人でなしの経済理論-トレードオフの経済学

  • バジリコ (2009年4月3日発売)
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原題:Trade-offs: An Introduction to Economic Reasoning and Social Issues
著者:Harold Winter
訳者:山形浩生

【私甩メモ】
 6章では喫煙の費用・便益についての議論が扱われている。著者は案の定(反骨的かつ露悪的スタンスを本書を一貫させているので)、「喫煙の便益が世間や学会では過小評価されている」と述べて〆る。
 しかし本書のこの見方は、経済学の主流見解ではないと思う。喫煙者のアンビバレントな心理(例えば、コストを認識しつつ正当化をしてしまうことな)や不合理な行動(タバコ増税の容認や、買い置きの回避)は既に観察されている。そして行動経済学や健康経済学の分野でも喫煙・禁煙について多くの蓄積がある。
 著者はそれらをまともに参照していないか意図的に無視していると思われる。


【内容紹介】
『人でなしの経済理論──トレードオフの経済学』
定価:1,500円(本体)+税
ISBN:978-4-86238-132-3
発売日:2009/4/3
内容:「経済学者はいかにして人の神経を逆なでするか」

 かかる費用とそこで得られる便益をはかりにかけて、意思決定するのがトレードオフの考え方。でもこのトレードオフ、経済方面だけでなく、社会のさまざまな問題についても応用できる。人命の価値は金額に換算するといかほどか? 移植用の臓器を強制摘出できるように法律で決めたらそのメリット、デメリットは? HIV検査の普及は逆にエイズの拡大をまねく可能性があるから抑制したほうがいい? ……経済学者はときに血も涙もないシミュレーションを試みる。「正しいかまちがっているか」より費用と便益が問題なのだ。よりよい社会政策、行動のための、人でなしの発想から入る費用便益分析入門。訳者・山形浩生による解説も秀逸。
http://www.basilico.co.jp/book/books/9784862381323.html


【目次】
目次 [003]
はじめに――ぼくのお世界へようこそ [005-009]
謝辞 [011-013]

1 社会問題へのアプローチ 015

2 人命の価値っていかほど? 027
  フォード・ピント
  人命の値打ちはどのくらい?
  希少性
  追加の考察

3 取引しようか? 045
  細胞売ります
  臓器の強制徴用を合法化したら?

4 おまえのものはオレのもの 063
  価格づけ入門
  著作権保護:古典的なトレードオフ
  保護なんか必要なの?
  フェアユースは効率的か?
  医薬品と特許

5 持っているなら吸ってはいかが 087
  孤立した人間
  何をご存じ?
  中毒になる選択
  コマーシャルの功罪
  若き喫煙

6 人に迷惑をかけないとは? 115
  太陽の季節
  お話にならない人々
  煙が目にしみる(鼻にものどにも)
  早死には三文の得?
  真実をもとめて
  くすぶるまとめ

7 規制と行動の変化 145
  シートベルトはしないほうが安全?
  太陽がいっぱい
  カナダのホッケー
  子供には安全でも大人には危険
  生兵法はけがのもと
  モラルの悪化
  守勢の医師たち

8 警告――製品に注意 165
  設計の想定外
  欠陥があるのは仕方ない?
  損害賠償責任を認めないのが最高のルールか?
  警告しましたよね?
  損害賠償は是か非か

9 解決策などない? 189
  あるのはトレードオフだけ
  私見では?
  敢えて夢を

訳者あとがき(2009年正月 プノンペンにて 山形浩生) [203-213]
  トレードオフの基礎
  人命の価値――人間は平等か?
  主観的価値と市場価値など
  謝辞その他

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 331.経済原論
感想投稿日 : 2016年10月4日
読了日 : 2016年10月5日
本棚登録日 : 2016年10月4日

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