私のなかの彼女

著者 :
  • 新潮社 (2013年11月29日発売)
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本棚登録 : 1404
感想 : 210
3

角田さんの作品はブラックなのと優しい気持ちになるのと
あるけれど、今回はその両方の要素が入った物語だった。
ただし、ブラック部分が多めかな。
主人公の和歌の学生の頃から中年になるまでの物語。
仙太郎との出会いと付き合い、母との確執、
小説家だったかもしれない祖母の謎、
などが絡み合いながら進む。

付き合った相手が才能があって、自分が劣ってると思い
相手に見合うように努力して、小説家として成功し
世間に認められるようになるっていう流れは
成功者が小説家になるというわけではないにしろ
角田さんのほかの作品でも読んだから既視感があった。
そしてその男が女の成功をよく思わず、何かしら
嫌な言葉を投げつけてくるのも角田作品によくある。

途中お決まりの流れに読むペースが落ちたけど
祖母の謎とき要素があったので、そこに興味があって
読み進められた。

主人公がなぜ仙太郎からみた自分を意識して
どうみえるか、どう捉えられているかを考えて
ビクビクしながら付き合っていたのかそこがわからない。
もっと本音で付き合ったら良かったのに。
嫌みのようなひねくれた捉え方をせずに、素直に
会話していれば良かったのにと読みながら思った。

角田作品には無意識に女性に嫌な言葉を多く投げかける
男たちがたくさん出てくるけど、そこまで嫌な男の人
そうそういないんじゃないかな。嫌な男の集大成として
物語にしているからどうしてもそうなってしまうのか。
または女性たちが無意識な男性の言葉を真面目に
とらえて悶々としてしまいすぎるのか。
今回の仙太郎だってそこまでひどくはなかったけど
流産うんぬんで嫌な部分を爆発させていたかな。
それでも和歌にも言われるだけの要素はあって、
痛いところをつかれたからずっと根に持って
最後には精神的に追い詰められているように
仙太郎に事の真相を確認しようとしていたのだろう。

あっという間に読めたので面白かったけど
もう一度読み返したいほど気持ちのよい作品ではなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 図書館
感想投稿日 : 2014年9月4日
読了日 : 2014年9月4日
本棚登録日 : 2014年9月4日

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