楽天koboにて読了。
太平洋戦争末期。横光本人を思わせる俳人の梶と、殺人光線兵器を開発しているという天才学生「栖方」(俳号であって本名ではない)との交流を描く。
梶は、栖方の美しい微笑をとても気に入る。だけど、一方では栖方を狂人と評する者もいて、彼の無邪気な態度には、ちょっと怖さも感じられる。
結局兵器の開発を待たずして日本は敗戦し、栖方は悔しさの余り発狂して死んだという。
かつて死を恐れていた栖方に、梶はこんな言葉を送っている。
「まァ、いつも人は、始まり始まりといって、太鼓でも叩いて行くのだな。死ぬときだって、僕らはそう為ようじゃないですか。」
この作品には全体的に作者が当時を懐かしむような雰囲気が漂っているけれど、作者が懐かしがったのはもちろん戦争の時代ではなくて、その時代にあった青年の純粋さとか、潔さ、儚さなのかな、と思う。
ちなみにこの作品が2014年の初読みになった。電子書籍ですよ。なんだか時代を先取りしているような気がしつつも、楽天koboで青空文庫の著作権切れの作品を読んでいるのだから、別にそんなことはなかった。
そういえば、2013年には青空文庫の呼びかけ人である富田さんという方が亡くなられたそうだが、その功績には感謝しつつも、初読みに青空文庫を選んだことに、これまた別に関係はなかった。ただタブレットPCに入っている手ごろな長さの小説を読もうと思っただけだった。そんな感じで、これからもテキトーに気の向くままに本を読んでいきたいのでした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学:戦後〜昭和
- 感想投稿日 : 2014年2月10日
- 読了日 : 2014年1月2日
- 本棚登録日 : 2014年1月8日
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