ブッダのいうところの悟り、解脱、涅槃とはなんなのか?
そして、ブッダは解脱したあとで、どうして、そのまま死なずに、人に教えを伝えたのか?
という問題に明快な答えを出しています。
(2番目の問題は、この本を読んでみないと、どうしてそれが問題なのか分からないのだけど)
仏教、とくに原始仏教に興味があって、ときどき思い出しては、読んでいる。大乗仏教の教典に比べるとシンプルで分かり易いのだけど、分かり易いがゆえに、すっきりとしないところがあった。
それは多分、
・どうしてすべては「苦」なの?(人生、楽しいこともあるじゃん)
・輪廻転生って、本当にあるの?(あるいとしても、無我ということと矛盾しない?)
・輪廻から脱する、つまり完全にいなくなる、つまり完全に死んじゃうというのが、どうして求められるゴールなわけ?
・そもそも、悟りって、なんなのよ?
・解脱すると具体的にどうなるわけ?
みたいな疑問だったと思う。
で、この本は、このすべての疑問にとても明確に、整合的に応えてくれる。個人的にはかなりスッキリしました。
ここに書いてあることが好きか、嫌いかはべつとして、そもそもブッダが説いた教えはこんなものだったに違いないと思う。(原始仏教の教典が整合的に読めるので)
で、こうして分かってみると、とてもシンプルで、もうそうとしか読めない。どうしてこれまで、分からなかったのか、分からなくなる。
本書では、日本におけるよくある理解(誤解)を取り上げながら、そういう理解はありえないことを説明してあって、自分もまさに「仏教とはこういうものだ」という考えから、ブッダの言ったことはこういうことに違いないと日本的な誤解をしていたんだな。目から鱗がぼろぼろ落ちた。
要するに、知らない間に大乗仏教を通じて、ブッダを読んでいたわけですね。別に大乗仏教を信じているわけではなくても、なんとなく日本的な言説・風土のなか、その思想が深く埋め込まれているわけだね。
大乗仏教がいいのか、原始仏教がいいのか、という問題ではなくて、まずはブッダ、原始仏教が言っていることを素直に理解してみて、それを踏まえて、大乗仏教とか、さまざまな流派がどう違うのかを理解していくことが大切だと思った。(まあ、宗教としての仏教を考えれば、あとで生じたさまざまな流派は、「ブッダが本当に言ったことはこれだ」というわけで、「ブッダの教えをこういうふうに改善しました」とは言わないわけだからね。)
- 感想投稿日 : 2017年5月1日
- 読了日 : 2015年5月7日
- 本棚登録日 : 2017年5月1日
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