本書は著者が30代前半のころ、今から45年ほど前に書き下ろされた、「愛」についての書き下ろしエッセイです。
前半は男女の愛に焦点があてられていますが、当然ながら本書での「愛」は男女の愛に絞ったものではなく、後半は家族や夫婦、さらには孤独、苦悩、心の病、自立、生と死、などに焦点があてられています。
いずれの話題も、宗教的だったり大上段だったりする曖昧なものではなく、著者ご自身やその周りの人々の経験をもとにした等身大のエッセイとなっています。
本書を読み進むと、とても45年前の著書とは思えないぐらい、今の時代にも響く一冊となっています。
また、話題の広がりの大きさとも相まって、「愛」というものがいかに普遍的でかつ広範なテーマかを改めて知らされました。
また、随所に著者の夫である三浦朱門氏の言葉が散りばめられ、女性視点に偏り過ぎず全体を引き締めるポイントとなっています。
一気に読み進めることができながら、様々なことを考えさせられる、そんな一冊です。
【本書抜粋 曽根綾子】
愛というものは、それだけでひとつの完結した世界なのだろうと思う。
愛はしかも実用品ではない。
何かで買うこともできない。
求め方のルールもなければ、その結果がどうなるかという保証もない。
それはしかし、生命そのものである。
それだけに哀しくしかも燦然と輝いている。
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【本書抜粋 三浦朱門】
私たちは、子孫という形で永遠につながりながら、やがては死ぬという運命を自覚するとき、初めて、今日の自分は何をなすべきか、という、生の目的意識が生まれる。
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- 感想投稿日 : 2014年4月5日
- 読了日 : 2014年4月5日
- 本棚登録日 : 2013年11月14日
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