とても30年程前の作品とは思えなかった。遠い日本の家族の肖像画を
みせられているような短編13編.直木賞受賞作品
この本の中で主人公が戦後の記憶をたどる時、日本人はとても貧しかった、みんな飢えていた
肩が薄かった。そして生きるのに必死で、必死である分そこはとない
哀愁が漂っているようだった。
そしてとても手の込んだ工芸品のようで、彫りが深く、奥が深い、襞が幾重にも
重なっている
人間関係が今より密であるぶん、おとす影の色も濃い。
黙々と草を食むような穏やかなくらしをしているつもりが、ふりかえると
肉がつき脂がついている。それにはっと気づく時がある。きっかけは
記憶、匂い、音、空気が呼び起こす。その筆さばきが冴え渡っている
その中には誰にもいえないこと、後ろめたさ、よわさ、狡猾さも含まれる
それを人の愛しいものとしてきりとってある。
1行の中にいくつもの比喩がかくされている。
1編だけ男女のたとえばなしで私にはわからない個所があったのだけど
知りたいような、知らない方がいいのか
また何年後かに読み返してみよう。読む度にああそうだったのかとおもわされてしまう程新鮮さは失われない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
和書
- 感想投稿日 : 2012年2月27日
- 読了日 : 2012年2月27日
- 本棚登録日 : 2012年2月27日
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