君主論 改版: 新訳 (中公文庫 マ 2-3 BIBLIO S)

  • 中央公論新社 (2002年4月25日発売)
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チェーザレ関連読書。高校倫理以来の偶然の再会で、まさかマキャヴェリの『君主論』を読むことになろうとは。当時はマキャヴェリの坊主頭にしか興味はなかったのに。
『君主論』は容赦なく次々とイタリア史上の人物の名を挙げていく。ヴァレンティーノ公(チェーザレ・ボルジア)はじめ、ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレ(ユリウス2世)、アレクサンデル6世(ロドリーゴ・ボルジア)、サヴォナローラ、ルドヴィーゴ・スフォルツァ(イル・モーロ)らと彼らの支配域については、惣領氏の『チェーザレ 破壊の創造者』で得た前知識が大いに読書を助けてくれた。
本書は1516年、ウルビーノ公ロレンツォ(1492-1519)へ献上するために書かれたもので、「歴史上の様々な君主および君主国を分析し、君主はどうあるものか、君主として権力を獲得し、また保持し続けるにはどのような力量が必要か」などが論じられている。まず、第1章の冒頭から違和感に気付くのだ。自分がこれを読んで一体何の意味があるのか、と。しかし、次々に繰り広げられるマキャヴェリの思い切りの良い主張に引き込まれていく。そして、例え君主にならずとも上に立つ人間のあるべき姿として応用すれば、次第に500年も前に書かれたものとは思えなくなる。下手に『君主論』の解釈本に手を出すより、頭の中で自分なりの解釈で現代版にしていく作業が面白かった。非常に読みやすい和訳であり、文中の「現代においては〜」と続く内容が、16世紀の出来事であることをついつい忘れてしまう。君主のあるべき姿を論ずる上で、人間の本質を冷静に分析しようとした著者だが、「目的のためには手段を選ばない」="マキャベリズム"が何故生まれたのかどうしてもピンと来ない。
さて、マキャヴェリが理想の君主として、チェーザレ・ボルジアを挙げたということで興味を持った本書だが、思いのほか詳しくは書かれていなかった。より深めるために、塩野七生氏の『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』へと続きたい。そして、読みながらふと"兵法とは?"と思い付いたので、『孫子』へも近いうちに手を伸ばしたいと思う。もちろんただの原典訳本だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2015年3月10日
読了日 : 2015年3月10日
本棚登録日 : 2015年2月27日

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