インドネシア: 多民族国家という宿命 (中公新書 1876)

著者 :
  • 中央公論新社 (2006年12月20日発売)
3.45
  • (6)
  • (8)
  • (21)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 154
感想 : 15
3





講義でジャカルタの交通問題を取り扱うので、その入門としてまずは全般的なインドネシアという国を知ろうと思いたち教授の勧めで読んだ本。


『多様性の中の統一』というキーワードをもとにインドネシアという国家が成立から綿々と受け継がれ内包している問題を垣間見ることが出来た。

スハルトによる権威主義統治体制が表面上弾圧してきたスハルト体制以外の”多様性”がたえることなく脈々と秘密裏に醸成され、そのフタが民主化によってなくなったことで、国家としての統合性もが崩壊したことは
皮肉ではあるが多民族国家にとって不可避の痛みであったのではないかと。


 特に『インドネシアは建国よりもその後の、”ありつづけること”のほうが難しい』という言葉には多民族国家の統治の難解さが収束されると思える。
 東ティモール、アチェの相次ぐ独立志向は民主化のもたらす功罪の両面を持ち合わせていると思え、
『世俗国家』か『イスラム国家』かどちらを目指して推移していくのか、9.11移行高まっていたイスラムへの弾圧を含む世界情勢を含め、それに対する政府の対応をこれから注目しておっていきたい。

また、逆説的にはなるが、多民族国家であるがこそ戦時後の混乱の統治には権威主義が浸透しやすい社会情勢だったのかと、感じた。
これについては社会体制の類似する他国とを比較することでとりえる他の選択余地があったのか、不可避のものであったのかについて考察していきたい。




-----------
-----------

スハルト
スカルノ
ハビビ
ワヒド
ユドヨノ
GAM
DI
アブ・バカル・バシル
アブドラ・スンカル
ASEAN
アジア通貨危機
多国間協調主義の戦略的意図
IMF支援の条件とその内訳

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 国際状況
感想投稿日 : 2008年10月10日
本棚登録日 : 2008年10月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする