愛とは己との闘い、せめぎあい尽くしたものだけに与えられるーそんな容赦ない真実を巧みな演出と色彩に富んだ映像美で描いた傑作。
大学で文学の講師をしているロランスは、恋人のフレッドに「女性として生きたい」(但し、性的対象は女性のまま)と打ち明ける。フレッドは混乱しながらも、そんなロランスの「革命」をひとまず受け入れる。ロランスはその後、女性として生きるべく服装も変え職場の大学に姿を現すが・・。
印象的なのは光と影の演出。冒頭のあたりは画面に陰りが多く、ロランスを演じる役者さんの細かな表情を読み取ることが難しい。特にクラブでのレーザービームさす暗がりでくねくねと踊るシーンとなど。カミングアウト(CO)をするまでの葛藤、ありのままの自分を曝していないという隠喩なんだろうか。
COの後から、ロランスとフレッドを取り巻く状況が劇的に変わっていくのだが、その喜怒哀楽の表情は巧みな演出とともにさらされまくる。
その後冒頭とは対照的に、いったんは離れ離れになった二人が再び会合しカラフルな布という布が空から降ってくるシーンは一つのピークで、祝福されているかのような光、光、光。ただ、そのままでけして終わらないのもこの映画の素晴らしいところなのだが。
時代は80年代の終わりから90年代中頃。あの当時、DSM(アメリカ精神医学会による精神疾患の診断基準)でGID(性同一性障害)は精神疾患に分類されていたという歴史的な事実。性的な少数者が生きやすくなったわけではないけど、あの時代と比べると多少社会の理解は進んだ?と思いたい。
- 感想投稿日 : 2017年6月7日
- 読了日 : 2017年6月6日
- 本棚登録日 : 2017年6月7日
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