毒見師イレーナ (ハーパーBOOKS)

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン (2015年7月18日発売)
4.12
  • (72)
  • (66)
  • (31)
  • (5)
  • (3)
本棚登録 : 678
感想 : 71
4

異世界ファンタジー三部作の一作目。
異世界で少女が毒味役をさせれられて苦労しつつも生き延びる、といった前知識しかなかったもので、読み始めてみたら色々とびっくりした。勿論とっても面白かった。

舞台は、軍が王制打倒のクーデターを成功させて生まれ変わった全体主義的な国家。政府の長が軍の最高司令官であり、衣服も食料も全部支給され、国内の各州は将軍が統べている。しかもお馴染みの魔法使いは駆逐され今では南の隣国にしか存在していないとか。異世界ファンタジー小説の典型をぶち破ってくるこの世界観設定からしてまずインパクト十分で、初っ端からぐぐいっと引き込まれた。
それに加えて、主人公であるイレーナの性格がまた好ましい。生きる事にまじ貪欲。頭の回転が速くて冷静で、もちろん内面では感情の起伏が激しい普通の女の子なんだけど、うじうじ悩まず思考が即座に行動に起こされる。今目の前の問題に全力で挑み戦う事を恐れない強さがある。
そんな彼女の視点から描かれる物語の展開はスリリングかつスピーディーだから、読者としてはノンストレス。だらだらっと中弛みするところが全くない。各場面が彼女冷静な観察眼を持って詳細かつ簡潔に描写されおり、冷たく乾いてるのにその奥底には常に彼女の生きる事への執念や恐怖がしっかりを根付いているから、イレーナの未来が気になり読む手が止まらなくなってしまう。

イレーナが恋人役のヴァレクに惚れてまう理由はようわかる。しかしその逆、ヴァレクがイレーナに惚れた理由といか明確なエピソード的なものは描かれていないので、彼が本気になったのは一体いつのことだったのかしら?と疑問に思わなくもない。強いて言えば、もう最初に入浴させて次に会ったときから容姿的に気に入っており、どんどん明かされていく彼女の強さに魅せられていった、ということなんだろうけど。
それと少し気になったのが、この世界における文明の進捗具合と技術レベルの兼ね合い。最初に軍事政府→近現代の国家観と思い込んでしまったため、読み進めていく内に、まだ拳銃も機械も存在しておらず、実際の生活技術レベルはいわゆる中世ベースのファンタジーと同じいということなのか?と戸惑った。実際のところは国家という枠組みよりもよほどミニマム。まだ統一国家が確立されていない時代、州規模の一地域で起こった物語、といった風に受け止めればしっくりくるな~と読み終わってから思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 異世界ファンタジー
感想投稿日 : 2016年12月5日
読了日 : 2016年12月2日
本棚登録日 : 2016年12月2日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする