クリティカルシンキング 入門篇: あなたの思考をガイドする40の原則

  • 北大路書房 (1996年9月1日発売)
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感想 : 66
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クリティカルシンキングが必要とされる場面、そこで注意すべき事柄をこの巻では主にまとめている。
各章末にその章の要約チャートがついているだけでなく
巻末にはクリティカルシンキングのための原則がまとめられており、読み返すにも親切なつくりだ。
心理学の観点からクリティカルシンキングのコツを挙げているのが特徴的で
物事の原因を考え、自分や他人の行動の意図などを的確に判断するために
クリティカルシンキングは重要であると筆者は主張する。
そうした立場から、思考を妨げやすい人間の思考の癖や信念を分析している。
因果関係を考える際には、共変関係と時間的順序関係、もっともらしい他の原因の排除のすべてが
満たされて初めて因果関係が成立するといえるが、特に他の原因をわたしたちは見逃しやすい。
また、極端な結果は印象に残りやすく、わたしたちはついそこに原因を求めがちだが
そうした結果は維持されるのが難しく、次には平均的なラインに落ちつくものである。
また、他人の行動の原因を内的なものか外的なものか判断する際には(原因帰属)
一致性(多くの人がしているか)、弁別性(特定の人に向けられているか)
そして一貫性(どの環境でも行われるか)を考慮する立方体モデルが有効としている。
わたしたちはえてして他人の失敗の原因を内的なものに帰属しがちだが
この立方体モデルを用いてじっくり考えてみると、別の原因が見えてくるかもしれない。
また、大数で作用する法則を小数に当てはめるのも、実は危ういことだというのは盲点だった。
確かに客観的な確率は大局的に見て初めて成り立つのであり
それにとらわれることは、少しでも確率から外れた現象に直面すると
それを説明することのできない超常現象だと思い込んでしまうかもしれない。
全体的に陥りやすい思考の罠を解説しており、いかに信念から逃れられるかが
クリティカルシンキングには重要なのかもしれないと思わされた。
必要原因と十分原因の区別をいまいちつけられなかったことと
利用可能性の概念も飲み込みきれなかったことが残念。また再挑戦したいところ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人間・社会・宗教・教育
感想投稿日 : 2009年12月7日
読了日 : 2009年12月7日
本棚登録日 : 2009年12月7日

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