- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062778343
作品紹介・あらすじ
陸の孤島で起きた殺人をめぐり、屋敷に関わる者たちが疑心に陥る。悪意すら美しく描かれる新感覚ミステリー。著者講談社文庫初登場!
感想・レビュー・書評
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交通事故で孤児になった主人公と父親の犯罪で孤児になったもう一人の17歳の少年が陸の孤島のお屋敷に雇われる。
3年間をそこで暮らせば大学4年間の学費と生活費を無条件に負担してくれるという。そんなお屋敷で事件が起きる。
あり得ないような設定、荒唐無稽なストーリーだがぐいぐい引き込まれて読んでしまうのは作者の力量なんだろうな~。
Amazonより
陸の孤島で起きた殺人をめぐり、屋敷に関わる者たちが疑心に陥る。悪意すら美しく描かれる新感覚ミステリー。著者講談社文庫初登場!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
事情があって施設で育った博人は、同じような境遇で育った樋野と共に山奥の洋館で働き始める。
他に居場所があるわけでもない二人は、少しずつだが洋館での暮らしに馴染んでいく。
意外にも博人は、ゆったりと自分だけの時間を過ごすことが出来る生活を楽しんでいた。
少しでも長く、この洋館での暮らしを続けたいと願うほどに。
やがて博人と樋野は洋館に住む令嬢・小夜に恋をする。
それぞれ心に傷を持つ博人と樋野。
大切だからこそ近づくことをためらってしまう博人。
大切だからこそ壊してしまいたいという破壊衝動をかかえている樋野。
同じように傷を隠したまま生きてきた小夜には、二人はどんなふうに映っていたのだろうか。
彼らが洋館に雇われた理由もすべて知ったうえで、彼らを受け入れていた彼女は哀れだ。
けれど、結局のところそれも自己満足でしかない。
館に住む人それぞれが本当の気持ちを隠し、表面上を取り繕っていたために少しずつ歪んでいく世界。
人は誰でも身勝手な部分を持っている。
だが、それをあからさまにしないのは第三者の目があるからだ。
ストッパーとなるべき存在がいないとき、人の欲望はどす黒いものへと変化していくのかもしれない。
博人は結局幸せになったのだろう。
それが真の幸せと呼べるものかどうかは別として。 -
心に闇を持つ少年が山奥の館で過ごす数ヶ月。
近藤さんの本は読みやすいし、ぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまった。山奥の館、湖畔、美しい少女、そして殺人事件…物語の中に流れる耽美な世界観が好きだ。
事件の結末(犯人とか…)についてはあっさりとしていたが、その後の展開にゾクッときた。 -
美しい光景がたくさん描写されて、綺麗な風景を思い描くけど、
空はいつもどんより曇っていて、視界は薄暗い。
そんなイメージの残るお話。
話がどんどん展開していくような物語ではなく、
終始ゆっくり進んでいくけれど、
先が読めず、続きが気になって一気に読んでしまった。
近藤史恵さんの文章、好きだなあ。 -
ゴシックミステリ。謎解きより舞台を楽しみました。
山奥のお屋敷に住む血の繋がらない母娘、家庭教師や庭師の男性、お手伝いの女性たち、そこへ暗い過去を持つ美少年ふたりが雇われる…何か起こらない方が不思議。
少年ふたり、鈴原と薫(切り取り方だけどエヴァ…?)の罪の持ち方はちょっと違うし薫くん自体は問題ないな…鈴原くんのおかげで止められるし。
鈴原くんは諦念なふりして1番強かで良いです。諦めてたのが全部手に入るとなると、抑圧してたぶんだけ反動が物凄いのかも。頭の回転は速いし。村上刑事も鈴原くんにしといて良かったね、と思いました。他の選択肢無いだろけど。
誰も幸せにならない結末なのも凄い。鈴原くんは薫くんとして生きていくんでしょうね。薫くんなのは小夜の前だけで、他の人の前では鈴原くんのままなのだろうか?という疑問は残りました。
謎解きは、田中って明らかに偽名やろ…小夜の自殺したお姉さん・夕日の元恋人?怪しい、と思ってたのでそうだろうね、と。それでもお屋敷の最期のあれこれは集中しました。桃子居なくなってコウさん刺されてから急展開。
桃子可愛い。グレートデーンに桃子…グレートデーンって厳ついめっちゃ大きい犬なはず。体高1mあったりする犬。あれ放し飼いされたら怖いよ!!おとなしいとはいえ見た目ではドーベルマン並に威嚇になる。スミレもポニーなら下手したらあまり大きさ変わらんくない??
映像化しても映えそうこれも。湖もある山奥のお屋敷に若い母親、美少女、美少年、グレートデーン。良き。
タイトル、最後まで読むと物凄いな。 -
デビュー作「凍える島」が好きで、近藤史恵にはまった人間ですから、嬉々として買った。ちなみに「ガーデン」も好きだし、「桜姫」も、「青葉のころは…」も大好きである。
この話は、ミステリーでは、ない。と思う。しかし、こういう痛々しい青春群像劇はやはり、このひと特有の崩れない退廃的な世界観がここちよく、満足して読了した。
うつくしい少女、血のつながらない母、少女に焦がれるもと「殺人者」たる少年二人。閉ざされた館。
こういうのがもっともっと読みたいのよー。とぼやいてみる。世間の需要に逆らっている気がするけど。もとめてるのですよ…。 -
事件の真相を究明する部分よりも、主人公の青年の心情に焦点が当てられている。ラストの状況が一番のミステリで、全体を通してなぜこうなったかを丁寧に書いているような印象。
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施設で育った博人は進学への援助を申し出た資産家の持つ家に住み込みで働くことに。そこには血の繋がらない美しい母子と使用人たちが。隔絶された湖畔の美しい家に絡みつく愛憎と復讐の糸。
深窓の令嬢をキーに主人公たちの過去の傷や心の闇が少しずつ紐解かれる緊張感あふれる近藤さんのミステリ、今回もその複雑な感情の絡みと主人公がすっきり救われない切ないお話を楽しませていただきました。ただ、本作では割と早めに犯人に目星がついたり、オチがどこかで読んだような感じだったりと王道のミステリ感がありました。もう少し心の迷宮に誘って欲しかったというところでちょっと残念でした。
いつもそうなのですけど、近藤さんの作品の背後には冷た〜い日本の社会が横たわっていて、差別やジェンダーの問題が物語にふわりと浮き上がってきたりします。今回も一度社会から弾かれてしまうと戻れない、再チャレンジの難しい日本の社会やそこで突き落とされる孤独、社会的な死みたいなものを思わされました。一方で出てくる湖畔の家の晩秋の風景を思い浮かべながら、こんなところで馬を世話しながら本に埋もれて暮らしたい、と思ってしまいました。あと、犬がかわいそう。 -
交通の弁が悪い別荘地に身寄りの無いイケメンの若者2人が呼ばれた。そこには可愛い女の子と母親と男性家庭教師、執事、料理人庭師などが居て、絶対に何かが起こるであろうというシチュエーション。そこで起こった殺人事件。最後には、イケメン若者が手に入れたものは…中々面白かった。