小学生とは思えない語り口を、「大人語に翻訳」されていると最初に明記・説明することで、これは眉を寄せて真剣に読むべきものではないのだな、と肩の力を抜かせてくれる導入は見事。そこから軽快な言葉遊びで綴られる小学生のなんでもない日常は、実に愉快で小気味好く、彼らの時代を人伝に聞いて想像したことしかない私でも楽しく読むことができた。なにより、時代は違えど人間自体に変わりはないようで、ああこんな奴いたな、と共感できる部分も多数。だが、あらゆることに対する考察(スポーツと体育しかり、屁についてもしかり)は、彼らの口を借りて飛び出しただけの作者の思想そのもので、それは小説というより随筆に近いような、けれど対象が対象なのでやはり小学生の語り口で正解なのか、とにかく、なるほどそのような思考回路なのかと感心させられる。一見分厚い本だが、話の1つ1つが独立しているので短編としても楽しめるし、なにより飽きさせない、読みやすい語り口が素晴らしい。京極夏彦さんの作品は読みやすいものにしか手をつけていないので、次は作者の真骨頂の方を拝読させていただき、この落差を楽しみたいと思う。
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- 感想投稿日 : 2017年10月29日
- 読了日 : 2017年10月29日
- 本棚登録日 : 2017年7月6日
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