あとがきのあとノッポさんの「小さい人」となかよくできるかな? 高見のっぽ氏 大人にも子どもにも敬意を
2017/1/8付日本経済新聞 朝刊
不思議な着ぐるみの「ゴン太くん」とともに無言で工作する長身の「ノッポさん」を20年近く演じた。NHK教育テレビで1990年3月まで放送された「できるかな」での経験から、コミュニケーションの姿勢や人生哲学をまとめた。
子どものことを「小さい人」と呼び、すぐに仲良くなる。どんなに幼い子にも敬意を表し、ひとりの人間として対等に接することを心がける。「小さい人は経験の浅い、物事をよく分かっていない存在ではありません。大人が思うよりもずっとずっと賢い」と目を輝かせる。
京都・太秦の役者長屋に生まれ、東京の向島に移った。ある日、いつも遊んでくれた近所の印刷屋を訪ねると、大人たちは忙しかったのか居留守を使われた。屈辱感で泣きそうになり、怒りも沸いた。「こうした幼い頃の記憶がたくさん残っていて、子どもにきちんと向き合うようになったのです」と打ち明ける。
実は器用ではない。小学1年のとき模型ヒコーキを作ろうとして母親にブキッチョと笑われた。だから「できるかな」では、工作が上手に見えるよう工夫していたことも本書で明かす。
児童書や絵本の作家としても活躍した。「小さい人にまがい物は許されないので、一生懸命に考えて作ったのです」
このように、子どもを尊重する姿勢は大人と接するときも変わらない。特に、初対面の人には丁寧に。それが「深い友人関係を生む出発点になるかもしれない」と考える。
テレビを見ていたファンは大人になった。「今でも私に気づくとうれしそうな笑顔になるのは、きっと自分が賢くて、きれいな存在だった『小さい人』のころを思い出しているから」と笑う。大人も子どもも互いに敬意を払い、仲良くなってほしいと願う。(小学館・1400円)
(たかみ・のっぽ)1934年京都市生まれ。俳優。NHK教育テレビで70年代から人気を博した「できるかな」にノッポさんとして出演。「高見映」の名で作家としても活動。歌手でもある。
- 感想投稿日 : 2017年1月9日
- 本棚登録日 : 2017年1月9日
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