平行に進む5つの物語が徐々に絡まり最後に全体像がグワーっと浮び上った時、あまりの快感により脳内嬉ションした。
5つの物語が時空を縦横無尽に行き交いながら語られ、しかも回想シーンが唐突に挿入されるので、はじめは戸惑うが慣れてくると気持ちよくなる。何故なら、その複雑な仕掛けにより、密林と砂漠といった自然や多層的な生活様式、多様な人種を内包するペルーの混沌としたさまが読み進める毎にジワジワと浮かんできて、その度に「うひぃぃたまらん~たまらん~」となるからである。もしこれが時系列に沿って5つの物語も章ごとに区分けされていたら、物語の面白さは残るけど、混沌としたさまは伝わってこなかっただろうし、「うひぃぃたまらん~」という快楽も得られなかっただろう。時空を縦横無尽に行き交う構成は一見すると出鱈目のような感じがしたが、最後までの読み終ると、実は緻密かつ完璧に計算されていたのかと思い、震えた。
また、この小説は複数の男と女の関係が描かれている。ロマンティックさは殆ど無いが、生活感が滲み出てくるようなその関係性や人間くさい男女の言動はとても印象に残る。訳者解説によるとバルガル=リョサは「行為、行動といった外に現れてくるものに興味があり、それを描くことで人物の内面を浮かび上がらせたいと考えている」とある。この『緑の家』もまさにその考えを徹底していると思え、彼や彼女達の言動からそれに至った思考やその時の感情といった内面を推測することが読み手は求められる。内面を推測しやすく描かれている人物(主に男)もいる半面、推測が難しい人物(インディオの娘ボニファシアとか)もいる。難しいと思える人物の内面を、ページを何度も前後して読み返しながらあれこれ推測するのは(時間は掛かるが)とても楽しかった。
唐突だが、この作品は私の小説に対する概念を変えた(広げた)といっても過言では無い。
<余談>
登場人物も多く話も時空を縦横無尽に行き交うので、いつものように寝転がって読み進めていたら間違いなく途中で混乱していたと思う。複雑であることは事前に知っていたので、私の場合は、シーン毎に舞台・登場人物・主な出来事をメモしながら読んだので最後まで混乱すること無く読めた。
- 感想投稿日 : 2013年10月26日
- 読了日 : 2013年10月22日
- 本棚登録日 : 2013年10月22日
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