この、村上春樹の二作目である「1973年のピンボール」がボクにとって今まで読んだ全ての本の中で一番好きな作品なわけだけど、まず第一に他の人に「これいいから読んでみ」とはあまりすすめない。この作品を読んだ人でも、「え?どんなんだっけ?」「そんなによかった?」という感想がほとんど。第二に自分でも、「ここがいい!」とはっきり言えない。
ただ、いい。
一作目の「風の歌を聴け」に続く、青春三部作といわれる作品の第二部な訳だけれど、一作目の設定を引き継ぎつつ、春樹ちんの作品として一作目から、一気に清澄している。(成長じゃなくて清澄。)一作目は処女作として、春樹ちんのそれまでの人生が一気にあふれ出したようなカオスを感じるのだけれど、二作目はそれが晴れてすっきりとしている。その分、せつな的な物悲しさをヒシヒシと感じることが出来る。
鼠、双子の女の子、配電盤、ジェイズバー、コーヒークリームビスケット、ゴルフ場、スペイン語講師、そしてピンボール。。。
全てが隠喩的で何かを問いかけてくる。自分にとっての鼠とは、双子の女の子とは、配電盤とは。。。つい考えてしまう。答がうすぼんやり見えているようではっきり分からないまま20年以上経ってしまった。
そして、また再読してしまう。
しかし、こうやって読み返してみてつくづく思うのは、村上春樹は初期から圧倒的に、比喩表現のうまい作家だったんだなあということ。一文いちぶんが美しく、それでいて流れがさらさらしているのに、読後におおきな澱が心に残る。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年1月23日
- 読了日 : 2012年5月
- 本棚登録日 : 2013年1月23日
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