文章のリズムが自分のどストライクゾーンから少し外れていて、冒頭の一頁を読み齧ったまま1年ほど積読しておりました…
2015夏、数年に一度の蔵書棚卸(不要本の仕分)作業の際「あれ?未読だったわ」と手に取ってみたところ、とても良い本でした。(これは手元に残しておこう。)
前置きが長くなりました。ここからレビューです。
主人公は民子、昭和臭漂う古臭い名前の中3。母を亡くしている。部活に打ち込むという正当な理由で煩わしいことから距離を置くなど、考え方のしっかりとしたコ。
と思いきや、次の章では主人公がバトンタッチ。
継母である宏子に代わる。
…冒頭まさか主人公が代わることを想定していなかったので、別の話になったのかと困惑したけれど、馴れてくるとこの語り手交代制はとても良かった。
1章 民子
2章 宏子(民子の継母)
3章 祥子(民子の実母・美智子の親友、陽一の母)
4章 亮太(民子の父)
最初 民子の視線から描かれていた世界が、他の人物から描かれることでどんどん厚みを増してゆく。
あの時のアレはそういうことだったのか!と気づき、登場人物たちの想いの深さに心打たれる。
1章では中3であった民子は章が進むごとに進級してゆく。そして民子と継母との関係性も変わってゆく。
民子の祖母と、宏子の母のセリフはとても深くてとても良い。ぜひ読んでほしい一冊。
最後に、個人的に胸に響いたくだりを2つ。
(ひとつは解説にも書かれていたくだり)
(ここからネタバレ)
「本当のやさしさってのはね、自分のことは自分で全部背負い込んで、きっちり落とし前をつける強さがないと出てこないもんなの。そういう覚悟がある人だけが他人に本当にやさしくできるのよ」
いいかげんになるのではなく、肩肘張らずに「良い加減」に生活すること。たまには息抜きしているそんな自分のことをそれでいいんだよ、と許…(略)
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これほんと大事。わたしにも足りない部分
- 感想投稿日 : 2015年8月19日
- 読了日 : 2015年7月22日
- 本棚登録日 : 2015年7月22日
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