読書をするとき「この本のメッセージはこういうことだろう」と推察しながら読み進めることはよくあるのだが、本書はその予想を華麗に裏切ってくれた。
p.241「フェレイラの孤独と自分の寂しさとをこのように比較した時、始めて自尊心が満足させられ微笑することごできた。」
このときはまだ「いかに苦しい状況においても信念を強く持つこと」が本書の言わんとすることかと思われたが、強い信念は時に弱さを誤魔化す手段となってしまうことがそのすぐ後に示されていた。信仰とはなにか、真理とはなにか、集合体の中で生きる人間の在り方について考えさせられた。本書から発せられるメッセージは、綺麗な言葉で取り繕った理想より人間味に溢れており、暗闇の中に希望があった。
解説も秀逸だった。何百年も前の、イメージもできない鎖国時代を舞台にしているにもかかわらず、その世界に引き込まれる。ジャーナリズムのような純客観から始まり、半客観、半主観と、視点を変えるテクニックにより、これほど効果的にストーリーに引き込まれたのだと理解した。
マーティンスコセッシ監督により映画化されるとのことで、とても楽しみです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
戦争
- 感想投稿日 : 2016年2月1日
- 読了日 : 2016年1月7日
- 本棚登録日 : 2016年1月7日
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