたん」が取り上げられていることにより、万城目学らしい不思議ワールドに、読者を誘い込むような形になっています。
今回もその世界観に引き込まれました。
作品が発表されるたびに、違う側面を見せてくれる作家さんですね。
次作の発表を楽しみに待ちたいと思います。

2017年5月30日

読書状況 読み終わった [2017年5月30日]
カテゴリ 歴史小説
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