12月くんの友だちめぐり 新装版

  • 西村書店
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感想 : 8
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  • / ISBN・EAN: 9784890139170

感想・レビュー・書評

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  •  本書は、スイスの絵本作家、ミーシャ・ダミヤンによる、季節の存在する世界の素晴らしさを唱えた作品(原書1986年)です。

     物語は、12の月それぞれを、人の姿に神格化することで、人生とも照らし合わせたかのような擬え方には、普段は自分のことだけで精いっぱいな「12月」が大風の助言によって、自分が治める月以外の国の様子を見に行くこと、即ち、他の月との交流によって見えてくるのは、世界に季節感を維持することの大切さであり、それは人だけではない、動植物たちもそれぞれの季節に華を添える形で、活き活きと存在することの出来る、共存共栄のあり方の大切さでもあった。

     そして、そんな過程を経ることにより、最初こそ決まったことの繰り返しに、辟易気味の12月だったが、実際にそれぞれの月の治める世界で生きている、知らない鳥、植物、動物たちに初めて触れることで目の当たりにした素晴らしき世界は、自分の堅実な仕事もあるから成り立っているのだと知ることによって、自分の存在価値を再実感させられた喜びに満たされると共に、これまで以上に季節感のある世界を好きになり、改めて、それを維持したいと心から思うことが出来た、そんな彼自身の成長も表している点には、季節をこの眼で見て感じることの大切さがあり、それはまるで、これまで知らなかった外の世界を見て感じ取り、自分なりに吸収することで更なる成長を遂げていく、一人の人生を眺めているようにも思われた、未知の世界を直に感じることの喜びである。


     それから、物語以上に私の心を焼き付けて離さなかったのが、ドゥシャン・カーライの絵であり、初めて表紙のそれを見たときは、「何、この絵!?」と思わずにはいられなかった程、他の追随を全く許さない、自分だけのフィールドに、ごく自然と存在するような作家性が衝撃的であった。

     そんな作家性は、表紙の絵からも感じられるような、ビビッドな色ではなく、優しく包み込むような淡さに、儚さというよりは懐かしさの漂う雰囲気がありながら、保護色のように、人も動物も植物も違和感なく一緒くたに混在する様には、まるで理想的な世界を表現しているようにも思われた、そうした感じは、12月と3月が共に目と目を合わせている姿や、真ん中に一カ所だけ存在する黄色い花の効果も相俟って、平和の象徴にも思われたのが、また印象深い。

     また、それとは異なる雰囲気があるのが、暖色系をメインにすることで統一感の生まれた、扉絵の様々な動物画や静物画であり、それら全てが、まるですぐ目の前にいるような確かな存在感に、五感を刺激させられる中でも、動物たちの、どこか親しみを感じさせる愛嬌のある姿が、凛と佇む植物たちと見事な調和性を保っているのが印象に残り、更には、それを人形や雪だるまといった静物にも感じられたのが、また独自の優しい世界観を確立しているようで、美しいのだけれど、懐かしい親しみやすさもあるといった新鮮さが心地好い。

     そして、本編の絵では、そこに幻想的な香りが加わることで、今度は淡い色合いの世界が、どこか別の次元に迷い込んでしまったような、不思議な空想的世界の趣もあり、それは珊瑚のような植物と、白のドット柄も独特な薄い青空によって、まるで海の中にいるように感じられた、3月の独特な風景にもよく表れている。

     しかし、そんな中にも、どこか優しさが同居した雰囲気を感じられた点に、彼の多面的な世界観を見た思いがして、それは上記した3月の絵に於いても、12月と3月が二人で楽しそうに歩いている絵と合わせたように、藪の上に二羽で仲睦まじく佇むツグミの姿が実に効果的に思われて、そんな不思議さと優しさが合わさった絵は、まさに唯一無二であるからこそ、一度入り込んだら出て来られなくなりそうな怖さもあり、それは、一羽一羽全ての色合いが異なる、鶴やコウノトリと雪割草の超現実的な絵の、美しすぎて怖くなる感覚ともよく似たものがあった、もしかしたら、そんなひと筋縄ではいかない様々な要素を、一枚の絵の中に滲ませた点に、彼の最大の魅力があるのかもしれない。


     ドゥシャン・カーライは、スロヴァキアが生んだ色彩の魔術師と言われる、東欧を代表する版画家、絵本作家であり、その輝かしき経歴は、1973、75年の2回にわたり受賞したBIB(ブラチスラヴァ世界絵本原画展)金のリンゴ賞、1983年には「不思議の国のアリス」の挿絵でBIBグランプリを、1988年には国際アンデルセン賞受賞と、出久根育さんが恩師と慕っているのも肯ける素晴らしさであり、勿論、お互いのスタイルは異なると思うものの、その絵の内面に含まれた、狂おしいまでの美しさと不思議な懐かしさの同居した、どこか似通った空気感を醸し出しているような二人の時間の重みが、私の心の中で見事に共鳴する瞬間を、確かに感じたのであった。

  • それぞれの月にそれぞれの役目があるんだ。絵がやさしいですね。

  • 少し矛盾はあってりするけれど、雰囲気があって大好きな絵本です。
    季節のそれぞれの良さに気づかせてくれました(*^-゜)b

  • 絵が美しい。
    言葉が美しい。
    季節の移り変わりを楽しみたい。

  • 2011年12月8日

    <DEZEMBER UND SEINE FREUNDE>

  • 個展でドゥシャン・カーライの世界に魅かれ…
    繊細すぎて凄い…うわぁぁ…!

  • ドゥシャン カーライの個展で買った絵本。
    素敵な絵です。飾りたい絵本。
    表紙にドット模様が使われているのも
    ちょっとポップで、可愛い。

  • ドゥシャン・カーライの挿絵が美しすぎなのです!!!!!!

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