著者の「スピノザの世界」が分かりやすかったので、勢いで、こちらのほうも読んでみた。「スピノザの世界」が「エチカ」を中心としているのに対し、本書はスピノザの生前にでた主著(?)「神学・政治論」を中心とした宗教・モラル・政治論。
「スピノザの世界」が、「エチカ」を時代や社会環境を超えて、そのテクスト自体から読み解いていく試みであったのに対して、本書は、当時の社会情勢や思想的なコンテクストを踏まえながら、「神学・政治論」を読み解いていく。といっても、著者の読みは、やはりスピノザのテクストの論理に忠実で、隠された意図、例えば、「本当はスピノザが主張したいのは無神論だが、それを直接的に言えないので、こういう主張の形をとったのだ」という読みを排除する。つまり、表題のとおり「無神論者がなぜ宗教を肯定できるのか」というパラドックスに正面から答えようとしているのだ。
著者によると、スピノザの聖書の読みは、いわばテクストとしての読みであり、また、聖書のロジックはそれ自体正しく、そしてそれは政治的な権力ともつながる、とのこと。これは、きわめて、フランス現代思想っぽい世界で、なかなかスリリングだ。
スピノザは、その倫理のみならず、権力論においても、ニーチェみたいなんだな、と思った。
面白い本だと思うが、100ページの本が、1000円もするというのは、少し高いのではないだろうか。なので、満足度は4点としておく。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年4月30日
- 読了日 : 2007年10月21日
- 本棚登録日 : 2017年4月30日
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