『建築写真文庫』は、昭和28(1953)年から45(1970)年まで17年間にわたって彰国社から刊行された全145巻からなる一大シリーズ。これをたったひとりで取材、撮影、編集、デザインしたのが北尾春道。都築饗一がこれを収集し、うち商業・公共建築に関するもの79巻を再編集してまとめたものである。
鎌倉の神奈川県立美術館などの建築家物件から、待ち場の小料理屋の内装までがフラットにならぶ誌面からは、時代の空気が濃密に現れている。
看板や広告塔などの物件蒐集的なページもあるのだが、なかでも異様なのは事務所建築の項。外観があり、室内の写真はわずか一葉のみであり、あとは見開きに切り抜かれた事務機器の写真がならぶのみである。計算機、タイプライター、ロッカー、スチールのデスクと椅子。オフィスワーカーの姿はまったくない。建築メディアにおけるオフィスビルの冷遇はこのころからすでに始まっていたのであろうな。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
建築
- 感想投稿日 : 2015年10月4日
- 読了日 : 2015年10月4日
- 本棚登録日 : 2015年10月4日
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