エクソダス:神と王 4枚組コレクターズ・エディション(初回生産限定) [Blu-ray]

監督 : リドリー・スコット 
出演 : クリスチャン・ベール  ジョエル・エドガートン  ジョン・タトゥーロ  シガーニー・ウィーバー  ベン・キングズレー 
  • 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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感想 : 4
3

映画史に燦然と輝く、チャールトン・ヘストン主演、セシル・B・デミル監督の「十戒」とどうしても対比してしまう・・・CG技術や時代考証研究の進歩による臨場感あふれる古代中東のセットは素晴らしかったですが、感嘆したのは、それだけ;;もちろん、本作は「十戒」のリメイクではなく、あくまでリドリー版の「エクソダス」なわけですが。

とにかくもー、フラストレーションたまりまくりの映画でした。最初から最後まで。モヤモヤしっぱなしです(苦笑)・・・結局、この映画、何が描きたかったんだろう(遠い目)。こんなに誰にも共感できず、ハラハラドキドキもせず、サスペンスも無く、驚きが無いスペクタクル映画は久しぶりだわ。

史劇とするなら、超自然の要素を盛り込み過ぎているし、人間ドラマとするなら、モーセの葛藤があまりに薄っぺらい。何より、あれだけの民を解放へと導く動機に欠ける。モーセvsラムセスの構図を全面に出しているけれど、本来、個人的な確執の物語よりも、民族解放の物語の方が、遥かにスケールが大きく、心震わせられる物語になりうるはず。どうして後者の方に焦点を合わせなかったのか。せっかくベン・キングスレーとか、良い俳優も使ってるのに、ぜんぜん生かせていない。アロンやヨシュア役の俳優なんて、顔も思い出せないです。

宗教ドラマとするなら、あの「神」の描き方は・・・(苦笑)。Godではなく、godだよね、あれじゃ。The Godの権威とか主権、絶対性というものが、まるで描かれていない。モーセと対立する神、という構図になってしまって、非常に相対的な存在として描かれている----「子ども」の姿を通して内省的に描かれる「神」は、神というより、もはやモーセの内なる「インナーチャイルド」のよう・・・そう見ると、燃える柴のモーセの召命のシーンが、臨死体験として描かれているのも、うなずける。モーセの「神体験」は、あくまでモーセ個人の主観として描かれているわけで、少なくとも、この映画内で描かれるのは、ユダヤ民族としての神、すなわち、民族全体に「十の災い」と「十戒」の啓示を通して自分を現す聖と義の唯一神、ヤーウェではない・・・究めてアメリカ的スピリチュアリズムに根差した、個人的な神の域を出ていないです。ホント、アメリカーンな個人的体験に基づいた神様です(笑)。

モーセは最後まで「杖」ではなく「剣」を持っていて、これも非常にこの映画の中でのモーセ像というものを象徴していたと思う。

つまり、モーセは、本質的にエジプトに居た時のまま、まったく劇的な内的変化を経験せず、ミデヤンを経てエジプトに戻っているわけです。本当は、劇的な変化を遂げなければ、あれだけの仕事(民族解放の指導者)は無理だったはずなんだけど、臨死体験をキッカケとして、自分の方法(巧みな戦術)によって民を救おうとする「怒れる将軍」のまんま・・・それが、最後まで剣を持ち続けるモーセの姿に現れていたと思う。

十の災いは、現代的解釈で、リベラルに描いているけれど、でもやっぱり超自然が入っているわけで、それならそれで、徹底的に単なる偶発的な自然災害として描けばいいものを、中途半端に超自然(神のわざ)として描くもんだから、ちぐはぐ感がハンパ無い。

一番トホホだったのは、紅海を渡る途中、モーセとラムセスが対峙するシーン。

あれはないでしょ、あれは(笑)・・・あれだけ古代エジプトのスケール溢れるセットと、人々の暮らしぶりをリアルに表現しているのに、あそこで全部台無しでしょ(苦笑)

ただ、この映画、リドリー監督が弟に捧げていて、あのシーンは、「兄弟」の別れのシーンでもあるので、あえてそういう意味を込めたのかなーと、最大限に良く解釈しましたが・・・

最後の、とってつけたような十戒のシーンもね~。金の子牛事件とか、完全にスルー・・・(笑)

誰にも共感できず、盛り上がりも無く、ホント、何が言いたいんだ?的な映画でした。

言いたい放題ですが、ツッコミどころ満載という意味では楽しめました(苦笑。

もう一度、チャールトン・ヘストン=モーセの「十戒」見るぞーっと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画(洋画)
感想投稿日 : 2015年2月9日
読了日 : 2015年2月9日
本棚登録日 : 2015年2月9日

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