オリンピックの身代金(下) (角川文庫 お 56-4)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年9月23日発売)
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うーんよかった!!

純粋であるがゆえに何者をも差別しない国男。日雇い人夫の経験をすることで、東京オリンピックを底辺で支える彼らの苛酷な労働環境を憂う。
ブルジョワと、その繁栄を支えるために搾取されるプロレタリアート。
そういった世の中の構造自体に怒りを覚え、国家に対して反逆する方向へ突き進んでいく。

国男のしていることはその行為だけでみれば犯罪だが、その行動を引き起こした動機が痛いほどわかるから、つい応援してしまう!


頭がよく、純粋で、どんな立場の人をも見下さないからこそ、繁栄の影にあるものがはっきり見える。
切り捨てられていい人間などいないのだと。

奴隷を解放するよう革命を起こすのは、奴隷の中からでたリーダーではない。
その一つ上の階級のものこそが革命を起こすことができ、起こさなければならない。そういった使命感を国男が抱いた気持ちはすごく理解できる。

解説で、東京オリンピックは無事開催されたのだから、国男の計画が失敗に終わることはわかっている、とあった。
そうか、なるほどとは思ったけれどがっかり。
オリンピック開催を阻止する位のことをしてほしかった!
国男の動機も知らずにがむしゃらに逮捕しようとする警察が本当憎い!!笑

あのあと国男はどうなったんだろう。
そんなこと考えるのはナンセンス?

革命が起こらなかったから、現在のような社会があるのか。
国民全体がオリンピックという目標に向けて一つになっていたという、60年代に引き込まれた。
現代は、この小説の国男の失敗よりも、ずっと切ない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年8月6日
読了日 : 2012年8月6日
本棚登録日 : 2012年7月16日

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